ゴードン・マッタ=クラーク展 Gordon Matta-Clark: Mutation in Space

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レストラン「フード」の前で、ゴードン・マッタ=クラーク、
キャロル・グッデン、ティナ・ジルアール 1971 年
個人蔵 Photo: Richard Landry © The Estate of Gordon Matta-Clark;
Courtesy Richard Landry, The Estate of Gordon Matta-Clark and David Zwirner,
New York/London/Hong Kong.

東京でゴードン・マッタ=クラーク(1943〜78)の回顧展と聞いた時、国立の美術館もチャレンジングだなあ、と正直驚きました。だって美術好きな人の中でもゴードン・マッタ=クラークの名を知る人はどれだけいるでしょう。現代美術ファンで知らない人がいても不思議ではないです。美術史上の位置や社会との関わりは横に置き、展覧会の善し悪しを入場者数で計ることの多い昨今では取扱いにくい作家ではないでしょうか。

名前が知られていない理由は、実際の活動期間は10年に過ぎないこと。マッタ=クラークは、1970年代のニューヨークを中心に活躍したものの、35歳の若さでこの世を去りました。また、作品の中心は行為であってそれが記録された映像、写真、ドローイングなどが残されているものの、美術館やギャラリーでの展示やコレクターに購入されることを念頭にした作品(モノ)をあまり制作していなかったことによるでしょう。

ゴードン・マッタ=クラーク Photo: Cosmos Andrew Sarchiapone

そういうわたしもこれまで映像や写真を2、3見たことがあるだけなのですが、作品は強烈にインプットされています。今回はアジア初の大規模回顧展だそうで、この機会にしっかり見ておきたいと思いました。

マッタ=クラークの代表作といえるのは「ビルディング・カット」のシリーズ。取り壊し前の建物を言葉のとおり切断し、見慣れた日常がまったく新たな空間・時間へと変わります。《スプリッティング》の家の写真は、一軒の住宅が見事に真っ二つ、切れ目のスリットから裂けた空間が現れます。

《スプリッティング》1974年 ゴードン・マッタ=クラーク財団
& デイヴィッド・ツヴィルナー(ニューヨーク)蔵

以前に見た中でバロック調の重厚な壁にひたすらにドリルをあてている映像がありましたが、今回それはポンピドゥー・センター建設のため、一帯の再開発により取り壊す予定の17世紀建築に円錐形の穴を穿つビルディング・カット《円錐の交差》だとわかりました。ついに分厚い壁にぽっかり穴が開き、外と内を隔てていたものがそれらを結んで空気も光も通った時の、寂寞とした感じが忘れられません。

会場のかなり広いスペースを占めるのは《スプリッティング:四つの角》で、再開発のため住人が立ち退いた住宅を電動ノコギリで切断し、屋根の一部を含む4つの角が、写真やドローイングとともにインスタレーションとして展示されています。サンフランシスコ近代美術館蔵で、これまでほとんどアメリカ国内から出ることの無かった貴重な作品とのことです。床に置かれたそれぞれの家の角は、本来そこにあった家の下部や構造全体、そしてそこで営まれていた生活を想像させます。

《スプリッティング:四つの角》1974年 サンフランシスコ近代美術館蔵
San Francisco Museum of Modern Art, Purchase through a gift of Phyllis C. Wattis,
The Art Supporting Foundation, the Shirley Ross Davis Fund,
and the Accessions Committee Fund: gift of Mimi and Peter Haas,
Niko and Steve Mayer, Christine and Michael Murra;
Photo: Ben Blackwell; Courtesy the San Francisco Museum of Modern Art.

都市空間における様々な議論や批判を内包する多様な作品を反映して、展示室全体が切れ目なく作品で埋まり、10年間の活動のかなりの部分が紹介されているのではないかと思います。幅10mにおよびフェンスや巨大な階段でストリートを演出したり、倉庫を思わせる壁を設置したりなど、会場デザインも意欲的です。でも美術館の展示室という強い空間はいかんともしがたく、無理を承知で言えば、もしこの展覧会が通常の回顧展のように作家とその歩みの紹介することにとどまらず、現在形として体感することにあるのだとすれば、この展示は屋外で、本来の人間の生活や活動のあるリアルな空間で行えたら、その意図を果たせるのではないかと思います。

《グラフィティ:ソウル・パワー》1973年 ゴードン・マッタ=クラーク財団
& デイヴィッド・ツヴィルナー(ニューヨーク)蔵

マッタ=クラークが活動した70年代は、世界はまだ冷戦の中、アメリカが西側の大国として突出していた時代ですが、アートに関する認識も今日とは違ったものでした。彼がアーティストであることを知っていた人は限られていたようです。展示を見れば、現代美術家の作品との関連を感じる作品が多くあることに気づくでしょう。マッタ=クラーク作品は現在の社会にあっても完全に置換可能です。40年ほども前に、これほど軽やかに、クールに、そして現代にも生きる作品が作られ、もし今生きていたら現在75歳、どのような作品を生み出すのだろうかと思わざるをえません。

ゴードン・マッタ=クラーク(中央左)とジェイン・クロウフォードの
結婚を祝う友人たちとともに 1978年

 

特に記載のない場合、画像は全て 
© The Estate of Gordon Matta-Clark; Courtesy The Estate of Gordon Matta-Clark
and David Zwirner, New York/London/Hong Kong.

展覧会ホームページ

Exhibition Homepage

開始日2018/06/19
終了日2018/09/17
エリア東京都
時間10:00-17:00(金・土曜は10:00-21:00)入館は閉館30分前まで
休日休館日: 月曜(7/16、9/17は開館)、7/17(火)
その他備考観覧料: 一般1,200円、大学生800円
*高校生以下および18歳未満、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。それぞれ入館の際、学生証等の年齢のわかるもの、障害者手帳等をご提示ください。
*リピーター割引: 本展使用済み入場券をお持ちいただくと、2 回目以降は特別料金 (一般 500 円、大学生 250 円)でご覧いただけます。
開催場所東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー
アクセス〒102-8322 東京都千代田区北の丸公園3-1
TEL: 03-5777-8600(ハローダイヤル)
■東京メトロ東西線「竹橋駅」 1b出口より徒歩3分
■東京メトロ東西線・半蔵門線・都営新宿線「九段下駅」4番出口、半蔵門線・都営新宿線・三田線「神保町駅」1A出口より各徒歩15分
http://www.momat.go.jp/am/visit/