エキゾティック X モダン アール・デコと異境への眼差し EXOTIC X MODERN French Art Deco and inspiration for afar

森

ジャン・デュナン《森》 20世紀前半
Collection du Mobilier national © Isabelle Bideau

アール・デコと言えば、それ以前のアール・ヌーボーが有機的で植物を思わせる曲線を多用した装飾的なデザインであったのに対して、幾何学的なモチーフで、すっきりしたデザインが思いうかびます。それは反動のように対照的で、もし当時に生きていたら、とても新鮮な空気を運んできたと感じられるものだったのではないかと思います。

ジャン・デュナン《球型花瓶(緑、黒)》1925年、東京国立近代美術館蔵

ファッションはその変化を最もはっきりと映したものの一つでしょう。コルセットと大きくふくらんだ長いスカートで優美なシルエットをつくったアール・ヌーヴォー時代のドレスから、単純で輪郭のはっきりした直線的なフォルムのスタイルへと大きな変化をみせます(横浜美術館で開催の「ファッションとアート 麗しき東西交流」展、2017年4月15日—6月25日を参照)。革新的で機能的なデザインは、自動車に代表される工業製品が生まれ、近代的な都市生活というこの時代の社会の変化を映しています。

日本に残る数少ないアール・デコ建築の代表作である東京都庭園美術館の旧館、その1Fでは、当時を代表するファッション・デザイナーのポール・ポワレのローブ(布地はラウル・デュフィによるデザイン)、ヴァン・クリーフ&アーペルやショーメなど現在に続くジュエラーの装飾品などが、アール・デコの室内に置かれています。この展示のために来たものが、もともとこの館にあったものであったとしても不思議でははく、しっとりと100年の年を超えてそこにあります。ジャポニスムや広くアジアへの関心はあらたなモダンへと広がり、そこには日本人の装飾家や美術家の存在もありました。

ポール・ポワレ《ローブ》
藤田真理子・ポール・ジュリアン・アレキサンダー蔵

2Fの「ジョセフィン・ベイカーとナンシー・キュナード」の展示室のポスターなどの作品は、単純化されたデザインでスタイリッシュです。米国出身のでダンサーであり、魅惑的な容姿と類い希な才能から「黒いヴィーナス」と呼ばれた黒人のジョセフィン・ベイカーは、ボードレール、ヘミングウェイ、ピカソなどに賞賛され、ジャズやチャールストンとともに新しい大衆文化のアイコンとなります。一方、船会社で富豪のキュナード家に生まれたナンシー・キュナードはパリで前衛芸術家や文化人と交流しますが、黒人ジャズピアニストを恋人としたことで人種差別に向き合います。アール・デコの室内で作品に向き合っていると、当時の空気がなお一層色濃く伝わってきて、1920年代にタイムスリップしたような感じがします。

ピエール=エミール・ルグラン《アフリカの椅子》ジャック・ドウーセ旧蔵、
1924年頃、Musée des Arts décoratifs, Paris ©MAD, Paris/Jean Tholance

新館での展示作品からは、当時の時代背景に、発掘が相次いだ古代エジプト(エジプト美術)の装飾模様、アステカ文化の装飾、日本や中国などの東洋美術など、古今東西、特に東洋やアフリカなど非欧州圏の文化、美術との出会いがあったことを教えてくれます。それまでの遠い土地へのあこがれや想像が、飛行機や客船によって実際に足を運べるようになったこととでより多くのものを目にすることとなり、それらを積極的に取り入れます。植民地主義的流行とも言えますが、グローバル化して世界の隅々まで光の元にさらされて内向き指向になりがちな現代からすると、未知のものへの前向きな好奇心や情熱がうらやましいように感じられます。

フランソワ・ポンポン《シロクマ》1923-33年、群馬県立館林美術館蔵

これまで東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)では数多くの展示をしていますが、今回は建物と一体となっている感があります。旧館は、朝香宮ご夫妻がパリに滞在中の1925年に訪問したパリ万国装飾美術博覧会(正式名称は「現代装飾美術・産業美術国際博覧会Exposition Internationale des Arts Décoratifs et Industriels modernes」、略称をアール・デコ博)でデザインや芸術に魅了され、東京にアール・デコの館を建てることに取り組まれたことによるものです。主要な室内内装はアール・デコ博で活躍した活躍したアンリ・ラパンに依頼、ラパンは《フランス大使館》パヴィリオンのハイライトであった大サロンを担当し、旧朝香宮邸は《フランス大使館大サロン》のスタイルを継承した唯一の作例となりました。後に館の主となったのは吉田茂で、外務大臣公邸(のちに首相公邸)として使用され、サンフランシスコ講和条約締結の構想を含む、戦後の重要な局面における舞台の一つとなりました。

ルイ・ブーケ《ブラック・アフリカ》1931年、
Ville de Boulogne-Billancourt, Musée des Année 30
© Musée de a la Ville de Boulogne-Billancourt Photo: Philippe Fuzeau

今も建築を学ぶ学生やデザインに魅了された人々、歴史の場面を想う人々の来館が絶えませんが、今回の展示では建物だけでなく、室内に時を経た作品が佇み、当時の気配をさらに強く感じることができます。

ヴァン・クリーフ&アーペル《中国風の卓上時計》1930年、Van Cleef & Arpels

展覧会ホームページ

開始日2018/10/6
終了日2019/01/14
エリア東京都
時間10:00-18:00(入館は17:30まで)
休日第2、第4水曜日および年末年始(12/28-1/4)
その他備考観覧料:一般 1,200円、大学生 960円、中・高生 600円、65歳以上 600円
開催場所東京都庭園美術館
アクセス〒108-0071
東京都港区白金台5−21−9
TEL: 03-5777-8600(ハローダイヤル)
JR山手線「目黒駅」東口・東急目蒲線「目黒駅」正面口より徒歩7分
都営三田線・東京メトロ南北線「白金台駅」1番出口より徒歩6分