プーシキン美術館展 ー旅するフランス風景画 Masterpieces of French Landscape Paintings from The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow

1. クロード・モネ/草上の昼食(色補正済み)_S

クロード・モネ 《草上の昼食》 1866年
© The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow

世界に名だたる美の殿堂であるプーシキン美術館。珠玉のフランス絵画コレクションで知られ、日本でも何度か「プーシキン美術館展」が開かれていますね。その名を聞くだけでワクワクしますが、今回は17世紀から20世紀の風景画65点が展示されています。風景画のみですから風景画に興味のない方にはおすすめしません。

正直なところわたしも、「風景画のみ?」といぶかしく思いました。フランス絵画らしい華やかさに欠けるのでは、とちょっと低めの期待度を持って行ったのです。しかしさすがはプーシキンです。第1章の「近代風景画の源流」から第6章の「海をわたって/想像の世界」まで名作をもって丹念に風景画のみで美術史のみならず歴史を語っています。

第1章のクロード・ロランの《エウロペの掠奪》は、画面のほとんどが風景であり、主題である神話を描く部分があまりに小さい。神話を描こうとしたのか、風景を描きたかったのか、1655年のこの作品あたりが、「背景」でしかなかったものが、独立したジャンルとなる「風景画」の誕生とみられるようです。

クロード・ロラン 《エウロペの掠奪》 1655年
© The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow

第2章は「自然への賛美」で個人的に目を引かれた作品が多くありました。前章で神話や聖人の舞台として描かれた風景は整えられた理想像であったのが、19世紀の市民社会の勃興により何気ない日常風景、生活と結びついた現実を写すようになります。

ギュスターヴ・クールベ 《山の小屋》 1874年頃
© The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow

大都市パリでは、ナポレオン3世(1808-1873)のもと、ジョルジュ=ウジェーヌ・オスマン(1809-1891)による「パリ大改造」が行われ、パリの景観は大きく変貌します(「パリ大改造」については、2017年4月から6月に開催された「〈練馬区独立70周年記念展〉19世紀パリ時間旅行−失われた街を求めてー」で以前と以後が展示され、その変化の大きさや衝撃が示されていました)。幅の広い大通りが整備され、高層の建物が出現し、同時に失われた古い街並と、整備のために周縁部へと追いやられた貧しい人々もいました。この転換期を行きた画家たちは印象派を始め、都市における様々な人々を描いています。

ピエール=オーギュスト・ルノワール
《庭にて、ムーラン・ド・ラ・ギャレットの木陰》 1876年
© The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow

ジャン=フランソワ・ラファエリ 《サン=ミシェル大通り》 1890年代
© The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow

アルベール・マルケ 《パリのサン=ミシェル橋》 1908年頃
© The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow

鉄道網の発達は、画家たちをパリから南へと運びます。フランス中部から南部の旅情をそそる風景、多彩な陰影を生み出す高低差のある地形、南フランスのまばゆい光と地中海のきらめきに魅了されるのは、現在のわたしたちも同じです。

ポール・セザンヌ 《サント=ヴィクトワール山、レ・ローヴからの眺め》
1905-06年 © The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow

アンドレ・ドラン 《港に並ぶヨット》 1905年
© The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow

さらに画家の関心は広がり、遠く海外へと旅したり、バリの万国博覧会に展示された異国の文化に触れたことで想像を膨らませます。そのうえ、時空を超えて現実と神話、複数の土地の風景が組み合わされ、絵画の中だけに存在する風景が描かれてゆきます。

ポール・ゴーガン 《マタモエ、孔雀のいる風景》 1892年
© The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow

アンリ・ルソー 《馬を襲うジャガー》 1910年
© The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow

風景画のみとは地味ではないのかな、と思っていたのが、風景画に限った展示であったことでかえってその滋味を味わえたと思います。どれも素晴らしい作品です。きっと心に残る風景画に出会えると思います。

作品リスト

公式サイト

東京都美術館展覧会ページ

Exhibition Homepage (e)

開始日2018/04/14
終了日2018/07/08
エリア東京都
時間9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)。
夜間開室金曜日は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)。
休日休室日:月曜日。ただし、4月30日(月・休)は開室。
その他備考一般 1,600円 / 大学生・専門学校生 1,300円 / 高校生 800円 / 65歳以上 1,000円
・中学生以下は無料
・身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料
・いずれも証明できるものをご持参ください
開催場所東京都美術館
アクセス〒110-0007 東京都台東区上野公園8-36
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
・JR上野駅「公園口」より徒歩7分
・東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅「7番出口」より徒歩10分
・京成線京成上野駅より徒歩10分
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