世界報道写真展2018

㉀Ronaldo Schemidt, Agence France-Presse_s

ロナルド・シュミット(ベネズエラ、AFP通信)
2017年5月3日(カラカス・ベネズエラ)

とてもショッキングな写真がパンフレットの中央にあります。これはベネズエラのカラカスで、ニコラス・マドゥロ大統領への抗議行動中に機動隊との激しい衝突が起こり、火だるまになるデモ参加者の写真です。ロナルド・シュミット氏撮影でスポットニュースの部から世界報道写真大賞になりました。被写体の方は幸いにも一命をとりとめているのと、ガスマスクをつけていたので顔への火傷も少ないのではないかとラウレンス・コルトウェーグ氏(展示部長/世界報道写真財団/アムステルダム)が話していました。

この写真展は今年で61回目を迎える「世界報道写真コンテスト」(主催:世界報道写真財団)の受賞作品を展示するもので、4月にオランダ・アムステルダムで開幕し、約45の国と地域を巡回する世界巡回展の一環です。世界各地の第一線で活躍するドキュメンタリー写真家、フォトジャーナリスト4,548人の応募(応募総数は73,044点)から選ばれた42人の入賞作品、約160点を一同に展示しています。

「現代社会の問題」、「一般ニュース」、「長期取材」、「自然」、「人々」、「スポーツ」、「スポットニュース」、「環境」と8部門あります。これらの部門に22カ国42人の受賞が決まりました。「自然」の部ではほっとして見ることができる作品もありますが、何しろ報道写真ですから、現代の様相とそこからの問題提起として、シビアでシリアスな作品が多くをしめています。

①    人々の部

アダム・ファーガソン(オーストラリア、ニューヨーク・タイムズに提供)
2017年9月21日(ナイジェリア)

ナイジェリアで「ボコ・ハラム」の戦闘員に誘拐された少女の肖像。爆発物を身体に縛り付けられ、自爆するよう命じられたが、逃げ出し、助けを得ることができた。

②    自然の部

トマス・P・ペシャク(ドイツ)、2017年4月18日(南ア領南極地域マリオン島)

インド洋に浮かぶ南ア領南極地域のマリオン島で、岩に覆われた海岸線を通り抜ける行動でその名にこたえるイワトビペンギン。

③    環境の部

ニール・アルドリッジ(南アフリカ)、2017年9月21日(ボツワナ)

麻酔をかけられ目隠しをされた若い白サイ。密猟者たちからの保護のために南アフリカからボツワナのオカバンゴデルダに移され、解放されるのを待っている。

④    一般ニュースの部

イヴォール・プリケット(アイルランド、ニューヨーク・タイムズに提供)
2017年7月12日(モスル・イラク)

イラク軍特殊部隊の兵士によって手当を受ける身元不明の男の子。イスラム国(ISIS)からのモスル奪還をめぐる戦闘では数千におよぶ市民が殺され、街の大部分が廃墟と化した。

⑤    スポーツの部

アラン・シュローダー(ベルギー、レポーターズ)、2017年9月24日(インドネシア)

インドネシア、スンバワ島の伝統、マエン・ジャラン騎馬では、子供の騎手たち(5~10歳)が裸足のまま防具もほとんど付けずに小さな裸馬に乗る。

⑥ 現代社会の問題の部

ジェスコ・デンゼル(ドイツ)、2017年2月24日(ラゴス・ナイジェリア)

 

「人々の部」の中に、マグナス・ウェンマン(スウェーデン)によるベッドに寝たきりの2人の姉妹の写真があります。この姉妹はレジグネーション(生存放棄)症候群にかかっているのだそうです。この病気はスウェーデンに渡った難民だけがかかると信じられていて、原因は明らかではないが、トラウマ(心的外傷)やストレス、うつ症状が関係しているのではないかと言われています。正しく現代の問題です。

「環境の部」で組写真2位をとったルカ・ロカテッリ(イタリア、ナショナルジオグラフィックに提供)によるオランダ・ワーヘニングの藻類生産研究センターやウェストラント地方の農業用温室などはすこしホッとする題材です。オランダは国土が狭く人口密度が高いので大規模農業に必要な基本的条件がないにも関わらず、革新的な農業技術を生かして、金額ベースでは270倍の国土規模を誇る米国に次ぐ世界第二位の食品輸出国になっています。この成果を支える研究の多くはワーヘニング大学研究センターで行われており、世界最先端の農業技術研究機関として広く認められているとのことです。翻って日本はどうなのでしょう。同じような面積の小さな国で大学や研究機関も引けを取らないところもあるのに、オランダと真逆で輸入に頼っている現状です。

世界の破片が日常の疲れだと言った人がいます。一つ一つを考えると確かに疲れて身動きがとれなくなりますが、反乱、テロ、暴動、抑圧などに縁遠い「平和」な日本で生きてある意味幸せですが、であるからこそ世界の実情を頭の隅に入れておくことが必要で、ジャーナリスティックな鋭い視線で現実を映した写真は、そのための力強いメディアであると思います。

公式サイト

開始日2018/06/09
終了日2018/08/05
エリア東京都
時間開館時間 10:00~18:00(木・金は20:00まで、但し7月19・20・26・27日、8月2・3日は21:00まで)
入館は閉館の30分前まで
休日休館日 毎週月曜日(但し7月16日「月・祝」開館、翌17日「火」休館)
その他備考観覧料 一般800円、学生600円、中高生・65歳以上400円
開催場所東京都写真美術館
アクセス〒153-0062東京都目黒区三田1-13-3恵比寿ガーデンプレイス内
☎03-3280-0099
JR恵比寿駅東口より徒歩約7分
東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩約10分
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