六本木ヒルズ・森美術館15周年記念展 建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの Roppongi Hills and Mori Art Museum 15th Anniversary Exhibition  Japan in Architecture: Genealogies of Its Transformation

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展覧会ポスター

森美術館で開催中の「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」は日本の建築、建築技術、設計、デザイン、そして歴史を新たに考えさせられる展覧会です。

冒頭説明に「丹下健三、谷口吉生、安藤忠雄、妹島和世など多くの日本人建築家たちが国際的に高い評価を得ているのは、古代からの豊かな伝統を礎とした日本の現代建築が、ほかに類を見ない独創的な発想を内包しているからだとはいえないでしょうか」とあり、作品を見て回るとその通りだなと思いました。

展覧会は縄文の住居から最新の現代建築のプロジェクトまで100のプロジェクト、展示総数400点を超える圧巻のスケールで日本建築の本質に迫る試みです。千利休作と伝えられ、現存する日本最古の茶室建築である国宝《待庵》の原寸再現も見事ですが、丹下健三の《自邸》を1/3 スケールで再現した巨大模型も素晴らしく、木の香りがふくよかに漂ってきて、とても気持ち良いです。

伝千利休
《待庵》
1581年頃(安土桃山時代)/2018年(原寸再現) 制作:ものつくり大学
展示風景:「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」森美術館、2018年
撮影:来田 猛 画像提供:森美術館(東京)

日本建築史における学術的にも貴重な資料に加え、ライゾマティクス・アーキテクチャーによる日本建築を最新の3D技術で再現した新作映像インスタレーションなど、多彩な展示によって、日本建築の過去、現在、未来像を照らし出します。

展覧会は9つの特質で章を編成し、機能主義の近代建築では見過ごされながらも、古代から現代までその底流に脈々と潜む遺伝子を考察する試みですが、その切り口にはなかなかの説得力があります。以下展覧会説明からの引用も含みます。

1. 可能性としての木造

北川原温
≪ミラノ国際博覧会 2015 日本館 木組インフィニティ≫
2015年 ミラノ(イタリア) 撮影:大野繁

国土の70%が森林である日本が育んだ木の文化は、持続可能で木を活かす技術が発達しました。展示された木組みの作品は見事で、連綿と続く様子は見ていて飽きず、持続可能という意味がよく解ります。大工棟梁に受け継がれた秘伝書や設計図も展示されています。

2. 超越する美学

谷口吉生
≪鈴木大拙館≫
2011年 金沢 撮影:北嶋俊治

もののあわれ、無常、陰翳礼賛などの日本の美意識には超越的な姿勢がうかがわれますが、これは木造にも打放しコンクリートにも通底する遺伝子のひとつです。

3. 安らかなる屋根

日本建築は屋根である、と言われます。屋根は雨や雪を遮り、深い軒により日光を味方にします。人間を守る機能とその曲線美、水平美は風景の中で象徴性をたたえ、安心感を与えます。確かに白川郷や出雲大社、あるいは武道館など、古くても新しくてもそれぞれの屋根の美しさに安心感も得るのは、伝統というDNAがその時代時代に継がれているからでしょう。

4. 建築としての工芸

吉田五十八
≪ロイヤルホテル メインラウンジ≫
1973年 大阪 画像提供:株式会社竹中工務店

明治期に建築という概念が西洋から持ち込まれる以前の日本には、自然を抽象化する意匠のセンスと、高度の匠の技を駆使し、「部分」の集積が「全体」すなわち建築物をなす、成熟したものつくりが根底にあります。この工芸性は近現代の建築にもしっかり継がれています。

5. 連なる空間

丹下健三
≪香川県庁舎≫
1958年 香川 撮影:市川靖史 画像提供:香川県

20世紀に入り、日本建築が世界に伝えたのは、建築は必ずしも内外を壁で仕切らなくても成り立つこと、部屋の機能は固定されなくてもよいこと、豪華な装飾ではなく素材そのものの表現によって品位が保てることでした。平安時代の寝殿造りもその仕切りは几帳や御簾などでした。

6. 開かれた折衷

小林清親
≪海運橋 第一銀行雪中 平成の新版≫
1876年(オリジナル) 錦絵 所蔵:清水建設

ここでは伊東忠太を紹介しています。日本は6世紀の仏教伝来と共に入ってきた建築技術や意匠に始まり、さまざまな文化の融合や変容を経て「日本らしさ」を形作ってきましたが、世界はそもそも折衷であるという日本の視点は、多文化主義の現代、未来につながっていくでしょう。

7. 集まって生きる形

猪熊純、成瀬友梨
≪LT城西≫
2013年 名古屋 撮影:西川仁朗

「公共」という意味を建築に見出すと、長屋、寺子屋など縁がつなぐ空間の伝統があります。ここでは新たなコミュニティ形成の方法として、自然の恵みと災害に囲まれた日本の「集まって生きる形」を提示しています。

8. 発見された日本

フランク・ロイド・ライト
≪帝国ホテル(正面中央部入口)≫
1923年 東京 写真提供:帝国ホテル

国外から発見された日本建築の「伝統」も、改めて考察すべき知の財産です。フランク・ロイド・ライトやアントニン・レーモンドから、現在第一線で活躍する建築家まで国外の建築家が創造的に捉えた日本像を紹介します。

9. 共生する自然

安藤忠雄
≪水の教会(星野リゾート トマム)≫
1988年 北海道 画像提供:星野リゾート トマム

日本人は自然に畏怖の念を抱き、崇高なものとして信仰の対象としてきました。そうした自然観はどのように日本の建築に反映されてきたのか、建築を自然の一部と捉え、自然を素材の一つとして建築をつくる、自然との境界をデザインする。建築に見る日本の自然観は未来へと紡がれます。

≪古代出雲大社本殿≫
年代不詳/2018年(CG) 制作:後藤克典

一つ一つのテーマが面白い展覧会ですが、出雲大社本殿の復元をみると大げさな言い方をすれば、民族の根源を感じます。また隈研吾の《梼原・木原ミュージアム》や坂茂の《静岡県富士山世界遺産センター》は逆さ富士の印象を持つ建物で、ここにも強く「日本」を感じます。是非展覧会に足を運んでみてください。日本の建築がなぜ世界から注目されているのか、それぞれに感じられると思います。

隈研吾
≪梼原・木原ミュージアム≫
2010年 高知 撮影:太田拓実

坂茂
≪静岡県富士山世界遺産センター≫
2017年 静岡 撮影:平井広行

展覧会ホームページ

Exhibition Homepage (e)

 

開始日2018/04/25
終了日2018/09/17
エリア東京都
時間開館時間 10:00-22:00 火10:00-17:00 いずれも入館は開館時間の30分前まで 
休日会期中無休
その他備考入館料: 一般1800円、学生(高校・大学生)1200円、子供(4歳―中学生)600円、シニア(65歳以上)1500円
*本展のチケットで展望台、東京シティービューにも入館可(スカイデッキを除く)
*スカイデッキへは別途料金がかかります
開催場所森美術館
アクセス東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
℡ 03‐5777‐8600(ハローダイヤル)
https://art-view.roppongihills.com/jp/info/index.html
Access (e): https://art-view.roppongihills.com/en/info/