国立西洋美術館開館60周年記念 
ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代

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シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ)
《多数のオブジェのある静物》1923年 油彩、カンヴァス 114x146cm
パリ、ル・コルビュジエ財団
©FLC/ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2018 B0365

ル・コルビュジエ(1887−1965)といえば、モダニズム建築の提唱者で20世紀を代表する建築の巨匠。日本でもっとも名の知られた建築家かもしれません。国立西洋美術館本館は、日本で唯一のル・コルビュジエ建築で、2016年にユネスコ世界文化遺産に登録されました。

実際の建物を目にすることがまれなのに、これほど日本人が親しみを感じているのは、ル・コルビュジエ建築がモダニズムの一つの規範となり、その影響をそれ以後の日本にある建築物を通して受け取っているからではないでしょうか。また、ル・コルビュジエは建築や都市計画はもちろんの事、家具のデザイン、絵画や詩、雑誌の編集、出版等と多方面にわたっています。

ル・コルビュジェ「サヴォワ邸」(1928-31年)

国立西洋美術館では、若きシャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエの本名)が故郷のスイスを離れ、芸術の中心地パリで「ピュリスム(純粋主義)」の運動を推進した約10年間の活動を振り返る展覧会を開催しています。

展示はル・・コルビュジエとピカソやブラックなど同時代の作家たちの美術作品約100点に、建築模型、出版物、映像など多数の資料を加えて構成されています。ル・コルビュジエが世に出た時代の精神を、彼自身が作り出した世界遺産建築の中で体感できます。

フェルナン・レジェ《サイフォン》1924 年 油彩、カンヴァス 64.8×45.7cm
バッファロー、オルブライト=ノックス美術館 Collection  Albright-Knox Art  Gallery,
Buffalo,  New  York. Gift  of  Mr.  and  Mrs.  Gordon  Bunshaft,  1977  (1977:29)
Image  courtesy  of  the  Albright-Knox  Art  Gallery

第一次大戦の終結直後の1918年末、ジャンヌレと画家アメデ・オザンファンは、機械文明の進歩に対応した「構築と総合」の芸術を唱えるピュリスムの運動を始めました。今年は国立西洋美術館の開館60周年であるとともに、「ピュリスム」の100周年でもあります。

国立西洋美術館の原点は、ちょうどピュリスム運動の展開と重なる時期に実業家の松方幸次郎が西洋美術を収蔵・公開するために形成した「松方コレクション」です。膨大な松方コレクションは大半が1927年の経済恐慌で売り払われる中、約400点のフランス近代美術作品はパリに残されていて、第二次大戦中は敵国人財産として没収されました。戦後、日仏友好のしるしとして日本に寄贈返還されることになりましたが、その際にフランス側の条件が松方コレクションを収蔵・公開するための新しい美術館を建設することだったそうです。日本政府はこれをうけてフランスを代表する建築家ル・コルビュジエに設計を依頼しました。

ル・コルビュジエ 「エスプリ・ヌーヴォー館」(1925年)
Musée des Arts Décoratifs, Paris ©MAD, Paris

建築家として名を成してからもル・コルビュジエは毎日午前中は自宅でデッサンや絵画制作に取り組むことを習慣としていたそうです。建築は現実的な条件を無視して作ることはできませんが、絵画は自分の思いつくまま自由に実現できるため、彼にとっては欠かせない表現手段であり、絵画で生まれた着想が建築に応用されることもめずらしくなかったようです。ピュリスム時代の絵画は、瓶、コップ、皿など、身の回りのありふれたものを素材にした静物画で、それらの素材を幾何学的な規則に従って組み合わせ、秩序ある画面をつくりあげました。1924年の《構成》に線と構成の美が表れています。数年後にはピカソやブラックのキュビズム絵画の影響により、物が複雑に重なり合い、手前の物と奥の物が絶えず入れ替わるような変化のある空間を作るようになりました。こうしたピュリスム後期のアイデアが数年後に設計された「サヴォワ邸」などの建築にも生かされているようです。

シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ)
《開いた本、パイプ、グラス、マッチ箱のある静物》1918 年頃
鉛筆・グアッシュ、紙 37.5×53.5cm パリ、ル・コルビュジエ財団
©FLC/ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2018 B0365

巨匠の建築に関する模型やその設計についての資料等かと思って訪れたのですが、思いがけなく同じ時代に美術界を牽引した大家の絵画に会うことになりました。それら同時代の作品に通底する意識と指向を感じるとともに、建築の巨匠の作品に現れる以前にある絵画の美しい構成と色の配置に、絵画の良さを再認識した展覧会です。

パリ、ジャコブ通りの自宅におけるル・コルビュジエと
《多数のオブジェのある静物》(部分)
1923 年 パリ、ル・コルビュジエ財団
©FLC/ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2018 B0365

展覧会ホームページ

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開始日2019/02/19
終了日2019/05/19
エリア東京都
時間開館時間 午前9時30分~午後5時30分
毎週金曜日・土曜日は午後8時まで、 入館は閉館の30分前まで
休日休館日 毎週月曜日(ただし、3月25日、4月29日、5月6日は開館)、5月7日
その他備考入館料 一般1600円、大学生1200円、高校生800円
開催場所国立西洋美術館
アクセス〒110-0007
東京都台東区上野公園7-7
お問い合わせ ハローダイヤル03-5777-8600
JR上野駅下車(公園口)徒歩1分
京成電鉄京成上野駅下車 徒歩7分
東京メトロ銀座線、日比谷線上野駅下車 徒歩8分
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