畠中光亨コレクション インドに咲く染と織の華 Hatanaka Kokyo Collection – Masterpieces of old Indian textiles

3ベッド・カバー パランポール

ベッド・カバー パランポール
コロマンデール・コースト 18世紀後期
手描染、媒染および防染 木綿 337×263㎝ ヨーロッパ市場向け

畠中光亨(はたなかこうきょう)氏のコレクションであるインド染織品約260点が渋谷区立松濤美術館で8月8日から9月24日まで展覧される。畠中氏は日本画家であると同時にインド美術研究家であり、インドの染織品と細密画等約3000点を所蔵する。

インドの布と言えばサリーしか知らないので、今回はインドの染織品について学ぶとてもよい機会である。あの広大な大地では紀元前3000年から綿の歴史があり、紀元前2000年には媒染技法をもち、茜染の布と思われる物がインダス文明遺跡より出土している。その綿の多色染がヨーロッパ、日本に渡った時は驚愕されまた羨望もされた。羊毛文化のヨーロッパでは「風の布」とさえ言われた。日本では高価なインドの更紗は茶の湯で珍重された。染め、織、刺繍等、6章に別けて紹介していこう。

(以下にある画像はクリックすると拡大します)

第1章     手描き、木版捺染

覆い布
アンドラ・プラデッシュ州、マスリパタム 19世紀初期
木版捺染、媒染及び防染 木綿 106×106㎝

天蓋布
ラジャスタン州、サンガネール 19世紀初期
木版捺染、媒染及び防染 木綿 350×506㎝

現在、木版捺染を作っているところは減少の一途で、また天然染料もわずかとなっている。このような美しい色彩の布はなくなるかもしれない。鮮やかな赤、透明感のある水色と何ともいえない。

手描きはカラムカリ(Kakamkari)と言われ線描や媒染、色差しに使うカラム(筆やペンの意)は、竹ペンの先3㎝位のところにフェルト状の山羊の毛を卵型に形づくったものを括り付け、染液や媒染液を含ませて使用するとのこと。布の調達、漂白、下地染、先媒染はインドの伝統的な染色技法において不可欠な要素で、鮮やかな染め上がりの色を得るために牛糞と牛乳の溶液に浸け、インドの強い天日に干すことを繰り返して漂白したとある。インドでなければ出来上がらないのは確かだ。

第2章     印金、印銀

被布(部分) ドォパタ
ラジャスタン州 19世紀後期
木版金箔押 木綿モスリン 249×183㎝

被布(部分) ドォパタ
ラジャスタン州 19世紀末期
木版金箔押 木綿 288×140㎝

織物の金糸、銀糸は糸に金箔、銀箔を巻き付けたものであるが、印金、印銀は布に直接箔が押してある。日本では金更紗、銀更紗と呼ばれている。光輝く金箔、銀箔は魅力的で高価なものだが、水洗いすれば溶けて金箔、銀箔が落ちてしまうので、日常衣装でなく宮殿やヒンドゥ寺院の装飾布として、また旗にも印金での文様が好んで用いられた。

第3章     銅板捺染

覆い布(部分) イギリス
19世紀中期 銅板捺染 木綿 273×157㎝

寺院用掛布断片
西インド 19世紀後期 銅板捺染 木綿 73×156㎝

インドの文様染はフランス、イギリスで木版捺染の模倣が試みられたが、1752年イギリスでフランシス・ニクソンにより銅版画を布にプリントすることが始められた。1783年にローラー式の捺染機の発明され、1785年には操業が始まり、文様の継ぎ目を気にすることのないデザインとなる。元々ヨーロッパには銅版画の歴史があるのでその技を使い、銅板ローラープリントで1日に5000m以上の布が生産できるようになる。19世紀半ばに合成染料が出来ると一気に普及していくが、質の低下をもたらすことは否めなかった。

第4章     絞

被布(部分)
グジャラート州 19世紀末期 絞り染 木綿 240×140㎝

絞りは日本にもありこれらの布地を見ると懐かしい気がする。絞り布はプリントでなく絞りを施した布という証拠に、糸括りをしたままの状態で売られることも多い。

第5章     織

布地(部分)
ヴァラナシ 19世紀中期 縫取織 絹/金糸、銀糸 222×132㎝

肩掛(部分)
カシミール 18世紀後期 綾地綴織 パシュミナ 200×138㎝

インドでは多種多様な織物が作られてきた。錦織とは多数の色糸を使用し、織の組織により文様をあらわす織物の総称である。金、銀糸をふんだんに織り込んだキンカブ(kinkhab)は中でも最も豪華で華麗な織物で、古くからヴァラナシ産が有名であった。また金糸、銀糸の縫取織はブロケードと言われヴァラナシの他でも織られた。カシミール・ショールは綾織地で色糸を巻き付けた、数多くの小管(トジリtojili)を使い、綴織で文様を出している。上質品は日本でも有名なパシュミナ(pashmina)と呼ばれるカシミール山羊の内毛が使われ、薄く柔らかい風合いである。

第6章     刺繍

断片(部分)
ウッタル・プラディッシュ州、ラクノウ 19世紀初期 刺繍 チカン
木綿モスリン/木綿糸 106×15㎝

布地(部分)
グジャラート州、カッチ地方 20世紀前期
ミラーワーク入り刺繍 木綿/絹糸、木綿糸 216×51㎝

地域や部族、また王侯貴族から一般庶民まで、それぞれに特徴をくっきりと見せるインドの刺繍の種類の豊かさと完成度の高さは、古代より刺繍が連綿と続いてきたことを物語っている。ラクノウ(Lucknow)では、ベンガル産の上質の木綿モスリンである白木綿糸に、繊細な刺繍技法を駆使したチカン刺繍がある。数々の地方で地域独特の刺繍があるが、もう一つ、グジャラートのカッチ地方では、大地に生きる人々が、母から子へと、日々の生活の中で教え伝えた雲母片(20世紀に入るとガラス鏡片)を刺しこんだ、地方色豊かな刺繍が作られた。

イヴェント情報はこちらをご覧ください。

松濤美術館ホームページ

開始日2017/08/08
終了日2017/09/24
エリア東京都
時間午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで) 毎週金曜日は午後8時閉館(入館は午後7時30分まで)
休日8月14日(月)、21日(月)、28日(月) 9月4日(月)、11日(月)、19日(火)
その他備考入館料: 一般500円、大学生400円、高校生・60歳以上250円 小中学生100円
※土・日曜日、祝休日及び夏休み期間は小中学生無料
※毎週金曜日は渋谷区民無料
※障がい者及び付添の方1名は無料
開催場所渋谷区立松濤美術館
アクセス〒150‐0016 渋谷区松濤2-14-14
☎ 03‐3465‐9421
http://www.shoto-museum.jp/access/