クリスチャン・ボルタンスキー ー Lifetime

10s. 合間に

《合間に》 2010 / ビデオプロジェクション、ストリングス・カーテン / 作家蔵
© Christian  Boltanski  /  ADAGP,  Paris,  2019,
Photo  © The  Israel  Museum,  Jerusalem  by  Elie  Posner

現代美術の巨匠、クリスチャン・ボルタンスキー(1944年-)の活動の全貌を紹介する、日本では過去最大規模の回顧展です。暗い空間に浮かぶ宗教的とも言える作品から、記憶や存在の痕跡といった作品で、現在まで世界中で最も評価されている芸術家の一人です。日本でも美術館に収蔵された作品や「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」、現在開催中の「瀬戸内国際芸術祭」などの国際芸術祭で心打たれる数々の作品を通じてよく知られています。本展は、50年にわたる様々な試みを一堂に集めるとともに、作家自身が「展覧会をひとつの作品のように見せる」ことを意図したインスタレーションとなっています。

《コート》 2000 / コート、ソケット、電球 / 作家蔵
© Christian Boltanski / ADAGP, Paris, 2019,
Courtesy Power Station of Art, Shanghai, Photo by Jiang Wenyi

会場は「DEPART」(出発)のサインの元、狭い入り口から入り、日本では見たことのない作品から始まります。半世紀に渡る活動と言うだけあって、最初期1969年の映像作品、70年代初頭のケースに入れられた子ども時代に使用していた日常品を復元した作品などが展示されており、すでに初期から日常にある闇を思わせ、現在のボルタンスキーが色濃く感じられます。

《保存室(カナダ)》 1988 / 衣類 / 作家蔵
© Christian  Boltanski  /  ADAGP,  Paris,  2019, © Ydessa
Hendeles Art Foundation, Toronto, Photo by Robert Keziere

もっとも広い展示室は、ボルタンスキー作品を象徴する不明瞭な人の写真を使った80年代の《モニュメント》、《保存室(プーリム祭)》を中心に、生と死の間をただよう作品群によって荘厳とも言える宗教的な空間となっています。

《モニュメント》 1986 / 写真、フレーム、ソケット、電球、電気コード /
作家蔵 © Christian  Boltanski / ADAGP, Paris, 2019,
Photo  © The  Israel Museum, Jerusalem by Elie Posner

それは、さらに無数の顔の写真によって理不尽に生を奪われた声なき人々を思わせる90年代の作品《死んだスイス人の資料》、《174人の死んだスイス人》へと続きます。

2000年代に入ると《心臓音》や《ぼた山》、《黄昏》、《アニミタス(白)》など、日本でも展示された作品もありますが、写真以外を使うことで持ち主の匿名性、無名性がより加速します。同時に《自画像》や《合間に》で逆にボルタンスキー自身の子どもの頃から制作年までの写真を使っているのが対照的です。《合間に》は吊り下げられた紐がカーテンのようになっていて、そこにボルタンスキー自身の顔写真が年齢を刻んで投影されていきます。巨大で不明瞭な人の顔の間を通り抜けることで、希望につながるのか、被写体の歴史を一瞬で追体験することになるのか、未知の不安に向かうことになるのか、ぜひ身体で感じてみてください。

《ぼた山》 2015 / 衣類、円錐形の構造物、ランプ / 作家蔵
© Christian  Boltanski  /  ADAGP,  Paris,  2019,
© MACs_Grand  Hornu,  Belgique,  Photo  by  Philippe  De  Gobert

《アニミタス(白)》 2017 / ビデオプロジェクション (HD、10 時間 36 秒)、
シルクペーパーの玉 / 作家蔵 © Christian Boltanski / ADAGP, Paris, 2019,
Courtesy Power Station of Art, Shanghai, Photo by Jiang Wenyi

Lifetime というタイトルは、作品に取り上げられた、見ず知らずの多数の人々—写真や、音や、痕跡、衣服、などによって登場した多くの人々—それぞれのLifetime でもあり、これまで表現を続けて来たボルタンスキー自身のLifetime とも読めます。

《発言する》 2005 / 板、コート、ランプ、サウンドボックス / 作家蔵
© Christian Boltanski / ADAGP, Paris, 2019, © MACs_Grand  Hornu,
Belgique,  Photo by Philippe De Gobert

展示の最後は「ARRIVEE」(到着)で終わりますが、「DEPART」(出発)で始まって以来、ボルタンスキー作品は一貫して死と切り離せません。鑑賞者の目に映る作品は死のイメージであっても、作品から想像するのは生であり、だからわたしたちのLifetime ということでもあるのでしょう。

深い想像と思索による作品に貫かれた素晴らしい展示です。

クリスチャン・ボルタンスキー © Christian Boltanski /
ADAGP, Paris, 2019, Photo by Didier Plowy

国立新美術館ホームページ

展覧会公式サイト

Exhibition homepage

開始日2019/06/12
終了日2019/09/02
エリア東京都
時間10:00~18:00
※毎週金・土曜日は21:00まで
※入場は閉館の30分前まで
休日毎週火曜日休館
その他備考1,600円(一般)、1,200円(大学生)、800円(高校生)
中学生以下は入場無料
障害者手帳をご持参の方(付添の方1名含む)は入場無料
開催場所国立新美術館 企画展示室2E
アクセス〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
03-5777-8600(ハローダイヤル)
・東京メトロ千代田線乃木坂駅 青山霊園方面改札6出口(美術館直結)
・東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分
・都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩約4分
https://www.nact.jp/information/access/