住友財団修復助成30年記念 特別企画「文化財よ、永遠に」

1s.阿弥陀如来立像

阿弥陀如来立像 鎌倉時代・13世紀 ベトナム国立歴史博物館

東京国立博物館で開催されている特別企画「文化財よ、永遠に」は、文化財の維持、修復とともに文化財保護の大切さを、日本各地で大切に守り伝えられてきた仏像をとおして理解できる展示です。文化財は多くの場合、作成されてからの経年劣化や思いがけない自然の災害での破損で修復を余儀なくされます。また修復によって昔の人々の思いが繋がり、伝えられています。修復には専門的な知識や技術、そして何より費用が必要ですが、それを公益財団法人住友財団が平成3年より文化財の維持・修復に対して助成を行い、これまで累計1100件以上もの修復に貢献してきました。その助成事業が始まりまもなく30年になるのを記念して、その軌跡を紹介しています。同時期に、泉屋博古館(京都)(2019年9月6日-10月14日)、泉屋博古館分館(東京)(2019年9月10日-10月27日)、九州国立博物館(福岡)(2019年9月10日-11月4日)でも開催し、仏像、絵画、文書、歴史資料など、各会場で異なる作品を展示しています。

冒頭の画像は75年ぶりにベトナムより里帰りした阿弥陀如来立像です。昭和18年(1943)に日本からフランス極東学院に阿弥陀如来立像、陶磁器、刀の鍔などが贈られ、クメール彫刻、金属工芸などが日本に届きました。日本からの交換品は長らく所在不明でしたが、6年ほど前に九州国立博物館の調査でベトナム国立歴史博物館にあるものがそれにあたるとわかりました。修復の際、本体を台座から分離したところ、東京国立博物館が明治35年(1902)に購入した時のラベルが見つかったそうです。柔和な良いお顔です。

重要文化財 千手観音菩薩立像 平安時代・9世紀 福井・髙成寺蔵

海から近く自然豊かな環境のお寺で長く崇拝されている千手観世音菩薩立像です。頭から脚部までヒノキの一材から掘り出し、一本造の技法から平安時代前期のものと考えられます。修理のために解体すると脇手(わきしゅ)はすべて後の時代につくりなおされたものだとわかりました。しかも平安時代後期や、中世(鎌倉、室町)や、江戸時代のものもあります。何回にも修理し大事にされてきた仏像です。解体、修理がいかに手のかかる大変なものかは会場での説明や図録でよくわかります。現在行っている修理は「現状維持」を原則としていますが、像全体の印象と大きく合わなかったり、部材が修理できないほど傷んでいたりするときは作り直すこともあるそうです。

宝冠阿弥陀如来坐像 鎌倉時代  12~13世紀 愛知・財賀寺蔵(撮影 名古屋市立博物館)

愛知・財賀寺蔵の宝冠阿弥陀如来坐像の修理では全体に虫損がはなはだしかったので、ガス燻蒸(臭化メチルおよび酸化エチレンの混合ガス)が実施されたそうです。さらに各部にも損傷があり、像が不安定だったため全解体され修理、補修されました。図録からの説明によると臭化メチルを使用したガス燻蒸剤はオゾン層破壊防止のため平成17年から全面使用禁止となり、現在は二酸化炭素などを使用した低酸素濃度下での燻蒸が主流ということです。

阿弥陀如来坐像 平安時代・11世紀 福島・杉阿弥陀堂

杉阿弥陀堂という名前にほっこりしてしまいます。東日本大震災の揺れで脇侍である観音菩薩像は倒壊、他像の部材も脱落するなどの被害を受けました。あの大震災では仏像、絵画、あるいは寺社そのものが沢山被害を受けたことだと思います。一つ、一つに手がかかる修復なだけに、まだまだ手付かずの物も残されています。

虚空蔵菩薩坐像 平安時代・11世紀 茨城・真壁町山口地区

公益財団法人住友財団会長の野依良治氏が図録で述べている言葉のごく一部を抜粋しますと、文化財にはそれを生み出した民族固有の歴史が宿っており、また未来を創る人々の精神の糧であり、全人類が共有する財産として普遍的価値をもっているとのことです。野依氏自身、科学者として、人類社会の発展には科学技術の進展とそれによる公共的価値の創造、イノベーションンが不可欠と考えていますが、同時に文化や芸術による人々の精神の昇華こそが、多様性に満ちた豊かな人間社会を彩ると信じている、と言われています。

地域の外から拝観することは少ない、地元の人々に寄り添ってきた貴重な仏像が集結しました。54点それぞれに生まれた時の物語があり、数百年間土地の人々に信仰されている仏像です。仰ぎ見た仏像たちの素朴な中にある温かさ、厳かさを感じるとともに、あらためて文化財とは何なのか、思いを新たにしました。

展覧会ホームページ

開始日2019/10/01
終了日2019/12/01
エリア東京都
時間開館時間 9:30~17:00 金・土曜日、11/3(日・祝)、11/4(月・休)は21:00まで
*入館は閉館の30分前まで
休日休館日 月曜日、11月5日(火)、ただし11/4(月・休)は開館。
その他備考観覧料 一般620円、大学生410円
*総合文化展観覧料でご覧いただけます。
*高校生以下および満18歳未満,満70歳以上の方は無料です(入館の際に年齢のわかるもの要提示)。
*障がい者とその介護者1名は無料です(障がい者手帳要提示)。
開催場所東京国立博物館[上野公園]
本館特別4室・特別5室
アクセス〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9
☎03-5777-8600(ハローダイヤル)
・JR上野駅公園口、または鶯谷駅南口下車 徒歩10分
・東京メトロ 銀座線・日比谷線上野駅、千代田線根津駅下車 徒歩15分
・京成電鉄 京成上野駅下車 徒歩15分