プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光 VELÁZQUEZ AND THE CELEBRATION OF PAINTING: THE GOLDEN AGE IN THE MUSEO DEL PRADO

6s.王太子バルタサール・カルロス騎馬像

ディエゴ・ベラスケス《王太子バルタサール・カルロス騎馬像》1635 年頃
マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado

プラド美術館展が上野の国立西洋美術館で始まりました。マドリードにあるプラド美術館は、歴代スペイン王室のコレクションを中心に7,000点を超える絵画を所蔵する世界屈指の美の殿堂です。日本でのプラド美術館展は5回目になりますが、今回は17世紀スペインを代表する巨匠、ディエゴ・ベラスケス(1599-1660年)の《王太子バルタサール・カルロス騎馬像》(日本初公開)を含む作品7点をはじめ、ティツィアーノ、ルーベンス、リベーラ、ムリーリョら、17世紀絵画の名作など約70点でスペインの黄金時代を紹介する展覧会になっています。

殆どの作品は従来宮殿の中に飾られたものなので、作品自体が大きく見応え十分です。当時ベラスケスのような宮廷画家の重要な仕事は王族の肖像画を描くことでした。国王などは威厳を表すかの様に無表情で描かれ、ポーズや持ち物も厳密に規定されるなか、ベラスケスはその人物の内面を引き出そうかのごとくに描いています。じっくり鑑賞してみてください。

プレゼンターは及川光博さんで、この展覧会を紹介する展覧会特設サイトのPR動画は、現時点で7話まであります。会場の音声ガイドでは時代背景から画家にまつわるエピソードまで解り易く説明されています。ミッチーファンは是非音声ガイドで彼の声をお聞きください。

展示は7つの章に別れています。以下は図録からの案内です。

Ⅰ 芸術

図録の解説によると、この章は黄金世紀における芸術と視覚イメージの概念に親しんでもらい、現代の美術の見方との類似点だけでなく、相違点についても理解しもらうための序章とあります。今日絵画が芸術であり、画家が知識人であることを疑う者はいませんが、この段階にたどりつくまでには困難な道のりと多くの努力が払われました。

ディエゴ・ベラスケス《フアン・マルティネス・モンタニェースの肖像》1635 年
マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado

フランシスコ・デ・スルバラン《磔刑のキリストと画家》1650 年頃
マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado

アロンソ・カーノ《聖ベルナルドゥスと聖母》1657-60 年
マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado

Ⅱ 知識

17世紀のヨーロッパにおいて、ギリシャ・ローマの古典文明とキリスト教精神は、思想や学問の重要な根本として様々な形で受け継がれ、造形芸術においても人々の知の導き手として、また到達すべき模範として頻繁に表されました。この章では、17世紀の古代哲学者像を中心に、古典古代およびキリスト教の知の集積、および知の哲人たちがどのように表されたかについて見てください。

ディエゴ・ベラスケス《メニッポス》1638 年頃
マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado

ヤン・ブリューゲル(父)、ヘンドリク・ファン・バーレン、
ヘラルト・セーヘルスら《視覚と嗅覚》1620 年頃
マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado

Ⅲ 神話

神話を描くことは、道徳的概念と美術的概念が交錯する領域、つまり裸体の描写と直結していました。裸体はルネサンス以来すぐれて「芸術的な表現形式」と認識されていますが、一方で道徳的観点からは猥褻さと結びつく危険な領域でもあり、公の場で飾ることは重罪でした。ではその裸体画の所有と道徳的、あるいは宗教的抑制を両立させ得る方法とは? それは宮廷の中の制限された空間に封じ込めることでした。

ティツィアーノ・ヴェチェッリオ
《音楽にくつろぐヴィーナス》1550 年頃
マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado

ペーテル・パウル・ルーベンス、ヤーコプ・ヨルダーンス
《アンドロメダを救うペルセウス》1639-41 年
マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado

Ⅳ 宮廷

ベラスケスの肖像画には、スペイン・ハプスブルク王家の伝統とフェリペ4世による治世の宮廷儀礼、画家の野心など、様々な要素が集約していると言えます。フェリペ4世の肖像画の特徴は単純な構図、色彩の簡素さですが、描かれる人物の責任と義務への倫理観を表現していて、内面を見事に描きわけています。

ディエゴ・ベラスケス《狩猟服姿のフェリペ4世》1632-34 年
マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado

ディエゴ・ベラスケス《バリェーカスの少年》1635-45 年
マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado

アントニオ・デ・ペレーダ《ジェノヴァ救援》1634-35 年
マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado

Ⅴ 風景

ここには画像を載せていませんが、デニス・ファン・アルスロートの《ブリュッセルのオメガングもしくは鸚鵡の祝祭:職業組合の行列》は圧巻です。

クロード・ロラン《聖セラピアの埋葬のある風景》1639 年頃
マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado

Ⅵ 静物

今日、私たちが「静物画」と呼ぶものが、いつ、どこで、誰の手によって生み出されたのかは、はっきりとしていないそうです。すでにゴシック期には様々な身の回りの「モノ」が宗教画の補完的要素としてよく表されていたということです。スペイン静物画の発祥地はトレドでその後中心はマドリードに移りました。このブドウは艶やかで美味しそうですね。

フアン・デ・エスピノーサ《ブドウのある八角形の静物》1646 年
マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado

Ⅶ 宗教

ここは説明より大作家たちの作品をじっくり見たほうがよいでしょう。イタリアのカラヴァッジョに影響を受けたリベーラの強烈なリアリズム、カラヴァジズムとは別の潮流、盛期ルネッサンスの古典主義に豊かな色彩の感覚主義を受け継ぐグイド・レーニ、そしてこうしたイタリア・バロックの様々な要素を吸収し、ダイナミックで色彩豊かな盛期バロックの豊麗な様式を作り上げたルーベンス、など。楽しみましょう。

ディエゴ・ベラスケス《東方三博士の礼拝》1619 年
マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado

ジュゼペ・デ・リベーラ《聖ペテロの解放》1639 年
マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado

ペーテル・パウル・ルーベンス《聖アンナのいる聖家族》1630 年頃
マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado

バルトロメ・エステバン・ムリーリョ《小鳥のいる聖家族》1650 年頃
マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado

スペイン絵画の黄金時代に、絵画を中心とした美術理論の重要な著作が数多く出版されました。会場にはその中で代表的な物が展示されていますので興味深いです。

展覧会のキャッチは「スペインの黄金時代、お見せします。」となっていますが、正にその通りで、どれもとても豪奢で豊かな絵画です。西洋美術史上最も傑出した画家のひとりであり、マネやピカソなど後世の芸術家たちにも大きな影響を与えたベラスケス作品はまとまって貸し出される機会は極めて限られているといいます。「ベラスケス7点が一挙来日、これは事件です。」にも頷けます。

ハプスブルクとブルボンのスペイン王朝の栄華を伝えるプラド美術館。リアリズムの重厚な芸術作品に浸りましょう。

巡回展: 2018年6月13日 – 10月14日 兵庫県立美術館

展覧会特設サイト

国立西洋美術館HP

開始日2018/02/24
終了日2018/05/27
エリア東京都
時間午前9時30分~午後5時30分。 金曜日・土曜日は午後8時まで。 入館は閉館の30分前まで
休日月曜日。 ただし、3月26日(月)と4月30日(月・祝)は開館
その他備考一般1600円 大学生1200円 高校生800円 中学生以下無料。
開催場所国立西洋美術館
アクセス〒110‐0007 東京都台東区上野公園7番7号
☎: 03‐5777‐8600(ハローダイヤル)
JR上野駅下車(公園口出口)徒歩1分

京成電鉄京成上野駅下車 徒歩7分

東京メトロ銀座線、日比谷線上野駅下車 徒歩8分
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