ムンク展-共鳴する魂の叫び Munch: A Retrospective

1c.自画像

エドヴァルド・ムンク《自画像》1882年 油彩、紙(厚紙に貼付)26.5×19.5cm

世界で最もよく知られている絵画の一つ「叫び」を描いたノルウェーの巨匠、エドヴァルド・ムンク(1863-1944)の大回顧展「ムンク展―共鳴する魂の叫び」が上野の東京都美術館で開催されています(2019年1月20日まで)。

画家の故郷、ノルウェーの首都にあるオスロ市立ムンク美術館が誇る世界最大のコレクションを中心に、約60点の油彩画に版画などを加えた約100点が展示され、「ムンクとは誰か」「家族―死と喪失」「夏の夜―孤独と憂鬱」「魂の叫びー不安と絶望」「接吻、吸血鬼、マドンナ」「男と女―家、嫉妬、別れ」「肖像画」「躍動する風景」「画家の晩年」の9章で構成されています。愛や絶望、嫉妬、孤独など人間の内面が強烈なまでに表現された代表作の数々から、ノルウェーの自然を描いた美しい風景画、明るい色に彩られた晩年の作品に至るまで、約60年にわたるムンクの画業を振り返ります。

第1章 「ムンクとは誰か」

エドヴァルド・ムンク《地獄の自画像》1903年 油彩、カンヴァス 82×66cm

ムンクは生涯に沢山の自画像を残しました。自分を見つめるため、また、さまざまな表現方法を試みるためと思われます。画像の他に彼の写真、中でも今でいう自撮りによる写真も展示されています。長時間露光の試みなど、ムンクの知られざる一面を垣間見ることができます。

第2章 「家族―死と喪失」

エドヴァルド・ムンク《病める子I》1896年 リトグラフ 43.2×57.1cm

幼い頃より家族の死を経験し、自らも病弱だったムンクの内面が痛いほど伝わる作品群です。姉の死を題材にした《病める子I》に描かれた、死にゆく子の顔に現れた静かな諦観と、生の世界に引き留めることができない悲しさが見事に表現されています。

第3章 「夏の夜―孤独と憂鬱」

エドヴァルド・ムンク《夏の夜、人魚》1893年 油彩、カンヴァス 93.5×118cm

暗い海。光る月光の柱。うねる線、うつむく男。たたずむ女。
描かれた人物たちの孤独や苦悩が、色彩とうねる線により表現されています。また、多色刷りの木版画は木目の跡や微妙な刷りの強弱などが、とらえどころのない不安や孤独感を表現しているようです。

第4章 「魂の叫び―不安と絶望」

エドヴァルド・ムンク《絶望》1894年 油彩、カンヴァス 92×73cm

ムンクは素材や技法を変えて「叫び」を複数回描きました。本展に出品されている、オスロ市立ムンク美術館所蔵のテンペラと油彩による《叫び》は日本初公開の作品です。ムンク自身が残したメモによれば、これは自然を貫く叫びに耐え切れず耳を塞いでいるのだそうです。うねる線で描かれたフィヨルドや赤く燃える空が橋の上の人物の心にのしかかるようです。その圧力に耐え切れず、彼は耳を塞ぎ、口を開き、声なき声をあげているのでしょうか。横に展示されている《絶望》は対照的にうつむき、孤独の中に沈みこんでいくような作品です。いずれも記憶の中に深く刻まれる作品です。

第5章 「接吻、吸血鬼、マドンナ」

エドヴァルド・ムンク《月明かり、浜辺の接吻》1914年 油彩、カンヴァス 77×100.5cm

溶け合うように接吻を交わす男女の姿の作品が並びます。生への情熱が高まるほど、2人を囲む世界からは弧絶していくような感覚に囚われます。また、吸血鬼と題された一連の作品にも、吸血鬼に襲われた男性がそれでも吸血鬼から離れることができない、深い孤独を感じます。マドンナはムンクの女性観、また、生命をどう捉えていたかを考えさせられる作品です。

第6章 「男と女―愛、嫉妬、別れ」

エドヴァルド・ムンク《生命のダンス》1925年 油彩、カンヴァス 143×208cm

「芸術家は孤独でなければならない」と生涯を独身で過ごしたムンクですが、何人かの女性と波乱に満ちた恋愛も経験したようです。自身や友人の経験をもとに描かれたこれらの作品からは、甘美な恋愛ではない、愛するが故の孤独や哀しみが浮かびあがります。強い色彩と筆致が印象的です。
《生命のダンス》は人間が生まれ、愛し、老いてゆく姿を象徴的に描いています。静かな夜の海と月光の柱を背景に、音も無く通り過ぎる、時間そのものを、人間の形を借りて現しているかのようです。

第7章 「肖像画」

エドヴァルド・ムンク《フリードリヒ・ニーチェ》1906年
油彩・テンペラ、カンヴァス 201×130cm

ムンクは生涯に多くの肖像画を描きました。背景の色彩の鮮やかさと強さが、モデルの内面をより際立たせます。ニーチェの肖像画は、彼の黙然と心の中を見据えているような横顔が、背景の燃えるような空の赤い色により、一層強い印象を残す作品です。

第8章 「躍動する風景」

エドヴァルド・ムンク《疾駆する馬》1910-12年 油彩、カンヴァス 135.5×110.5cm

長い放浪生活の末、ようやく故国ノルウェーに帰国したムンクはようやく名声を確立することができました。第8章に展示されている作品はどれも鮮やかな色彩と光に溢れています。極端な遠近法や筆致の強さから命の輝きが感じられます。

第9章 「画家の晩年」

エドヴァルド・ムンク《自画像、時計とベッドの間》1940-43年
油彩、カンヴァス 149.5×120.5cm

会場の最後に展示されているこの作品のムンクは、それまでの苦悩から脱し、静かに老いと、自らの死を予感しているようです。ムンクといえば「叫び」があまりにも有名ですが、この絵からは、それだけではない、人の営みの苦しさや醜さに正面から向きあい、それを描いた作家なのだという静かな、そして強いメッセージが発せられているように思えました。

エドヴァルド・ムンク《叫び》1910年? テンペラ・油彩、厚紙 83.5×66cm

***作品はすべてオスロ市立ムンク美術館所蔵 All Photographs ©Munchmuseet***

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東京都美術館ホームページ

開始日2018/10/27
終了日2019/01/20
エリア東京都
時間午前9時30分~午後5時30分
金曜日、11月1日(水)、11月3日(土・祝)は午後8時まで
*入室は閉室の30分前まで
休日月曜日(ただし11月26日、12月10日、24日、1月14日は開室)、12月25日(火)、1月15日(火)[年末年始休館]12月31日(月)、1月1日(火・祝)
その他備考一般 1,600円、 大学生・専門学校生 1,300円、 高校生 800円、 65歳以上 1,000円
*12月は高校生無料
*11/21(水)、12/19(水)、1/16(水)はシルバーデーにより65歳以上の方は無料。当日は混雑が予想されます。
開催場所東京都美術館
アクセス〒110-007
東京都台東区上野公園8-36
・JR上野駅「公園口」より徒歩7分
・東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅「7番出口」より徒歩10分
・京成線京成上野駅より徒歩10分
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