裸体像Tシャツ計画|20年の歩みとこれからのこと|北川純

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20年目の振り返り
当時、私は自作プリントTシャツを販売していたがなかなか売れず、お客さんの細かい注文にも嫌気がさしていた。「だれか黙ってわたしのTシャツを着てくれる人がいないものか」と思案しているときに突如ひらめいた。「そうだ、公園に立っている裸体像にTシャツを着てもらおう」と。最初はいたずら半分だった。世の中に対する不満があったのかもしれない。一回やれば満足すると思っていた。

しかし現実はそうではなかった。
初めてTシャツを着た裸体像は思いのほか美しく奇抜でそしていつもよりエロかった。
周りの反応も面白かった。
「寒い冬は、洋服着せてあげたいね」というおばあさんや「ここだけ夏が来た!」と感嘆するおじさん。大笑いで拍手喝采する人もいれば、不謹慎だと怒り出す人もいる。公共空間における美術の意義を論じだす文化人もいれば、ジェンダー思想から裸体像に異議を申し立てる女性活動家まで現れた。

私の行為は多くの人の心を和ませ、思考させ、苛立てさせるのだ。
この魅力に取りつかれた私は今日まで裸体像を見つけては、せっせとTシャツを着せてきたのである。

今展示会では裸体像Tシャツ計画とはいったい何なのか、そしてこれからどこへ行くのか語り合ってみたい。といっても難しくするつもりはない。面白く過去・現在・未来を見通せるものにしたい。
いずれにせよ私は今後も同じようにこの活動を続けていくだろう。
最初から最期までいたずら半分で、そして半分大真面目で …。

北川純 http://www.kitagawajun.com

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建造物だけを遺しヒトがいなくなるくらいには永い時の後、幾つもの偶然が重なって異星からの来訪者が地上に降り立った時、彼らが街中の彫刻物を娯しむという概念を持ち合わせていれば重畳だけれど、そんな弁えなど知らなかったら我々が遺したこの風習をなんと思うだろうか。

様々な遺物を調べた結果ヒトの存在を知り、目の前の建造物はそんなヒトの設えたものだということも知り、さてこのヒトを模した立体物は一体何を意図するのか。調査したデータに在るヒトは自身の身を守る為の何かしらを纏っていて、だから同様の衣装を身につけた彫刻物はそれら自身の規範とすべく建てられたに違いないが、一方で生まれたままの無防備な姿を晒す裸の彫刻物は何を意味するものか。まさか衣を纏う民族と裸で暮らす二つの民族が混在していたと言うのであればなぜかデータには遺されていない裸の民は衣の民に隷属していたに違いなく、そんな民を代表する裸の彫刻にせっせと布切れを被せて回るひとりのヒトの記録は慰霊の為か叛骨の現れかそれとも異星からの来訪者には未知の概念の表明なのか。不完全なデータから読取れるのは出来事の羅列ばかりで意味を成さず言語らしき記号も解読迄にはまだ途方も無い時を要するから来訪者たちは想像力を逞しくするより他はない。

ところで、裸の彫刻物に布切れを被せて回るヒト=北川の行為は、あなたの眼にはどの様に映るのだろうか。

企画 太湯 雅晴

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作家ステートメント

私も芸歴が長いのでたくさんの作品を作ってきた。

大抵 “現代アート”というジャンルにカテゴライズされてきたのであるが、どうにも居心地が悪かった。

なぜなら私の作品はもっと軽薄で、不真面目だからだ。

そんな折、“冗談音楽”という音楽に出会った。

演奏者はスパイク・ジョーンズ(映画監督ではない)という50年以上前に活躍した米国のミュージシャンで、日本ではフランキー堺やクレイジーキャッツが真似をしていた、あのズッコケパロディソングのオンパレードのアレだ。(若い人は知らないだろうが)

これを聴いた時、私は直感した。
「これだ! 冗談音楽ならぬ、冗談アート!これこそ私のアートだ」と。

そんな訳で、今日から私は冗談アートの元祖となることに決めた。

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プロフィール

1965年、名古屋市生まれ、現在横浜市在住。多摩美術大学デザイン科卒業。幼少のころプリントゴッコ(簡易印刷機)によるハガキ制作にはまる。その機器に飽き足らず独学でシルクスクリーン技術を習得し、オリジナルTシャツの制作販売を始める。絵柄が悪かったせいか全く売れず多くの在庫を抱える。余ったTシャツを裸体像に着せる裸体像Tシャツ計画を開始する。

Tシャツをはじめ、風船、布、ビニールを素材とした大型作品を制作発表。日常生活とアートとの関係に興味を持ち、美術とは無縁の人々をびっくりさせることに生きがいを感じる。

最近は人をびっくりさせることにも飽きてきたので今はもっぱら自分をびっくりさせることに重点を置き始めている。

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関連イベント
北川純トークショウ「裸体像Tシャツ秘話」
6月16日(土)17:30-19:00 入場無料 於ARTnSHELTER
真夜中の警察尋問から始まり、20年後のTV出演裏話まで一挙大公開!
北川 純(アーティスト)

裸体像TシャツプロジェクトLIVEパフォーマンス
6月24日(日)実施予定 於千鳥ヶ淵公園
千鳥ヶ淵公園に所在する裸体像3体にTシャツを着せるパフォーマンスをライブ配信します(詳細情報は展覧会ウェブサイト等で告知)。

トークイベント
7月1日(日)16:00-17:30 入場無料 於ARTnSHELTER
村田真(美術ジャーナリスト)、北川 純(アーティスト)、太湯 雅晴(企画)
美術ジャーナリストの村田真さんを迎えし、「裸体像Tシャツプロジェクト」の楽しみ方を、写真や映像などを交えお話します。

開始日2018/06/12
終了日2018/07/02
エリア東京都
時間15:00~23:00
休日無休
その他備考入場無料
開催場所ARTnSHELTER
アクセス住所:東京都品川区東大井1-19-10
電話:03-3765-2288
Eメール:info@artnshelter.com
ホームページ:http://artnshelter.com
代表:鹿又亘平
ARTnSHELTERは東京都品川区にあるカフェ、バー、宿泊施設、展示施設、製作スペースが合わさった総合施設です。私たちは芸術と国際性に重きを置き、 様々な人が集い、刺激しあい、様々な経験を共有することを目標として様々な文化経験を提供しています。 人と人の繋がりは実際にその文化に触れ、考え方を理解し、話すことによってより身近なものとなりえます。芸術は抽象的、また視覚的な表現だけにあらず文化の根源であり、作り手、またはその文脈を知る人を通して理解することにより、より一層深みのある経験となります。ここARTnSHELTERには日々そのような文化の理解に興味がある人が集い、会話を通し今まで知り得ることがなかった知識を得る、創造性が様々な壁を越えて人と人を結ぶ場所です。