レオナルド×ミケランジェロ展 Leonardo da Vinci e Michelangelo

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レオナルド・ダ・ヴィンチ《少女の頭部/〈岩窟の聖母〉の天使のための習作》
1483-85年頃 金属尖筆、鉛白によるハイライト/明るい黄褐色に地塗りした紙
トリノ王立図書館 ©Torino, Biblioteca Reale

レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)とミケランジェロ・ブオナローティ(1475-1564)。ともに歴史に名を残すイタリア・ルネサンスの偉大な芸術家の素描を対比する日本で初めての展覧会です。

言わずとしれたレオナルドは絵画、ミケランジェロは彫刻。その対比を、芸術家の力量を示す上で最も重要とされ、全ての創造の源である素描を中心に展覧します。

レオナルドは「画家は、まず優れた師匠の手になる素描を模写することに習熟しなければならない。」と述べています。ミケランジェロは弟子のアントニオに「アントニオ、素描しなさい。素描しなさい、アントニオ。素描しなさい。時間を無駄にしないで。」と言っています。自然主義のルネサンス期には、「〈自然〉を母として、〈素描〉を父とすると、〈建築〉〈彫刻〉〈絵画〉の3姉妹がいる」といわれていました。

この2大巨匠の素描を「顔貌」、「絵画と彫刻のパラゴーネ*」、「人体表現」、「馬と建築」、のテーマ別にたどり、またギリシャ神話の「レダと白鳥」では追随者による模倣から失われてしまったオリジナルを想像しつつ、「手稿」、「書簡・詩歌」のセクション合わせて、初公開を含むおよそ 65 点で二人のそれぞれの芸術を追います。

* パラゴーネ:イタリア語のparagone。「比較」という意味

冒頭の作品は「この世で最も美しい素描」とされる、レオナルド作《少女の頭部/〈岩窟の聖母〉の天使のための習作》です。ルーブル美術館所蔵の〈岩窟の聖母〉の画面右側に座る天使の素描と言われています。左利きのレオナルドは右下へと向かうハッチングで描いています。肩越しに振り返るポーズは、正面観と側面観を同時にみせながら画面の中に奥行きをもたらし、さらに頭部だけが彫像のような存在感をあたえられていることによって、あたかもえがかれた人物が振り向き様に画面から抜け出して、ものうげな眼差しをこちらに投げかけているようです。

ミケランジェロの《〈レダと白鳥〉の頭部のための習作》は、ミケランジェロの素描のなかでも最も美しく、最も重要な作品の一つです。後述する〈レダと白鳥〉の頭部の習作であり、モデルは弟子の一人、アントニオ・ミーニではないかと考えられています。当時女性像を描くためにも男性のモデルがしばしば採用されました。右利きのミケランジェロはクロスハッチングで斜線を交差させる描き方で立体感を出しています。顔の細部は繊細な明暗表現によって肉付けされ、左下の2つ目の素描では、目鼻をより近くから観察し、長いまつげが強調されて女性らしい描写にされています。

ミケランジェロ・ブオナローティ《〈レダと白鳥》〉の頭部のための習作》
1530年頃 赤チョーク/紙 カーサ・ブオナローティ
©Associazione Culturale Metamorfosi and Fondazione Casa Buonarroti

レオナルドとミケランジェロはともにフィレンツェ近郊の出身で、レオナルドが23歳年上です。商才に長け文芸保護に力をいれたメディチ家の支配するフィレンツェは、新たなルネサンス世界の思想的中心でした。当然、周囲も本人同士も互いを強く意識していたでしょう。2人は「宿命のライバル」といわれています。

その2人が生涯に一度直接対決する機会がありました。1503年から1504年にかけて、フィレンツェ旧市庁舎の大評議会の間の壁画制作です。レオナルドの〈アンギアーリの戦い〉は、新しい技術を試したいという執着が災いして完成前に画面が損傷してしまい、ミケランジェロの〈カッシナの戦い〉は教皇ユリウス2世からローマに召還されたために時間切れとなってしまいます(下のミケランジェロ作 《背を向けた男性裸体像》は〈カッシナの戦い〉の習作の一点)。結局双方未完となったものの、下絵の原寸大素描(カルトーネ)は一方がメディチ家の宮廷に、もう一方が法王の間にあり、それぞれ、まなぶべき「この世の学舎」として同時代の芸術家に活用されました。

ミケランジェロ・ブオナローティ 《背を向けた男性裸体像》1504-05年
ペンとインク、黒チョークのあたりづけ/紙 カーサ・ブオナローティ
©Associazione Culturale Metamorfosi and Fondazione Casa Buonarroti

「レダと白鳥」は、スパルタ王の妻レダが白鳥に化けたゼウスに誘惑されている場面で、当時の画家たちが好んで題材にしたギリシャ神話です。両者のオリジナルの絵画は失われましたが、それぞれ後年の模倣がウフィツィ美術館とカーサ・ブオナローティに収められていますが、この展覧会で並んで展示されています。

レオナルド・ダ・ヴィンチに基づく 《レダと白鳥》
1505-10年頃 油彩/板 ウフィツィ美術館
©Firenze, Gallerie degli Uffizi, Gabinetto fotografico delle Gallerie degli Uffizi

フランチェスコ・ブリーナ(帰属) 《レダと白鳥(失われたミケランジェロ作品に基づく)》
1575年頃 油彩/板 カーサ・ブオナローティ
©Associazione Culturale Metamorfosi and Fondazione Casa Buonarroti

レオナルド:「平らなものを立体的に見せるという技量・・・画家はこの点で彫刻家を凌駕している」

ミケランジェロ:「絵画と彫刻の両者は、同じ才知に由来するものですから、お互い仲直りして、大げさな議論はやめにしたいものです」

500年を経た現在でも賞賛しきれない偉大な2人の芸術家が、同一の地域にほぼ同時期に生まれたというのは歴史の偶然なのでしょうか。2人の作品を並べてみると、同じ芸術の都で肩を並べ、自らの才能を自覚し、自信にあふれ、当時の文化の最先端を背負うライバルとしての緊張感が感じられます。5世紀の時を超え、イタリアの数カ所におさめられている2人の天才の作品を、東京の美術館で並べてみることの幸運を感じます。

関連イベントにつきましてはこちらをご覧ください。

ミケランジェロ・ブオナローティ 《河神》
1525年頃 獣脂、松脂、蝋、テルペンチン カーサ・ブオナローティ
©Associazione Culturale Metamorfosi and Fondazione Casa Buonarroti

展覧会ホームページ

Leonardo Da Vinci — known as a polymath, or universal genius, exhibiting talent as an artist in 15th century Italy, and expanding his interest into the fields of architecture, science and anatomy. Michelangelo Buonarroti — a genius sculptor of the century, whose extraordinary talent was revealed in his teens and who was often called Il Divino (the divine one). This exhibition is the first ever in Japan to compare and contrast these two great artists who excelled at drawings (disegno) which is considered the most important concept to show the competence of artists and is the source of all their artistic creations. The exhibition brings together about 65 pieces, mainly from the Royal Library of Turin and Casa Buonarroti collections, made up of oil paintings, manuscripts, letters, in addition to the drawings. This is a rare opportunity to be able to make a close comparison of what is known as Leonardo’s “most beautiful” drawing “Head of a young woman/Study for the Angel in the Virgin of the Rocks” and Michelangelo’s “Studies for the head of “Leda” Left)・・・to continue (Exhibition Homepage)

開始日2017/06/17
終了日2017/09/24
エリア東京都
時間10:00~18:00(祝日を除く金曜、第2水曜、会期最終週平日は20:00まで)。入館は閉館の30分前まで
休日月曜休館(但し、祝日は開館)
その他備考観覧料: 一般1,700円 高校・大学生1,000円 小・中学生500円
アフター5女子割:毎月第2水曜日17:00以降/一般(女性のみ)1,000円
障がい者割引:障がい者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名まで当日料金の半額
開催場所三菱一号館美術館
アクセス〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-6-2
・JR「東京」駅(丸の内南口)徒歩5分
・JR「有楽町」駅(国際フォーラム口)徒歩6分
・東京メトロ千代田線「二重橋前」駅(1番出口)徒歩3分
・東京メトロ有楽町線「有楽町」駅(D3/D5出口)徒歩6分
・ 都営三田線「日比谷」駅(B7出口)徒歩3分
http://mimt.jp/access/