横山華山 見ればわかる

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横山華山《祇園祭礼図巻》上巻部分 天保6-8(1835-37)年 個人蔵

横山華山《祇園祭礼図巻》下巻部分 天保6-8(1835-37)年 個人蔵
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JR東京駅丸の内北口改札を出て直ぐ右、駅構内に入り口のある東京ステーションギャラリーで、横山華山の展覧会が開催されています。

横山華山(1781/4~1837)は、江戸時代後期の京都で活躍した絵師です。諸画派に属さず、画壇の潮流に左右されない自由な画風と筆使いで人気を博したようです。曾我蕭白に傾倒し、岸駒に入門した後、呉春に私淑して絵の幅を広げた華山は多くの流派の画法を身に付け、作品の画題に合わせて自由自在に筆を繰りました。江戸の絵師たちにも大きな影響を与え、また、海外の研究者やコレクターからも評価され、欧米の美術館に優品が所蔵されています。本展は、華山の多彩な画業を系統立てて紹介する初めての回顧展です。

東京ステーションギャラリーでは見どころを5つ紹介しています。その1は「天才は天才を呼ぶ!」。蕭白と華山がそれぞれ描いた《蝦蟇仙人図》を見てください。どちらが蕭白の作品かわかるでしょうか。華山は若くして蕭白と比較し得るほどの才能を発揮していました。

横山華山《蝦蟇仙人図》個人蔵

曾我蕭白《蝦蟇仙人図》ボストン美術館
William Sturgis Bigelow Collection  Photograph © Museum of Fine Arts, Boston

普段は日米の離れた所にある2作品を、時と場所を超えて一度に見ること自体が贅沢なことですが、2作を並べて見ることで詳細に比べることができます。華山が多少アレンジを加えて、より人間に近く表しているようです。

見どころ2として「海外から優品が里帰り!」とあります。明治時代初期に華山の優品は海外に渡り、現在ボストン美術館に13点、大英博物館に6点が収蔵されています。その背景にはフェノロサやビゲローらによって華山の作品が海外で評価されていたことによります。ボストン美術館からは、縦3メートル、幅2メートルの蕭白風の大作《寒山拾得図》をはじめ5点、大英博物館から3点が里帰りしています。そのうち7点が日本初公開です。

横山華山《寒山拾得図》ボストン美術館
William Sturgis Bigelow Collection  Photograph © Museum of Fine Arts, Boston

見どころ3は「その自由さからくる近代性を見よ!」です。同時代の伝統や形式を重んじる諸画派に比べ、自由な表現が華山の魅力です。例えば《城州白河之図》は、画面の真ん中に大胆に配置された大きな木に目を奪われます。正面からみた宝船という奇抜な構図の《宝船》は、亡くなる2ヶ月前に描いた貴重な作品です。《富士山図》は、明治時代以降の作家の作かと見間違うような筆使いです。《唐子図屏風》に表現された人物の顔の陰影などは西洋風で近代的な画風を感じさせます。

横山華山《城州白河之図》文化10(1813)年 個人蔵

横山華山《宝船図》天保8(1837)年 京都府(京都文化博物館管理)

横山華山《富士山図》京都府(京都文化博物館管理)

横山華山《唐子図屛風》右隻 文政9(1826)年 個人蔵

横山華山《唐子図屛風》左隻 文政9(1826)年 個人蔵

横山華山《唐子図屛風》左隻部分 文政9(1826)年 個人蔵

見どころ4は「風俗画の細かな描写は華山の真骨頂。見ればわかる!」と力強く押しています。冒頭の画像《祇園祭礼図巻》は、江戸時代後期の祇園祭の全貌を、上下巻約30メートルに渡って克明に描いた華山の集大成ともいえる壮大な絵巻です。上巻には宵山や山鉾巡行の前祭、下巻には2014年に50年ぶりに復活した後祭や、芸妓が練り歩く「神輿洗練物(みこしあらいねりもの)」が描かれています。神輿洗練物は現在行われていない行事で、絵画資料として詳細に描かれているものは本絵巻しか確認されていません。祇園祭のハイライトである山鉾巡行を描く絵は他に多くありますが、巡行以外の行事や、鉾の懸装品・御神体から曳き手の人々の姿まで事細かに正確に描いた唯一の作品だそうです。

《紅花屏風》は、東北や北関東の紅花の産地を二度も訪れて取材し、制作された大作で、華山の最高傑作といっても過言ではありません。紅花栽培から収穫、加工品への生産過程までを正確に描いています。

横山華山《紅花屛風》右隻 文政6(1823)年 山形美術館・© 長谷川コレクション
山形県指定有形文化財(展示期間:9/22~10/14)

横山華山《紅花屛風》左隻 文政8(1825)年 山形美術館・© 長谷川コレクション
山形県指定有形文化財(展示期間:9/22~10/14)

最後の見どころ5は「貴重な資料を初公開!」です。蕭白と横山家の深いつながりが窺える「横山家宛書状」や、《祇園祭礼図巻》(上巻)の下絵があることが今回の調査であきらかとなった「祇園祭鉾調巻」など貴重な資料が初公開されています。同じく「斎藤月岑宛書状」は、斎藤月岑が『東都歳事記』の執筆にあたり、餅つきなど年中行事の挿図の校訂を華山に依頼したことに対する華山からの返信の書状で、今後の江戸文化史を語るうえでも必見の資料です。

横山華山「祇園祭鉾調巻(祇園祭礼図巻下絵)」部分 京都市立芸術大学芸術資料館

展示構成は5つの部門に分かれ、1.蕭白を学ぶー華山の出発点―,2.人物―ユーモラスな表現―、3.花鳥―多彩なアニマルランドー、4.山水―華山と旅する名所―、5.風俗―人々の共感―となっています。実にあらゆるジャンルに多才ぶりを発揮している華山です。海外では早くから評価されており、日本でも夏目漱石の小説『坊ちゃん』や『永日小品』に華山の名前が出てくるなど、明治時代までは国内でも知られていたようです。しかし画壇の潮流に左右されず、幅広い画域をもつ規格外な面は、知る人ぞ知る絵師となってしまったのでは、とのこと。

とても便利なロケーションということもあり、お薦めの展覧会です。

展覧会ホームページ

開始日2018/09/22
終了日2018/11/11
エリア東京都
時間開館時間 10:00~18:00(金曜日は20:00まで 入館は閉館の30分前まで)
休日休館日 月曜日(10月8日、11月5日は開館)、10月9日(日)
その他備考入館料 一般1100円、高校・大学生900円、中学生以下無料
開催場所東京ステーションギャラリー
アクセス〒100-0005
東京都千代田区丸の内1-9-1
☎03-3212-2485
JR東京駅 丸の内北口改札前
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/access.html