北斎とジャポニスム HOKUSAI が西洋に与えた衝撃 HOKUSAI AND JAPONISME

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(左)葛飾北斎『北斎漫画』十一編(部分)刊年不詳 浦上蒼穹堂
(右)エドガー・ドガ《踊り子たち、ピンクと緑》1894 年
パステル、紙(ボード裏打)66×47cm 吉野石膏株式会社 (山形美術館寄託)

近年、ジャポニスムという言葉は、以前より一般にも広く知られてきたように思われます。19世紀後半、西洋の芸術家たちが浮世絵をはじめとする日本美術に魅了され、大きな影響を受けました。影響はあらゆる分野におよび、印象派をはじめとして多くの芸術家が日本美術に刺激を受けた作品を残しています。

展覧会でそれらの作品を見る機会も増え、ジャポニスムという現象を言葉だけでなく実際に感じることができるようにもなりました。例えば、世田谷美術館での「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展 – 印象派を魅了した日本の美」展(クロード・モネの《ラ・ジャポネーズ》は巨大でしたね!)、横浜美術館での「ホイッスラー」展(イギリスにジャポニスムを持ち込んだのでした)、横浜美術館での「メアリー・カサット」展(愛蔵の日本の絵も展示されていました)などなど。現在開催中の展示でも三菱一号館美術館での「パリ♥グラフィック」展(2018年1月8日まで)のロートレックやヴァロットンなど、日本の美術に影響を受けた画家の数は数えきれません。

葛飾北斎《冨嶽三十六景 駿州片倉茶園ノ不二》1830-33(天保元-4)年頃 横大判錦絵
24×37.2cm オーストリア応用美術館、ウィーン MAK–Austrian Museum of
Applied Arts/Contemporary Art, Vienna Photo: ©MAK/Georg Mayer

ポール・セザンヌ《サント=ヴィクトワール山》1886-87年 油彩、カンヴァス
59.7×72.4cm フィリップス・コレクション、ワシントン D.C.
The Phillips Collection, Washington, D. C.

「北斎とジャポニスム」展では、江戸の大天才絵師・葛飾北斎(1760-1849)に限定して、その作品が西洋に与えた影響を見てゆきます。北斎は、浮世絵、狂歌本、読本挿絵、『北斎漫画』に代表される絵手本などの版本、錦絵版画、肉筆画など、およそ当時の一般社会での平面の美術を全て手がけ、また長い画業の中で満足することなく探求を続けたことで知られています。代表作の「冨獄三十六景」は世界レベルの名画です。

ジャポニスムの最初期から、欧米の全域にわたり、印象派の画家をはじめとして絵画だけでなく、版画、彫刻、ポスター、装飾工芸など、広範囲の芸術家が刺激を受けたのが葛飾北斎であることは、北斎作品の多様さ、親しみやすさ、新奇性からも間違いないでしょう。

展示室では、冒頭の写真のように、北斎の作品とそれに影響を受けた欧米の名作が並んで展示されています。実際に並べて見ると、北斎作品のどこに、何にひかれたのか、が見えます。わたしたち日本人にとっては素通りするようなものも、ヨーロッパで長い間の伝統の中にいた芸術家たちには新鮮だったでしょう。

確認されたことではありませんが、ジャポニスムのきっかけは、1856年ごろ、パリでエッチング画家のフェリックス・ブラックモンが、摺師の仕事場で、輸入品の有田焼を包んでいた『北斎漫画』を目にしたことに始まる、と言われています。美しい肌で高価な有田焼より、その梱包材として使われていた紙に描かれていたものに目を奪われたという衝撃が伝わるようなエピソードです。

時代は新しい世紀を迎えつつある頃、産業の近代化、都市化、市民社会化、など世の中が大きく変わろうとしていた時です。新しい表現を模索する芸術家たちにとっては、北斎という異文化との出会いは、まさに格好の刺激でありヒント。自分たちの作品を発展させ、西洋絵画の近代の扉を開ける一押しとなったでしょう。北斎作品と並んだ欧米の名作から、北斎作品がどのようにインプットされ、消化されて、彼らの作品が導き出されたのか想像してみるのも楽しいです。

葛飾北斎『北斎漫画』初編(部分)1814(文化 11)年 浦上蒼穹堂

メアリー・カサット《青い肘掛け椅子に座る少女》1878年 油彩、カンヴァス
89.5×129.8cm ワシントン・ナショナル・ギャラリー National Gallery of Art,
Washington, Collection of Mr. and Mrs. Paul Mellon, 1983.1.18
Courtesy National Gallery of Art, Washington

作品を見てゆくと、あらためて北斎の画力と情熱にため息が出ます。北斎作品は錦絵約40点、版本約70冊の計約110点、西洋芸術作品はモネ、ドガ、セザンヌ、ゴッホをはじめとする名作約220点(会期中展示替えあり)と、豊富な出品作は影響の大きさを物語ります。出品数は多いですが、東西の画家たちの芸術への絶え間ないエネルギーを感じて飽きることはありません。

展覧会ホームページ

開始日2017/10/21
終了日2018/01/28
エリア東京都
時間午前9時30分~午後5時30分
毎週金・土曜日:午前9時30分~午後8時
ただし11月18日は午後5時30分まで
※入館は閉館の30分前まで
休日月曜日(ただし、1月8日(月)は開館)、2017年12月28日(木)~2018年1月1日(月)、1月9日(火)
その他備考一般1,600円、大学生1,200円、高校生800円(学生証の提示が必要)
※中学生以下は無料。
※2018年1月2日(火)~8日(月)は高校生無料。
※心身に障害のある方および付添者1名は無料(入館の際に障害者手帳をご提示ください)。
開催場所国立西洋美術館
アクセス〒110-0007 東京都台東区上野公園7番7号
JR上野駅下車(公園口出口)徒歩1分
京成電鉄京成上野駅下車 徒歩7分
東京メトロ銀座線、日比谷線上野駅下車 徒歩8分
https://www.nmwa.go.jp/jp/visit/map.html