木島櫻谷 Part I 近代動物画の冒険 KONOSHIMA OKOKU

1-1s《獅子虎図屏風》右隻

《獅子虎図屏風》右隻 明治37年(1904)個人蔵

木島櫻谷(このしま おうこく)という画家の名前を聞いたことがありますか?

ほとんど知られていないのではないかと思いますが、明治から昭和にかけて活躍した京都の日本画家(1877-1938)で、当時は竹内栖鳳と京都画壇の人気を分け華々しく注目されていたと言います。

《獅子虎図屏風》左隻 明治37年(1904)個人蔵

まずは冒頭画像の《獅子虎図屏風》。右隻のすっくとしたライオンの立ち姿、颯爽として美しいですね。描かれているのが日本にはいないライオンであることを差し引いても、野生の立て髪や遠くを見据える眼差しなど写実的で、日本画としては珍しいのではないでしょうか。これが27歳の時の作品です。

四条・円山派の流れをくんだ写生を基本とし、特に初期には動物画を得意としています。何よりも重んじた写生のため、常に携帯していたという写生帳は500冊以上にのぼるそうですが、その一部とともに、通い詰めた京都市動物園から贈られた年間パスポートも展示されています。

《熊鷲図屏風》右隻 明治後期 個人蔵

そして代表作とされているのが《寒月》です。冬にはまだ少しあるという時に突然積もった雪なのでしょうか、葉の残る草木が混ざる竹林を月が冴え冴えと照らしています。ふと気づくと、そこに降り積もった雪に戸惑ったように一匹の狐が出て来ました。月光に白く輝く雪と森の深い濃青、シンとした静寂と冷えた空気に動物と植物の生命が感じられる画面は、まるで舞台を見るようです。


上:《寒月》右隻 大正元年(1912)京都市美術館蔵
下:《寒月》左隻 大正元年(1912)京都市美術館蔵

しかし、この作品はまた、夏目漱石がボロクソの評価をしていることでも知られます。「木島櫻谷氏は去年沢山の鹿を並べて二等賞を取った人である。あの鹿は色といい眼付といい、今思い出しても気持ち悪くなる鹿である。今年の『寒月』も不愉快な点に於いては決してあの鹿に劣るまいと思う。屏風に月と竹と夫から狐だかなんだかの動物が一匹いる。其月は寒いでしょうと云っている。竹は夜でしょうと云っている。所が動物はいえ昼間ですと答えている。兎に角屏風にするよりも写真屋の背景にした方が適当な絵である」と。

漱石といえば、子供の頃から掛け軸に囲まれて育ち、ロンドン留学時代にはテートギャラリーなどへ通い、ラファエル前派のロマンティックな絵画に触発され、ターナーが好きで、自分でも小説の装丁を担当した津田清楓に習って絵を描いたりしています(ヘタですが)。展覧会へもよく行き、小説『三四郎』では、1908 年の第6 回太平洋画会展に出品された吉田博と義妹ふじをの滞欧米作品を、「長い間外国を旅行して歩いた兄妹の画が沢山ある」展覧会として、三四郎と美禰子が訪れて見ています。(生誕140年 吉田博展 山と水の風景 2017年7月8日—8月27日 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館

そんな美術通であった漱石が酷評した理由は、
・ 漱石は技巧的な作品が好きではなかった
・日本画なのに西洋画風の写実的な画風が気に入らなかった
・ 主催が京都新聞社で、展覧会を宣伝するために酷評を拡幅した
・ 寺田寅彦などの親しい人物たちとの観覧で気楽さもあり、修善寺の大患後で機嫌が悪かった
・ 朝日新聞社の批評の義務として見ていた
・ 『寒月』という名が使われるのが好きではなかった、
などと考えられているようです。さて、どうなのでしょうね。

《獅子》昭和時代 櫻谷文庫蔵

こちらのライオン《獅子》は昭和に入ってからの作品です。何だか人に見えませんか。遠くを見て何か一言言いそうです。展示室まるごと徹底した写生を基礎にした動物画なのですが、大きめの作品は等身大に近く、気づくとどの動物も今にも動き出しそうで、それぞれが個性ある人のように見えます。

《角とぐ鹿》昭和7年(1932)京都市美術館蔵

日本画でありながら写実を徹底して脱二次元化し、情趣的にはまるで人を描いていたのではないかと思われる櫻谷の作品は、近年になって再評価され始めているそうです。4月8日まではPart Iとして動物画を中心に、4月14日からはPart IIとして花鳥図を集めた展示になります。

《葡萄栗鼠》大正時代 個人蔵

展覧会ホームページ

 

開始日2018/02/24
終了日2018/04/08
エリア東京都
時間10:00-17:00(入館は16:30 まで)
休日月曜日
その他備考一般 800円、大高生 600円、中学生以下 無料
開催場所泉屋博古館分館
アクセス〒106-0032
東京都港区六本木1-5-1
TEL: 03-5777-8600(ハローダイヤル)
東京メトロ南北線「六本木一丁目」駅下車、北改札正面出口より屋外エスカレーターで3分
https://www.sen-oku.or.jp/tokyo/access.html