片岡球子 面構 神奈川県立近代美術館コレクションを中心に

1 面構 足利尊氏

片岡球子 《面構 足利尊氏》 1966年 神奈川県立近代美術館蔵

なんとなくこの絵は見たことがある、この顔に見覚えがある、誰かに似ているとだれもが思うのではないだろうか。片岡球子の《面構 足利尊氏》である。大胆にディフォルメされた形であるのにもかかわらず、ある種リアリスティックにも見える。

片岡球子の「面構」シリーズを中心とした展覧会が11月26日(日)まで平塚市美術館で開かれている。

片岡球子(1905~2008)は札幌に生まれ、画家を志して女子美術専門学校(現 女子美術大学)に学び、日本美術院展を中心に活動をつづけた日本画家である。1926年に同校卒業後、横浜市大岡尋常小学校の教諭をつとめながら画業を始め、1930年《枇杷》で日本美術院展に初入選し、さらに安田靭彦などに学び、1955年には女子美術大学の専任講師に就任する。その後、愛知県立芸術大学の教授となった1966年、《面構》と題した連作を生涯にわたって描き続ける。

「面構」は、戦国武将や禅僧、浮世絵師など、作家が共感を寄せた歴史上の人物のひととなりを描いたもので、彼らが「現代に生きていたら、どんな行動をするか」という視点から着想して、その人物の肖像画や同時代の風俗を参照しながら、独自の解釈を加えて表現している。

片岡球子 《海(鳴門) 》 1962年 神奈川県立近代美術館蔵

鳴門という題名ながら、この作品を見れば、壇ノ浦の安徳天皇入水の場面と解るはずだ。物語では二位局に「波の下にも都のさぶろふぞ」と抱きかかえられての入水だが、この作品は建礼門院徳子を描き、壇ノ浦が渦を巻く鳴門になっているにも関わらず、平家物語のワンシーンに繋がる。これは片岡球子が人物や同時代を参照しながら独自の解釈を加えて表現しているからである。

片岡球子 《面構 豊太閤と黒田如水》 1970年 神奈川県立近代美術館蔵

戦国武将をよく描いた球子は、その時代に描かれた肖像画であれ、じっくりと観察し、自分の感覚に引き付け、独特の色彩感覚と形の捉え方によって掴み取っている。

片岡球子 《面構 葛飾北斎》 1971年 神奈川県立近代美術館蔵

浮世絵師にはとても共感したものがあったようで、かなりの数の《面構》が描かれている。この北斎像に赤富士をバックに入れたデザイン色彩は見事だ。

片岡球子 《面構 国貞改め三代豊国》 1976年 神奈川県立近代美術館蔵

片岡球子 《面構 歌川国貞と四世鶴屋南北》 1982年 東京国立近代美術館蔵

片岡球子 《面構 雪舟》 1997年 個人蔵

どの歴史上の人物でも、現代を生きる人間としてその人を描こうとする球子の絵は独特であり、力強く、また豊かな色彩感覚をいかんなく発揮している。

平塚市美術館の紹介には、80年と言う長い画業のなかで、78歳からあらたに取り組んだ「裸婦」シリーズ、「富士山」などの作品でも、強烈な色彩と大胆な造形感覚を特徴として、日本画壇に限らず、広く現代の絵画に造形上の問いを投げかけてきたとある。

どの作品も大作ばかりで見応えがあり、また平塚市美術館自体も外と内に広々とした空間が広がっていて気持ちが良い。

平塚市美術館ホームページ

開始日2017/09/30
終了日2017/11/26
エリア神奈川県
時間9:30~17:00(入場は16:30まで)
休日休館日 月曜日
その他備考観覧料金 一般800円、高大生500円 
*中学生以下無料、毎週土曜日の高校生は無料
*各種障がい者手帳の交付を受けた方と付き添い1名は無料
*65歳以上で、平塚市民の方は無料、市外在住者は団体料金(640円)
開催場所平塚市美術館
アクセス〒254‐0073 神奈川県平塚市西八幡1-3-3
☎0463‐35‐2111
JR東海道線平塚駅よりバス、または徒歩約20分。詳しくは、
http://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/art-muse/info1.html