ターナー 風景の詩 TURNER and the Poetics of Landscape

NG 1614

《ソマーヒル、トンブリッジ》 1811年展示 油彩・カンヴァス 92×122cm
エディンバラ、スコットランド国立美術館群 ©Trustees of the National Galleries of Scotland

ターナー、Turner!  誰もが一度はその作品を見たことがあるでしょう。イギリスを代表する風景画の巨匠ですね。現代で最も権威ある美術賞のひとつ、ターナー賞があり、現代美術ファンにはこの賞の方が知られているかもしれません。「イギリスの画家」と言ったら、真っ先に思い出される名前のひとつです。

穏やかな田園風景、嵐の海、聳え立つ山岳など、自然の様々な表情を描いたターナーの名は、「イギリスを代表する」だけでなく「風景画」という括りでもまず思い出されます。

《スノードン山、残照》 1798-1799年 水彩、スクレイピングアウト・紙
52.7×75.6cm エディンバラ、スコットランド国立美術館群
©Trustees of the National Galleries of Scotland

ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775年~ 1851年)は、ロンドンのコヴェント・ガーデンに生まれ、10代で地誌的水彩画家として出発し、若い頃からその才能が認められ、20代の若さで英国美術の最高権威、ロイヤル・アカデミーの正会員となりました。英国国内はもとより、フランス、スイス、イタリア、ドイツなどを旅し、多くの風景画を描きました。光と空気に包まれた革新的な風景表現は、フランスの印象派をはじめ、今日においても多くの芸術家にインスピレーションを与えています。

赤シャツ、マドンナ、山嵐とキャラが活躍する夏目漱石の「坊ちゃん」にターナー島が登場したことを覚えていますか。ロンドンに留学した漱石はターナーがお気に入りだったようで、松山の向かいにある何の変哲もない島をターナー島と名付けました。

《キリスト教の黎明(エジプトへの逃避)》 1841年展示 油彩・カンヴァス
直径78.5cm ベルファスト、北アイルランド国立美術館群
Courtesy of Board of Trustees of National Museums Northern Island

今でこそ風景画は珍しくないのですが、美術史上の本流は神話や宗教に基づく歴史画や物語画であり、風景画や日常生活を描いた作品は、後に登場し一段と低く見られていました。ターナーの生きた19世紀のはじめ、故郷を超えて旅行出来る人は限られ、地方や外国の風景画は多くのイギリス人にとって新鮮だったに違いありません。ターナーの優れた技量によって伝えられた自然界の多様性、ドラマチックな景観は、なおさらのことだったでしょう。

《モンテ・マリオから見たローマ》 1820年 水彩、スクレイピングアウト・紙
29.8×41.5cm エディンバラ、スコットランド国立美術館群
©Trustees of the National Galleries of Scotland

ターナーの生きたヴィクトリア朝(1837-1901)時代は、産業革命による経済の発展が成熟に達したイギリス帝国の絶頂期です。急速に工業化が進み、成長した都市からは、チャールズ・ディケンス(1812-1870)の『オリバー・ツイスト』や『クリスマス・キャロル』が生まれ、農村生活に対するノスタルジアは、ワーズワース(1777-1844)やテニスン(1809-1892)の詩によって情感豊かに表されました。

《ストーンヘンジ、ウィルトシャー》 1827-1828年 水彩・紙
27.9×40.4cm ソールズベリー博物館 On loan from The Salisbury Museum, England

展示をみるとターナー作品は、実際の風景よりもドラマチックに、よりロマンチックに描かれていることに気づきます。風景そのものよりも大気や空気を描き、そこにあるものはあいまいになっている作品もあります。時代が求めていたものをターナーは絵画に落とし込んだのでしょう。

《コールトン・ヒルから見たエディンバラ》 1819年頃
水彩、鉛筆、グワッシュ、スクレイピングアウト・網目紙
16.8×24.9cm エディンバラ、スコットランド国立美術館群
©Trustees of the National Galleries of Scotland

水彩画が思っていたより多い印象です。旅先でも描ける水彩の性質に習熟し、それを巧みに活用することで、森や広大な丘陵地帯を的確に描写し、また空気を通過する光を描くことができたのでしょう。旅行中に素描や水彩画を制作し、それらを下絵としてロンドンで油彩画を展示したようです。油彩画は産業革命によって興った富裕層に蒐集され、また劇的な成長にあった出版業によって新聞や雑誌を通じて人々の目を楽しませたことでしょう。

《ネッカー川対岸から見たハイデルベルク》 1846年
エッチング、ライン・エングレーヴィング
36.6×54.1cm 郡山市立美術館

同時代の批評家、ジョン・ラスキン(1819-1900)は、その記念碑的代表作「近代絵画論」でターナーについて、現在の価値を作り出している数少ない画家、と雄弁に語っています。イギリスの絵画は、ターナー以前とターナー以後を区別してもよいのかもしれません。

《セント・オールバンズ・ヘッド沖》 1822年頃 水彩・紙
39.8×68cm ハロゲイト、メーサー・アート・ギャラリー
©Mercer Art Gallery, Harrogate Borough Council

展示は、全てターナー作品で、水彩、油彩、版画作品、約120 点を、イギリス美術研究の第一人者、クリストファー・ベーカー氏により、「地誌的風景画」、「海景‐海洋国家に生きて」、「イタリア‐古代への憧れ」、「山岳‐あらたな景観美をさがして」という4つの章立てで紹介します。ターナー作品には美術展の一部で出会うことがほとんどだったと思います。今回はまるごとターナー、ターナー100%の世界を楽しんでください。

《ローレライ、ドイツ》 1817年
水彩、グワッシュ、グラファイト、スクラッチングアウト・紙
19.7×30.5cm マンチェスター大学、ウィットワース
The Whitworth, The University of Mancester

公式サイト

美術館ホームページ

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開始日2018/04/24
終了日2018/07/01
エリア東京都
時間午前10時から午後6時まで。6月26日(火)〜6月30日(土)は午後7時まで。 いづれも入館は閉館30分前まで。
休日休館日:月曜日
その他備考観覧料:  一 般 1,300円、大・高校生:900円(学生証をご提示ください)、 65歳以上 1,100円(年齢のわかる物をご提示ください)、 中学生以下:無料(生徒手帳をご提示ください)
※身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳を提示のご本人とその付添人1名は無料。被爆者健康手帳を提示の方はご本人のみ無料。
開催場所東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
アクセス〒160-8338 東京都新宿区西新宿1-26-1
損保ジャパン日本興亜本社ビル42階
TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)
JR新宿駅西口、丸ノ内線新宿駅・西新宿駅、大江戸線新宿西口駅より徒歩5分
http://www.sjnk-museum.org/access