国立新美術館開館10周年 安藤忠雄展ー挑戦ー 10th Anniversary of the National Art Center, Tokyo TADAO ANDO : ENDEAVORS

01-A:ポートレイト

ポートレイト,(撮影:荒木経惟)

国立新美術館の開館10周年記念として、安藤忠雄展が12月18日(月)まで開催されている。

建築家の展覧会はどうなのだろうと思ったが、本人も「出来るかいな!」と当初は思ったらしい。しかしこれが凄い展覧会になっていて、たとえば「光の教会」がそのまま美術館の野外展示場に出現している。また設計図、模型、メイキングビデオ、等々、一見の価値があり、絵画・彫刻等とは別な世界が披露されている。

この展覧会は、安藤忠雄の壮大な挑戦の奇跡と未来への展望を、「原点/住い」、「光」、「余白の空間」、「場所を読む」、「あるものを生かしてないものをつくる」、「育てる」という6つのセクションに分けて紹介している。

光の教会,1989年,大阪府茨木市 (撮影:松岡満男)

水の教会,1988年,北海道勇払郡 (撮影:白鳥美雄)

建築の展示で残念なのは、模型や写真によるので絵画や彫刻のように実物を見たり、実寸を体感できないことがある。しかし今回は野外展示場に《光の教会》が再現されている。《水の教会》は写真ではあるが、比べてみることができるのは興味深い。

Section2は「光」をテーマにした展覧で、六甲の教会、広尾の教会等も紹介されている。安藤は「万物はいつか風化して無くなっていくなかで、人の心の中で永遠に生き続ける建築をつくりたいと願い、教会建築には『永遠の建築』にもっとも純粋な形で向き合える」と語っている。祈りをささげる場に光や風といった自然の断片が引き込まれたときに生まれる空気、生命力に、人間の魂に訴える力を期待しているとある。

直島の一連のプロジェクト(香川県直島町) 模型,香川県直島町

直島 ベネッセハウス,1992/1995年,香川県直島町 (撮影:松岡満男)

直島 ベネッセハウス オーバル,1995年,香川県直島町 (撮影:藤塚光政)

直島に一度は行きたいという思いがとても強くなった。ぜひ地中美術館にも行ってみたい。

Section4で「場所を読む」とあるテーマは、主に直島にあると言ってよい。安藤は「建築の発想の源は、過去に訪れた場所の風景、人やモノとの出会い、といった自身の身体化された記憶の中にあることが多く、仕事のスタートは必ず『場所を読む』ことから始まる」と言っている。建築が場所に息づき、風景に溶け込んでいくには相応の時間がかかり、ときには建物が完成した後の時間にも主体的に関わり、作り手としての責任を果たしていかねば、建築は思う通りには”育ち“ません、とも言っていて、この30年余りをかけた直島の7件の建築は極めて重要な意味を持つ。

表参道ヒルズ,2006年,東京都渋谷区 (撮影:松岡満男)

上海保利大劇院,2014年,上海/中華人民共和国 (撮影:小川重雄)

同潤会青山アパートがなくなり、後はどんな近代的な建築になるのかと思ったら、暖かくしっとりとした同潤会の雰囲気を残すような表参道ヒルズが完成し素晴らしいと思ったものだ。Section3「余白の時間」では、都市というテーマに対し、「建築の内側に明確な機能を持たない余白のスペースをつくりだし、人が集まるきっかけとすることをずって試みてきた」と言っている。

上海保利大劇院の余白は想像を超えてあまりある。

プンタ・デラ・ドガーナ,2009年,ヴェニス/イタリア
(撮影:© Palazzo Grassi SpA. Foto: ORCH, orsenigo_chemollo)

プンタ・デラ・ドガーナ(イタリア ヴェニス)模型

プンタ・デラ・ドガーナはサン・マルコ広場対岸の歴史的建造物「海の税関」を現代美術館として再生したものである。建物をすべて15世紀建設当初の形に戻しつつ、その中心には例外的にコンクリートでおおわれた空間を作り、過去と現代が頭上からの光のもとに対峙する場を作った。Section5にある「あるものを生かしてないものをつくる」というタイトルは、この建築物を見ればいわずと知れる。国内では、上野にある国立国会図書館国際子ども図書館や、札幌の北菓楼札幌本館等々、現存する建築物を補強・保存しつつ建築するという目論見だ。安藤は、文化とは歴史や人々の記憶の堆積の上にこそ育まれるもので、古い建物に手を加え再生することは極めて重要だと位置づける。安藤が考える「再生」とは、単に旧い物を残すことではなく、それを新たなものとして塗り替えることでもない。新旧が絶妙なバランスで共存し、その新旧の対話が生まれ、過去から現代未来へと時間をつなぎ、その場に新たない命を吹き込む―あるもの(建物に刻まれた記憶)を生かして、ないもの(未来へとつながる新たな可能性)をつくる―挑戦とのことだ。深く共感できる言葉だと思った。

住吉の長屋,1976年,大阪府大阪市 (撮影:新建築社 写真部)

住吉の長屋(大阪市) 模型

小篠邸,1981/1984年,兵庫県芦屋市 (撮影:新建築社 写真部)

大淀のアトリエⅡ(大阪市) 模型

4×4の住宅(神戸市)模型

最後はSection1「原点/住まい」の作品群である。安藤にとっての建築の原点は住宅で、特に建築活動のスタートが都市住宅の設計であったため、様々な試行錯誤の上、徹底して単純な幾何学形態の内に、複雑多様なシーンを展開する、あるいは、コンクリートという現代において最もありふれた素材をもって、どこにもないような個性的な空間を作り出す、というものである。

画像はないがSection6では「育てる」がテーマになっていて、これが安藤の根底にある生きるテーマではないだろうかと考える。安藤は「植物も建物も、放っておいたらダメになる、いつも気にかけ水をやったり、メンテナンスをしたり、大切に見守っていかないとならない」と言う。建築とはそれを生み出す作り手の”挑戦“で、同時に、それを使い、育てていく受け手である“我々の挑戦“である、と投げかけてくる。

さらに安藤は、建物の作り手に出来ることは限界があり、最後に頼りになるのは、そこに生きる人々の意識、感性である、と言う。日常の生活風景の問題をわが事として捉え、その思いを少しでも何か行動に移すならば、それが創造的で可能性に満ちた挑戦となるであろう、と。既成概念にとらわれず、自由に枠組みを超えて考えていくことが、これからの時代のヴィジョンなのだと結んでいる。

安藤の建築・人生哲学が作品に投影されている。

最後に。とても精密な模型群に圧倒されるが、これらの模型を作製する際は学生アルバイトを雇うが、彼らは完成したら二度と来ない、と安藤が笑いながら言っていた。むべなるかなと思う。

イヤホンガイドには安藤忠雄自身のナレーションがところどころあって面白いのでお勧めする。

関連企画/ギャラリー・トーク

展覧会公式サイト/Exhibition Website

国立新美術館展覧会ホームページ

The National Art Center, Tokyo Exhibition Homepagen(e)

開始日2017/09/27
終了日2017/12/18
エリア東京都
時間開館自館:10:00~18:00(金曜日・土曜日は20:00まで)
入場は閉館の30分前まで
休日休館日:毎週火曜日
その他備考観覧料:一般1500円、大学生1200円、高校生800円
*中学生以下および障害者手帳をご持参の方(付添の方1名含む)は入場無料。
*11月3日(金・祝)4日(土)5日(日)は高校生無料観覧日(学生証の提示が必要)
開催場所国立新美術館
アクセス〒106‐8558 東京都港区六本木7-22-2
☎03‐5777‐8600(ハローダイヤル)
東京メトロ千代田線乃木坂駅 青山霊園方面改札6出口(美術館直結)
都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩約4分
東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から 徒歩約5分
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