[企画展]水を描く ー広重の雨、玉堂の清流、土牛のうずしおー

05s_A0240_00_01 川端龍子 鳴門(全)1

川端龍子《鳴門》1929(昭和4)年 絹本・彩色 山種美術館

酷暑が続く中、涼やかな、あるいは清冽な空気が漂う展覧会が山種美術館で開かれています。今にぴったりとおもいましたが、展覧会の趣旨としては2018年9月に「国際水協会(IWA)世界会議」という水をテーマにした国際会議が開かれるのを機に水に注目し、水を描いた絵画を一同に集めた企画だそうです。

豊かな水源に恵まれた日本では、水が常に人々の生活と共にあり、その姿を沢山の画家が様々な美術作品に表しています。雨が池や湖をつくり、川となり海へ注ぐように、水は刻々と姿を変化させます。また、躍動する波や、光を反射する水面など、水が見せる表情は多くの画家の創作意欲をかきたてたのでしょう。水を描いた絵画には、画家たちの優れた技巧や多彩な表現をみることができます。江戸時代の浮世絵から近代・現代の日本画まで、山種美術館が所蔵する作品で、それらを確認しましょう。

展覧構成は3つの部門に分けてあります。

第1章    波と水面のイメージ

この1章はさらに「川―流れる水」「水面の表現」「海—波の躍動感」と3部に主題がわかれています。まず入口にある東山魁夷の《緑潤う》という絵が「川」の始まりです。清々しい気持ちが一気に胸に流れ込んできます。まさしく東山魁夷の緑が際立ち、水が生き生きと描かれています。

東山魁夷 《緑潤う》 1976(昭和51)年 紙本・彩色 山種美術館

(これ以下の写真はクリックすると拡大します)

歩を次に進めると川合玉堂、小林古径等々、名だたる大家の絵が連なっています。豪華!

川合玉堂《渡頭の春》 1935-43(昭和10-18)年頃 絹本・彩色 山種美術館

小林古径《河風》1915(大正4)年 絹本・彩色 山種美術館

古径の《河風》は浮世絵の美人画のようですが、清冽で上品さが滲みでている婦人像で、背景の水の流れの表し方が面白いです。

奥田元宋《奥入瀬(秋)》1983(昭和58)年 紙本・彩色 山種美術館

奥入瀬は「元宋の赤」で紅葉真っ只中。水の流れが鮮やかな好対照をなし、清冽な動きに思わず手を差し出したくなります。

「水面の表現」としての作品では、小野竹喬《沖の灯》がなんともいえず美しい色合いを出していて吸い込まれそうになります。

小野竹喬《沖の灯》1977(昭和52)年 紙本・彩色 山種美術館

そして「海―波の躍動感」のパートでは是非奥村土牛の《鳴門》と川端龍子の《鳴門》(冒頭写真)を見比べてみてください。色合いも構成もまったく違いますが、それぞれが躍動感に満ち満ちています。龍子は院展を脱退して、青龍社を立ち上げるときにもっとも動的な荒々しい海、鳴門を描いて新たな門出にしたそうです。渾身の力作は大画面で、斬新な構図、動的な画面構成、きっぱりした青の色がこちらに挑んでくるようです。かたや土牛は船上から渦潮を見るのに、妻に帯をつかんでもらいながら何十枚も写生して、それを元に下絵はなく本作品を完成させました。群青、白緑、胡粉を丁寧に塗り重ね、海の深さと動きを巧みに捉えています。一見優しい色にみえますが呑み込まれそうな迫力があります。

奥村土牛《鳴門》1959(昭和 34)年 紙本・彩色 山種美術館

さてもう一作。小堀鞆音の《那須宗隆射扇図》はしぶきをたててうねる波の描写が、平家物語の那須与一がまさに扇の的を矢で射る場面に、さながらアニメーションのような動きを加えています。

小堀鞆音《那須宗隆射扇図》1890(明治23)年 絹本・彩色 山種美術館

第2章    滝のダイナミズム

滝は古くから信仰の対象として人々から崇められてきました。ここに挙げた奥村土牛の《那智》と千住博の《ウォーターフォール》は技法のまったく異なる絵ですが、滝の荘厳さと迫力は同じように心を打ち、水の持つ神聖さも感じます。

奥村土牛《那智》1958(昭和33)年 紙本・彩色 山種美術館

千住博《ウォーターフォール》1995(平成7)年 紙本・彩色 山種美術館

第3章    雨の情景

あまりにも有名な歌川広重(初代)の雨の絵は、ゴッホを夢中にしたことでも有名です。《東海道五拾三次之内 庄野・白雨》[前期展示:7/14-8/5]や《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》[後期展示:8/7-9/6 ]の雨は、描かれている線で雨の激しさが感じられます。また雨に煙る山路を表した川合玉堂《渓雨紅樹》は、情趣豊かに雨の風景を描き出しています。

歌川広重(初代)《東海道五拾三次之内 庄野・白雨》1833-36(天保4-7)年頃 大判錦絵 山種美術館 [前期展示:7/14-8/5]

川合玉堂《渓雨紅樹》1946(昭和21)年 絹本・彩色 山種美術館

これらの作品を通して、水の表現の多様さ、幅広さとともに、画家たちが水に向けてきたまなざしや思いを感じてほしいとの美術館からの熱いメッセージを感じる展覧会です。

少し異なった趣で面白い作品もあります。お見逃しなく。

速水御舟《埃及土人ノ灌漑》1931(昭和6)年 絹本裏箔・彩色 山種美術館

余談ですがカフェでは水をあらわす特製和菓子が涼しげで美味しそうです。

展覧会ホームページ

開始日2018/07/14
終了日2018/09/06
エリア東京都
時間開館時間 午前10時から午後5時(入館は午後4時30分まで)
休日月曜日
その他備考入館料 一般1000円、大高生800円、中学生以下無料
開催場所山種美術館
アクセス〒150-0012東京都渋谷区広尾3-12-36
☎03-5777-8600 ハローダイヤル
JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅 2番出口より徒歩約10分
http://www.yamatane-museum.jp/access/