特別展 浅井忠の京都遺産 京都工芸繊維大学 美術工芸コレクション

武士山狩図

浅井忠 武士山狩図 明治38年 (1905) 京都工芸繊維大学美術工芸資料館

泉屋博古館で「特別展 浅井忠の京都遺産」と銘打って、京都工芸繊維大学と泉屋博古館の所蔵品から浅井忠関連の作品が10月13日まで展覧されている。以下は主に泉屋博古館による説明を用いる。

日本洋画壇の先覚者として知られる浅井忠(1856-1907)は、パリ万国博覧会監査などのため訪れたヨーロッパでの経験が、画風の変化のみならず、全盛期のアール・ヌーボーの洗礼によりデザインへの強い関心をもたらすことになる。彼は2年余りのフランス滞在ののち、京都高等工芸学校(京都工芸繊維大学の前身のひとつ)に招かれて拠点を京都に移した。明治35 年(1902) からこの世を去る明治40 年まで、その京都生活は6年間という短さながら、古都に根ざした新旧の文化に親しみつつ、この地の美術工芸に新たな息吹をもたらす。

浅井は京都高等工芸学校で図案を指導するかたわら、私的には聖護院洋画研究所、関西美術院と続く洋画家養成機関の中心となって関西洋画壇の発展に尽力した。 また遊陶園と京漆園など陶芸家や漆芸家と図案家を結ぶ団体を設立、自らもアール・ヌーヴォーを思わせる斬新なデザインで京都工芸界に新風を巻き起こす。

本展は、京都工芸繊維大学に遺された彼の多彩な足跡をたどる。あわせて浅井、鹿子木孟郎ら、洋画家を支援し作品を愛でた住友家ゆかりの品々も展示し、近代関西の美術工芸、美術教育、生活文化に浅井忠が何をもたらしたのか再考する。出品予定約100件。

浅井忠 梅図花生明治35-40 年(1902-07)京都工芸繊維大学美術工芸資料館

Ⅰ 始まりはパリ、万博

絵画研究と万国博覧会視察のため渡仏した浅井は、アール・ヌーヴォー全盛のパリで図案研究の必要性を痛感するとある。同じ思いの中澤岩太に出会い、設立準備中の京都高等工芸学校に教授として誘われた浅井は、中央画壇重鎮の座を捨て京都移住を決意、教材用の工芸品収集に奔走した。

アルフォンス・ミュシャ 椿姫 1896年 京都工芸繊維大学美術工芸資料館

選んだデザイン教材はアール・ヌーヴォ―のポスターや陶磁。

浅井忠 グレーの森 明治34 年(1901) 泉屋博古館分館

フランスで感動したのはふりそそぐ明るい陽光。

Ⅱ 画家、 浅井忠とその流れ

京都高等工芸学校と平行して、聖護院洋画研究所、関西美術院を設立し、洋画家の若手育成にも尽力した。同校では、都鳥英喜、鹿子木孟郎ら浅井を敬慕し京都に来た画家が教壇にたち、霜鳥正三郎(之彦)ら卒業生がそれに続いた。浅井がもたらした洋画と図案の新潮流は脈々と受け継がれていった。

鹿子木孟郎 加茂競馬 大正2 年(1913) 個人蔵 (泉屋博古館分館寄託)

滞欧期に磨きがかかった明澄で洗練された画風は、京都近郊の風景にも明るい光を注ぎこみ、東宮御所のタペストリー原画は、数々の習作を経て完成、晩年の代表作となる。

Ⅲ 図案家 浅井忠と京都工芸の流れ

陶芸家や漆芸家と図案家を結ぶ遊陶園と京漆園などの団体を設立、自らもアール・ヌーヴォーを思わせる斬新なデザインで京都工芸界に新風を巻き起こす。

浅井忠 鬼ヶ島(双幅のうち左幅) 明治38年(1905) 
京都工芸繊維大学美術工芸資料館

浅井忠図案 杉林古香製作 朝顔蒔絵手箱 明治42年(1909) 
京都工芸繊維大学美術工芸資料館

意匠図案、器形、釉薬などを研究するために購入された陶磁は、1900年代の流行を映しだしている。そして大正期の図案研究隆盛へとつながる。

みどころ 住友コレクションとの競演

大阪の住友吉左衞門(号春翠1865-1926)は、明治33 年(1900) の欧米視察で西洋文化に深く感銘し、須磨に洋館を建設し西洋式生活を実践した。彼は留学支援をしていた鹿子木孟郎を通じ浅井忠ら京都の画家の作品を購入、また関西美術院設立にも寄付を惜しまなかった。明治36 年大阪の第五回内国勧業博覧会では意欲的な意匠の工芸品を多数求める。泉屋博古館が所蔵する住友家伝来品と工繊大、時期を同じくするふたつのコレクションには共通作家も多い反面、異なった作風を見せるものもある。本展ではその対比をを通じ、近代におけるデザイン、制作、受容それぞれのあり方をも浮かび上がらせている。

重要文化財 板谷波山 葆光彩磁珍果文花瓶 大正6年(1917) 泉屋博古館分館

一通り見て回った後、浅井忠の画力に感動し、またデザインへの関心とどう図案化するかへの意志が強く、明治の人達には心を惹きつけられる。この情熱で教育をし、その教育の為の確かな教材購入をこのようにしたのだと良く解る展示である。武士山狩図に代表される洋画も素晴らしいが図案家としての浅井忠も眼目である。鬼が島や大津絵の下図などユーモラスな表情、温かさ、そして大胆な構造が何とも言えない。また梅図花生や朝顔蒔絵手箱のような琳派系のデザインはよりモダンになっている気がする。収集したものは一流品とよばれるものばかりでミュシャもさることながらティファニー社のガラス作品連も美しく優雅である。また泉屋博古館所蔵の初代宮川香山の青華鳳凰型花入が個人的に好きである。じっくり見ていると時間を忘れていく。

展覧会ホームページ

開始日2017/09/09
終了日2017/10/13
エリア東京都
時間開館時間 10:00~17:00
休日休館日:月曜(9/18・10/9は開館、9/19(火)、10/10(火)休館)
その他備考入館料:一般800円、高大生600円、中学生以下無料
開催場所泉屋博古館 分館(東京)
アクセス〒106‐0032 東京都港区六本木1-5-1
Tel 03‐5777‐8600(ハローダイヤル)
東京メトロ南北線「六本木一丁目」駅下車すぐ
https://www.sen-oku.or.jp/tokyo/access.html