志賀理江子 Human Spring

志賀理江子

〈ヒューマン・スプリング〉 2018年 作家蔵 ©Lieko Shiga

東京都写真美術館の展示室丸ごとを使用したインスタレーションです。通常、写真はフレームに入った状態で、壁に沿って観るか、写真集をめくる、あるいは写真の一枚一枚を手にとるのですが、最近は引き延ばした作品を部屋全体を使って身体的に鑑賞する写真インスタレーションもあり、その代表が志賀理江子さん。というより志賀作品のベストな展示形態がインスタレーションであり、他の誰のものでもない証しのようなものと言えます。

7年前のせんだいメディアテークでの「螺旋海岸」は、忘れがたい展示です。大きいものは身長より大きい、大小様々のサイズのプリントが立てかけられ、鑑賞者は外側から螺旋状に作品に沿って、規則的とはいえない曲線を描きつつ進みます。今回は作品が巨大なマッチ箱のような立体に貼付けられています。箱は規則正しく同じ向きに並べられているのですが、身体を超える大きさの作品に阻まれて見通しが効かず、まるで迷路の中に入り込んだようです。右へ左へ、進むにしたがって思いもかけないシーンに出くわしたり、さっき通ったところなのに、一部分しか見ていなかったことに気づかされたりと、惑い、驚かされます。しばらくすると立体の1面には全て同じ一枚が使われていることに気づきますが、巨大な箱の全面を観ることも、展示室全体を見渡すこともできません。

写真は、現実の場面を写し取ったはずですが、志賀作品はそこに加工や演出があるとしても、本当にそのシーンが現実なのか確信できない怪しさがあります。決定的瞬間という言葉に表されるように、写真にはある瞬間が映されているものなのに、志賀作品ではそれが実際にあったことなのか、過去でも現在でも未来でもないし、でもまた、そのどれでもありえそうで、あるいは現実と平行にある別の世界のような気もしてきます。現実はある種の客観的なもののはずが、写真に写っている知らない風景や人物が観る人に鋭く突きつけられ、そのシーンを他人ごととできないように揺さぶり、迫ってきます。写真という概念からすると、写真と呼ぶことすら戸惑う作品です。

階上の展示室では「写真の起源 英国」を開催中です。1930年代のウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボット(1800-77年)による写真の発明と以降の、写真の黎明期における記念すべき貴重な作品が豊富に並んでいます。その後200年近くの間、数多くの表現者たちが写真に取り組み、今、最も先端で写真に挑戦している志賀作品が連なるのを目撃できるのも、この美術館ならではと思います。

展覧会ホームページ

開始日2019/03/5
終了日2019/05/06
エリア東京都
時間10:00-18:00 入館は閉館時間の30分前まで
休日毎週月曜日(ただし、4月29日(月・祝)および5月6日(月・振休)は開館)
その他備考一般 700(560)円/学生 600(480)円/中高生・65歳以上 500(400)円
開催場所東京都写真美術館
アクセス〒153-0062 東京都目黒区三田1-13-3
恵比寿ガーデンプレイス内
TEL 03-3280-0099
JR恵比寿駅東口より徒歩約7分
東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩約10分
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