書だ!石川九楊展

「歎異抄No.18」(部分)ss

《歎異抄 No.18》(部分)

書家、評論家として活躍する石川九楊(いしかわきゅうよう:1945-)の大規模な展覧会が上野の森美術館で始まった。制作作品1,000点、著作刊行100点への到達を記念し、石川九楊の書の宇宙を広く紹介する展覧会だ。

会場を入ると《エロイ・エロイ・ラマ・サバクタニ又は死篇》(1980年)のなんと全長85メートルに及ぶ作品が展示されている。上野の森美術館開館以来、最長の作品とのことだ。青年期に書かれた実験的な作品で、次の展示室まで続いている。強く、または繊細な筆致、墨色の変化、文字の大小などの面白さを追っていくと、時が経つのを忘れてしまう。

《エロイ・エロイ・ラマ・サバクタニ》

さらに灰色に染めた紙に言葉を墨や鉛筆で書いた作品が続く。作者のいう「灰色の時代」だ。叩きつけられたような文字や、全面を覆い尽くす文字からは、感情の激しさや時代の熱のようなものが感じられる。

「灰色の時代」に区切りをつけた後は、古典文学に回帰することになる。文庫本1冊分が書き込まれた代表作《歎異抄 No.18》(1988年)や《徒然草》《方丈記 No.5》などが展示されている。一見すると文字が書いてあるようには見えない。記号のようにも楽譜のようにも見えてくる。しかし、目を近づけると確かに文字と、文字と文字を結ぶ無数の線が見えてくる。このように古典文学を書いた書家がいままでいただろうかと思わずにはいられない。

《方丈記 No.5》(二点連作のうち一点)

2階に上がると「源氏物語」54帖に「雲隠」を加えた《源氏物語五十五帖》(2008年)が展示されている。一挙公開は東京では初とのことだ。無数の線が縦に引かれたもの、線が互いに呼び合い呼吸しているかのようなものなど、多様な技法とイマジネーションが作り出した世界は圧巻だ。

《源氏物語五十五帖より「椎本」》

最後に近作である《二〇〇一年九月十一日晴 垂直線と水平線の物語 I 》をはじめ、東日本大震災における原発爆発など、時代状況に触発されて書き下ろした自作文の作品が展示されている。同時代に生きる作家であることを強く意識させられた。

《二〇〇一年九月十一日晴 垂直線と水平線の物語 I(上)》

2階展示ケースには盃1枚に1文字を綴った《盃千字文》が陳列されている。1,000枚全てを展示するのは稀とのことなので、こちらも必見。

イベント等につきましては展覧会ホームページをご覧ください。

石川九楊 近影

開始日2017/07/5
終了日2017/07/30
エリア東京都
時間10:00-17:00(入場は16:30まで)
休日なし
その他備考入場料: 一般、大学、高校生1,200円 中学生以下無料
障害者手帳を提示の方とその付添い者1名は無料
開催場所上野の森美術館
アクセス〒110ー0007
東京都台東区上野公園1-2
℡ 03-3833-4191
・JR 上野駅 公園口より徒歩3分 ・東京メトロ・京成電鉄 上野駅より徒歩5分
http://www.ueno-mori.org/about/