奇想の系譜展  江戸絵画ミラクルワールド

2s.雪山童子図

曽我蕭白《雪山童子図》紙本着色 一幅 169.8×124.8㎝
明和元年(1764)頃 三重・継松寺

美術史家・辻惟雄氏が1970年に著した『奇想の系譜』は、それまで書籍や美術史の中で注目を浴びることのなかった伊藤若冲をはじめ、岩佐又兵衛、曽我蕭白、長沢芦雪、狩野山雪、歌川国芳を紹介し、現在も読み継がれています。一昨年大きな話題となった伊藤若冲人気などの火付け役となった書籍といってもいいでしょう。著書名を冠した本展ではこの6名に、白隠慧鶴と鈴木其一の2名を加えて展覧会が構成されています。

開催に先立って行われた内覧会で、辻惟雄氏が「お腹がいっぱいになる展示でした」とコメントされていましたが、まさに「江戸のアヴァンギャルド一挙集結!」というポスターのコピーに頷ける、斬新で自由な発想に溢れ、そのエネルギーに圧倒される展覧会となっています。

展示は画家ごとに章立てされています。伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、岩佐又兵衛、狩野山雪、白隠慧鶴、鈴木其一、歌川国芳の順に続きます。

□伊藤若冲

伊藤若冲《紫陽花双鶏図》絹本着色 一幅 139.4×85.1cm
米国・エツコ&ジョー・プライスコレクション
(画像をクリックすると拡大します。以下同様)

伊藤若冲《梔子雄鶏図》絹本着色 一幅 85.8×43.1cm 個人蔵

《梔子雄鶏図》は本展の開催に向けた調査の過程で見出された初公開の作品です。伊藤若冲が家業の青物問屋で仕事をしつつ描いた30代のものと思われ、希少な初期作品だそうです。また《鶏図押絵貼屏風》も本展の準備過程で見出された新出作品で、こちらは82歳の落款のある最晩年の作品です。

□曽我蕭白

曽我蕭白《群仙図屏風》紙本着色 六曲一双 上:右隻 下:左隻
各172.0×378.0cm 明和元年(1764)文化庁 重要文化財
[展示期間:3月12日〜4月7日]

冒頭の《雪山童子図》の強烈な色彩と不思議とも思える風景の捉え方など、観るものを飽きさせません。

□長沢芦雪

長沢芦雪《白象黒牛図屏風》紙本墨画 六曲一双 上:右隻 下:左隻
各155.3×359.0㎝ 米国・エツコ&ジョー・プライスコレクション

長沢芦雪《猿猴弄柿図》絹本着色 一幅 104.0×37.7cm 個人蔵

《猿猴弄柿図》は本展の準備段階において見出された再発見作品です。私ごとになりますが、著書『奇想の系譜』を拝読した折に芦雪の《山姥図》がとても印象的でした。その絵を今回じっくりと鑑賞でき感動しました。

□岩佐又兵衛

岩佐又兵衛《山中常盤物語絵巻 第四巻(十二巻のうち)》紙本着色 一巻
34.1×1259.0cm 静岡・MOA美術館 重要文化財
[展示期間:2月9日〜3月10日]

《山中常盤物語絵巻》《洛中洛外図屏風(舟木本)》をはじめ、又兵衛ファンのみならず、思わず見入ってしまう絵が並びます。細部まで鑑賞できるように単眼鏡などを用意されることをお奨めします。

□狩野山雪

狩野山雪《梅花遊禽図襖》紙本金地着色 四面 各184.0×94.0㎝
寛永8年(1631)京都・天球院 重要文化財

山雪というと、不気味な《寒山拾得図》や《梅花遊禽図襖》の不自然なまでに曲げられた梅の枝などがすぐに思い描かれることが多いかと思いますが、《龍虎図屏風》や《韃靼人狩猟・打毬図屏風》などは、線の美しさや描写の見事さが際立つ作品を見て、山雪の新たな魅力を発見できるのではないでしょうか。また、《四季耕作図屏風》は奥行のある画面の中に農村で暮らす人々の姿が丹念に描かれ興味のつきない作品でした。

□白隠慧鶴

白隠慧鶴《達磨図》紙本着色 一幅 192.0×112.0㎝ 大分・萬壽寺

白隠の禅画は、若冲、蕭白、芦雪など18世紀京都画壇の画家の個性的な表現が生まれるための起爆剤になった可能性が近年指摘されているそうです。一気に引かれた墨の線からは、何物にも囚われないおおらかで骨太の人柄がにじみ出ています。

□鈴木其一

鈴木其一《百鳥百獣図》絹本着色 双幅 上:右幅 下:左幅
各138.0×70.7cm 天保14年(1843)
米国・キャサリン&トーマス・エドソンコレクション

《百鳥百獣図》は今回が初の里帰りとなります。鮮やかな色彩と緻密に描きこまれた鳥獣が見事です。1796生まれの其一は前出の6名の絵師たちの次の世代になります。奇想の継承という点も鑑賞のポイントになるでしょう。

□歌川国芳

歌川国芳《宮本武蔵の鯨退治》大判三枚続 弘化4年(1847)頃 個人蔵

さすがの国芳とでも言うべきか。奇想の絵師に連なる資格十分です。しかし晩年に描かれた《一ツ家》からは、奇抜、奇想という観点だけではない、絵師としての内容の深さを感じることができました。

『奇想の系譜』が発刊されてからおよそ50年。一冊の本が契機となり、新たな研究や発見が続きました。それは、江戸の絵画史を塗り替えたといっても過言ではない現象でした。会場で、江戸の絵師たちのエネルギーや斬新な視点を感じて下さい。展覧会には単眼鏡を是非ご持参下さい。絵師たちの奇想ぶりが一層の迫力で迫ることまちがいなしです。

東京都美術館ホームページ

特設WEBサイト

開始日2019/02/09
終了日2019/04/07
エリア東京都
時間9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)
金曜日、3月23日(土)、30日(土)、4月6日(土)は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)
休日月曜日、2月12日(火)
※ただし、2月11日(月・祝)、4月1日(月)は開室
その他備考一般 1,600円 / 大学生・専門学校生 1,300円 / 高校生 800円 / 65歳以上 1,000円
※中学生以下は無料
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料
※いずれも証明できるものをご持参ください
開催場所東京都美術館
アクセス〒110-0007
東京都台東区上野公園8-36
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
・JR上野駅「公園口」より徒歩7分
・東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅「7番出口」より徒歩10分
・京成線京成上野駅より徒歩10分
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