バスキア展 メイド・イン・ジャパン Jean-Michel Basquiat: Made in Japan

【3s】Napoleon, 1982

ジャン=ミシェル・バスキア
Napoleon, 1982
Private Collection
Photo: John R. Glembin
Artwork © Estate of Jean-Michel Basquiat.
Licensed by Artestar, New York

27歳という若さで1988年にこの世を去ったジャン=ミシェル・バスキア(1960-1988)のことを、今の日本の若者は知っているでしょうか。当時は今ほど認知されていなかったストリートアートの、そのアイコンのようなアーティストの日本では初となる大規模展が森アーツセンターギャラリーで開かれています。

ジャン=ミシェル・バスキア
Untitled, 1982
Yusaku Maezawa Collection, Chiba
Artwork © Estate of Jean-Michel Basquiat.
Licensed by Artestar, New York

ニュースに敏感な人はバスキアの作品を、ZOZOの創業者の前澤友作氏が123億で落札したオークション史上最も高いアメリカ人アーティストだということで知っているでしょう。生前を知る人は、壁の落書きがバスキアやキース・ヘリングによってアートとして見られるようになった時代の変化を肌で感じていらしたかもしれません。美術に限らないことですが、一世を風靡した創作者が若くして亡くなると、その続きがないために、当時のもてはやされた一部の評価だけが残ってしまったり、名前のみが伝説化したり、あるいは部分的なイメージのみが伝わるといったことがあるように思います。

ジャン=ミシェル・バスキア
Fooey, 1982
The Museum of Art, Kochi
Artwork © Estate of Jean-Michel Basquiat.
Licensed by Artestar, New York

展覧会は、バスキアの10年に満たない、その短い活動期間に残されたもののうち、約130点の絵画やドローイングなどで構成されています。一つ一つの作品に込められたメッセージが濃密であることもあり、量、質ともに充実しています。生涯にわたって制作されたもの、例えば初期のグラフィティやコラージュ作品、学校のノートに書かれた詩のようなメモや、紙に書かれた漫画なども含むのですが、それらが丹念に集められたことで、バスキアという人がくっきりと浮かびあがります。

ジャン=ミシェル・バスキア
Bombero, 1983
Kitakyushu Municipal Museum of Art
Artwork © Estate of Jean-Michel Basquiat.
Licensed by Artestar, New York

こうしてまとまって見ると、バスキアは言葉の人だったのだと思います。毎日のように言葉が綴られたノートが展示されていることもあります。また壁に書く時は言葉の方がより直接的に訴えることができますし、そして何より短時間で仕上げられ、見つかるリスクを抑えることができたからというのもあるでしょうし、ペインティング作品の中にも言葉で書かれた部分が多くあります。ストリートアートでの文字は、その後に暗号化して完全に姿を隠してしまった人たちへ受け継がれたようですが、現在へ続くストリートアート作品の多くが絵画的であることに比べてバスキアの文字の使用は際立っています。描くことだけでは伝えきれない部分を言葉が補い、また文字のカタチも描かれるモノの一つとなっていたのでしょうか。

ジャン=ミシェル・バスキア
Plastic Sax, 1984
agnès b. collection
Artwork © Estate of Jean-Michel Basquiat.
Licensed by Artestar, New York

展示の中頃から「YEN」や「おりがみ」などの言葉が出て来る作品が続きます。バスキアは1982年の初来日以来、度々日本を訪れていたそうですが、それは例えば現在アメリカのミュージシャンが日本文化に興味を持って来日するのとは少し違うようです。バスキア作品には日本の影響はすでに1980年に見られ、それから亡くなる1988年は日本経済の絶頂期であったことが思い起こされます。ハーバード大学教授が日本経済の強みを書いた『ジャパン・アズ・ナンバーワン』(1979年)がベストセラーになり、アメリカ市場を席巻した日本製品が、不満を持つ労働者によって燃やされる場面がニュースで繰り返されるような、アメリカ国民、ニューヨーク市民の反感を買った時代でした(日本のバブル経済の崩壊は1989年年末にピークをつけた株式市場から始まります)。

展覧会のサブタイトルを「Made in Japan」とするほど、日本を題材にした作品がこれほど多くあるのには驚きました。ちなみに2年前のロンドンのバービカン・センターでの展覧会にはアンディ・ウォーホルとの対談の映像などもあって人気でしたが、日本に関連する作品はありませんでした。社会、歴史、文化、スポーツ、音楽と視野の幅広いバスキアだからとも言えますし、今では信じられないことですが、当時の日本はそんなバスキアの注意を魅くような先進性があったからなのでしょう。

30年経った現代社会にバスキア作品は何を伝えるのか、鑑賞者は作品から何を思うか、個々の作品が象徴するものをどのように読み解くのか、興味のあるところです。

ジャン=ミシェル・バスキア
©Roland Hagenberg

■巡回情報: 巡回なし

展覧会ホームページ

開始日2019/09/21
終了日2019/11/17
エリア東京都
時間10:00~20:00(最終入館 19:30)。ただし9月25日(水)、9月26日(木)、10月21日(月)は17:00まで(最終入館 16:30)
休日休館日9月24日(火)
その他備考一般 2,100円 高校・大学生 1,600円 小・中学生 1,100円
開催場所森アーツセンターギャラリー (六本木ヒルズ森タワー52階)
アクセス東京都港区六本木6-10-1
お問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
六本木ヒルズ森タワー3階に総合チケットカウンターがございます。「ミュージアムコーン」からお越しください。
・東京メトロ日比谷線「六本木駅」1C出口 徒歩3分(コンコースにて直結)
・都営地下鉄大江戸線「六本木駅」3出口 徒歩6分
・都営地下鉄大江戸線「麻布十番駅」7出口 徒歩9分
・東京メトロ南北線「麻布十番駅」4出口 徒歩12分
・東京メトロ千代田線「乃木坂駅」5出口 徒歩10分
https://www.basquiat.tokyo/