生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。

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小犬と雨の日の子どもたち 1967 年 ちひろ美術館蔵

いわさきちひろ(1918-1974)の名前は、子どもを描いた明るい絵とともに誰でも知っています。にじんだ柔らかい水彩で絵かれた絵は、絵本や挿絵、カレンダーなどでおなじみです。

こういう暖かい子どもの絵を描く人はしあわせな人だろう、と思っていました。今回の展覧会を見て、その作品は簡単に手に入れたものでなく、苦労の中で、表現者としてのたゆまぬ努力を重ねたキャリアによってたどり着いたことを知りました。

第二次世界大戦が始まるまでは恵まれた家庭環境で育った少女時代でした。その中で「絵の上手な知弘」は、海外の映画に登場する少女の着ていたドレスを自作して着ていたことが展示されています。書も習って相当な腕前だったようです。好きなことに一途なのと、手を動かして創ることが元来得意だったのでしょう。

家族と(左端・ちひろ) 1928 年 ちひろ美術館蔵

幸せな少女時代からの反動か、長野県に疎開中に日本共産党に入党、敗戦後は機関誌の記者をしながら、ポスターや挿絵を描きます。丸木位里・俊夫妻とも交流し、本格的な絵画制作が始まります。メディアは挿絵、紙芝居、幻灯、ポスターと多岐にわたりますが、その対象はとても大衆的です。油彩画には後の作品のモチーフになる女の子が登場しますが、色彩は暗く、戦争による影響を強く感じます。

ヒゲタ醤油広告 1950 年代前半 ちひろ美術館蔵

その後「私は、豹変しながら いろいろと あくせくします」の言葉のように試行錯誤の時代は続きます。後年の水彩画を思わせる柔らかなマチエールとかろやかな暖かさは、絶え間ないデッサンと素材や技法の繰り返しによるものです。

いわさきちひろとすぐにわかるのは、色がとてもきれいで、にじんだ水彩の、ぼやけた輪郭のなかでも子どものしぐさを的確に表現している作品ですが、対象を簡素で薄塗な筆でくっきりととらえています。子どもの表情は曖昧だけれど、目ははっきりと何かを見ていて、からだはしっかりと何かを語っていて、描かれた子どもの気持ちにはいりこむことができます。そこに至るまでの、表には出ない努力に息がつまり、展覧会タイトルの「絵描き」にうなずけます。

引越しのトラックを見つめる少女『となりにきたこ』(至光社)より
1970 年 ちひろ美術館蔵

最後の部屋に大きく引き延ばされた2点の作品があります。この展覧会はアニメーション映画監督の高畑勲さんの監修で企画されたのが、突然のご逝去でかなわなくなり、ただこの2点は高畑氏の指示どおりに展示されているということです。生きておられたらいわさきちひろの何を伝えたかったのだろうかと想いはめぐります。

ハマヒルガオと少女 1950 年代中頃 ちひろ美術館蔵

展覧会ホームページ

開始日2018/07/14
終了日2018/09/09
エリア東京都
時間10:00 - 18:00
※金曜日は20:00まで開館
※入館は閉館の30分前まで
休日月曜日(7月16日、8月13日、9月3日は開館)、7月17日(火)
その他備考【入館料】 一般(当日)1,000円 高校・大学生(当日)800円
※中学生以下無料
※障がい者手帳等持参の方は当日入館料から100円引き(介添者1名は無料)
開催場所東京ステーションギャラリー
アクセスJR東京駅 丸の内北口 改札前
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/access.html