表現への情熱 カンディンスキー、ルオーと色の冒険者たち Painters of Passion: Adventures in Color by Kandinsky, Rouault, and Their Contemporaries

01-2sヴァシリー・カンディンスキー《商人たちの到着》1905年

ヴァシリー・カンディンスキー《商人たちの到着》1905年 宮城県美術館蔵

カンディンスキーもルオーも、名前を聞いただけで一群の作品が浮かびます。確固とした思考や意思、背景によって独自の作品を生み出していて、他の作家とは大きく違うオンリーワンな作品は、美術史の1ページをそれぞれつくっています。

代表作というのは独特の個性のあるものですから、ましてやカンディンスキーやルオーのようなビッグネームの場合は、強烈な作風がなおさら作家名と代表作を強く結びつけてしまい、そのため代表作以外の作品やそこへいたるまでが切り捨てられてしまっているかもしれない・・・。当たり前のことですが、どんな巨匠もはじめからそこを目指していたわけではないし、見えていたわけでもない。そして一カ所にとどまっていたわけでもないと、そんなことにあらためて気づいた展覧会です。

たとえば、冒頭の写真、カンディンスキーの《商人たちの到着》は、実際に見ていただくとわかると思いますが、作者が誰と知らなくてもはっとするような素晴らしい作品です。でもこれがカンディンスキー? と思いませんか。名前を隠されていたらヴァロットンかな?と思うことだってアリでしょう(三菱一号館美術館で2018年1月8日まで開催中の「パリ♥グラフィック」)。

抽象画の中興の祖といえるカンディンスキーも、もとから抽象画だったわけではないですし、当たり前ですが、抽象画しかないわけではありません。長い間の実験と展開を経て代表作へ至るわけです。《商人たちの到着》が1905年で、1937年には《活気ある安定》が描かれています。

ヴァシリー・カンディンスキー《活気ある安定》1937年 宮城県美術館蔵

《商人たちの到着》を見た当時の人々は、抽象画など想像もできなかったでしょう。逆に、すでにカンディンスキーの抽象画を知るわたしたちの中で《商人たちの到着》を知っている人は、よほどのカンディンスキー通と言えます。

ヴァシリー・カンディンスキー(1866-1944)とジョルジュ・ルオー(1871-1958)はほぼ同世代です。モスクワ生まれで法律家、のちに画家になり主にドイツで活躍したカンディンスキーと、パリ生まれで職人の子、ステンドガラス職人から画家になったパリジャンのルオーは、作品と同じく人生の始まりは大きく異なりますが、同じ画家として1907年のサロン・ドートンヌで出会い交流がありました。最初の章では2人の初期の作品、カンディンスキーの《商人たちの到着》を含めて1900年代の作品が展示されています。ルオーもまだわたしたちの知る、あの暗くて重い画面になる前で、作家の生きた周辺を示すように、都市の底辺の人々の生命力が描かれ(《後ろ向きの娼婦》1905年)、またマチスを思わせるような(《水浴の女たち》1909年)作品もあり、親しみを感じます。それぞれの名が残る後の作品へとどのように行き着くのか、この後2人に何が起こるのか、何が作品に変化をもたらすのか、興味をもって進みます。

ヴァシリー・カンディンスキー『青騎士年鑑』表紙 1912年刊 宮城県美術館蔵

次の章は「色の冒険者たちの共鳴」と題され、1910年以降の2人の軌跡を、ドイツ表現主義の作品とともに見てゆきます。精神のありようを色彩や形にして表現しようとしたドイツ表現主義は、ドレスデンの前衛絵画グループを起点として、カンディンスキーやフランツ・マルクが始めた「青騎士」が1911年にミュンヘンで生まれ、彫刻、建築、映画、音楽へと広がり、現代芸術の先駆ともなります。人間や事物の外見を超えて本質に迫ろうとしたルオーには、異なる文化的背景を超えた同時代的な共通性が感じられます。

ガブリエーレ・ミュンター《抽象的コンポジション》1917年 横浜美術館蔵

やがてカンディンスキーは現実の事物の外観から解放され、色彩とカタチが響き渡る抽象絵画へと進みます。1911年代以来カンディンスキーと交流を深めていたパウル・クレーも独特の抽象世界を展開し、一方、ルオーは信仰に根ざした独自の宗教画を追求します。

パウル・クレー《橋の傍らの三軒の家》1922年 宮城県美術館蔵

最後の第3章は、「カンディンスキー、クレー、ルオー―それぞれの飛翔」というタイトル通り、カンディンスキー、クレー、そしてルオーの3人の代表作が、それぞれの挑戦を物語るように並びます。

ジョルジュ・ルオー《降誕》1953年頃 ジョルジュ・ルオー財団蔵

カンディンスキーとクレーはオットー・ネーベルと親密な交流があり、Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「オットー・ネーベル展 シャガール、クレー、カンディンスキーの時代」にも出品されています(12月17日まで)。あわせて見ると、20世紀はじめから第一次世界大戦をはさんで第二次世界大戦ころまでの激動の時代を生きた芸術家のそれぞれの目指したものをより細かく見ることができると思います。

展覧会ホームページ

開始日2017/10/17
終了日2017/12/20
エリア東京都
時間午前10時より午後6時まで(入館は午後5時30分まで)
休日水曜日(ただし12/6、13、20は開館)
その他備考入館料
一般:1000円、65歳以上:900円、大学生:700円、中・高校生:500円 小学生以下無料 
障がい者手帳をご提示の方、および付添者1名まで無料
開催場所パナソニック汐留ミュージアム
アクセス〒105-8301 東京都港区東新橋1-5-1 
パナソニック 東京汐留ビル4階
ハローダイヤル 03-5777-8600
JR新橋駅「烏森口」「汐留口」「銀座口」より徒歩約8分
東京メトロ銀座線新橋駅「2番出口」より徒歩約6分
都営浅草線新橋駅改札より徒歩約6分
都営大江戸線汐留駅「3・4番出口」より徒歩約5分
ゆりかもめ新橋駅より徒歩約6分
*地下2階から1階までは、パナソニック リビング ショウルーム 東京となっています。
https://panasonic.co.jp/es/museum/access/