メルセデス・ベンツ アート・スコープ2015-2017─漂泊する想像力 Mercedes-Benz Art Scope 2015-2017: Wandering to Wonder

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佐藤時啓「An hour exposure 2017 Tokyo – Akihabara」2017年 写真

日本とドイツの間で現代美術アーティストを交換して交流をはかる「メルセデス・ベンツ アート・スコープ」。今回は、日本から泉太郎(いずみ・たろう/2016年ベルリンへ派遣)、ドイツからメンヤ・ステヴェンソン(Menja Stevenson/2015年東京へ招聘)に、1993年参加の佐藤時啓(さとう・ときひろ)の招待出品を加えて3名の展示となっています。

入ってすぐのギャラリーIには泉太郎さんの《溶けたソルベの足跡》が、2階まで吹き抜けの壁一面に展示されています。ベルリンの地図と、それをいたずら描きのレイヤーで覆ったものを中央に、大小多数のモニターが周辺を囲んでいます。モニターに引かれた線をたどると地図のある地点をさしており、その場所から見上げた空の映像がモニターに映し出されています。いたずら描きの下にあたる地点では空にその線が見えます。泉作品は、一見くだらなそうに見えるけれど、実はぎくりとさせられる、本質をいとも簡単な方法で投げかけてくる作品です。今でこそベルリンの街はひとつですが、壁の崩壊まで地上は厳しく分断されており、同じ空を見ていた2つの街のことを思わずにはいられません。

一階奥のギャラリーIIには、ドイツ南部のシュトゥットガルトから初来日したメンヤ・ステヴェンソンさんの作品が展開します。フレームに入った縦長の大きな作品は《e/絵 名人の机》です。浮世絵木版の版画工房を見学したところ、注意をひいたのが熟練の職人さんの作業机だそうで、その机の表面を版としてプリントしたものです。机の木目に長年の作業の痕跡が表れています。同じ形の四角い長方形は抽象絵画のようであり、しかし強調された縦長と、浮世絵を思わせる色が、西洋と日本の緊張ある融合に思えます。

メンヤ・ステヴェンソン「e / 絵 名人の机」2015年
モノタイプ/12点組より 各191 x 97 cm

1993年に参加の佐藤時啓さんは、実在の場所に無数の光の水玉が入り込んでいるモノクロ写真《光—呼吸》のシリーズで有名ですが、今回は、当時の写真に、あらたに撮影したその場所の現在のカラー写真を組みにして発表しています。《光—呼吸》の光の水玉は、自らが被写体に入り込み、鏡を使って太陽光の反射を長時間露光したものですが、今回は都内の同じ場所を被写体に介在することなく長時間露光でカラー撮影したものです。もやっている部分は、車や人など静止していないものの絶え間ない流れでしょう。光の水玉で幻想的な90年代初頭の東京のある場所の風景と、その場所の現在のまぎれもない現実がならび、四半世紀の間に起きたその場所の変化を知ることも、失われた時間を思うことも、また作家の経た時間や、あらたな客観的な眼差しをうかがうこともできると思います。

佐藤時啓「An hour exposure 1990/2017 Tokyo – Shibuya」2017年 写真/2点組

他にも3名の作品が並びます。全て新作です。

土・日・祝日はメルセデス・ベンツVクラスが品川駅(JR/京急)と原美術館の間をシャトル運行します。無料で毎便定員6名です。詳しくは下記アクセス欄をご覧ください。

●参加作家紹介
泉太郎(映像インスタレーション)─映像を織り交ぜてどこかおかしい空間を創り出す>
1976年奈良県出身。多摩美術大学院美術研究科修士課程修了。「ヨコハマトリエンナーレ2011」など、国内外で多数の展覧会に参加。また、原美術館で開催したグループ展「ウィンター・ガーデン:日本現代美術におけるマイクロポップ的想像力の展開」(2009)にも出品。本年2月からはパリのパレ・ド・トーキョーで個展「Taro Izumi – Pan」を開催。東京都在住。

メンヤ・ステヴェンソン(写真、モノタイプなど)─異文化の《いにしえ》と《いま》を観察する>
1982年ドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州ロットヴァイル出身。シュトゥットガルト造形芸術アカデミーで美術とメディアアートを学ぶ。写真・映像・パフォーマンス・インスタレーションなど作品は多彩。シュトゥットガルト在住。

佐藤時啓(写真)─カメラで切り取る《自分》と《東京》のビフォー/アフター>
1957年山形県出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了。芸術選奨文部科学大臣賞(2015)など、受賞多数。美術館での個展は東京都写真美術館(2014)、アメリカ・シカゴ美術館(2005)など多数。また、原美術館で開催したグループ展「空間・時間・記憶-Photography and Beyond in Japan」(1994、のち北米3カ国に巡回)、「『アート・スコープ』の12年-アーティスト・イン・レジデンスを読み解く」(2003)、「そこにある、時間-ドイツ銀行コレクションの現代写真」(2015)にそれぞれ出品。埼玉県在住。東京藝術大学教授。

●「メルセデス・ベンツ アート・スコープ」とは
原美術館が2003年からパートナーをつとめる「メルセデス・ベンツ アート・スコープ」は、日本とドイツの間で現代美術アーティストを交換して交流をはかるメルセデス・ベンツ日本の文化・芸術支援活動で、1991年から続いています。このプログラムは「アート・スコープ」の名称で始まり、原美術館は2003年からパートナーとなりました。そして今回から名称を「メルセデス・ベンツ アート・スコープ」と改め、装いを新たにしました。

プログラムの骨子は、現代美術の発展と日欧文化交流促進の一助として(1)日本のアーティストにはベルリンで、ドイツのアーティストには東京で、それぞれ約3ヶ月間の《アーティスト・イン・レジデンス》を体験してもらう、(2)その成果を踏まえた参加アーティストの合同展覧会を原美術館が企画・開催する、というものです。

今回から、プログラム名称を改めると同時に、展覧会では、直近の派遣・招聘アーティストに加えて、ゲストとして過去の参加アーティストから1名に出品依頼することとしました。「アート・スコープ」参加以後もキャリアを積み重ねている招待作家の近作を通して、四半世紀を越えて継続する本プログラムの歴史と変遷を検証できることと思います。

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開始日2017/06/27
終了日2017/08/27
エリア東京都
時間11:00 am - 5:00 pm(水曜は8:00 pmまで/入館は閉館時刻の30分前まで)
休日月曜(祝日にあたる7月17日は開館)、7月18日
その他備考一般1,100円、大高生700円、小中生500円
原美術館メンバーは無料
学期中の土曜日は小中高生の入館無料
20名以上の団体は1人100円引
開催場所原美術館
アクセス〒140-0001 東京都品川区北品川4-7-25
Tel  03-3445-0651(代表)
JR「品川駅」高輪口より徒歩15分/タクシー5分/都営バス「反96」系統「御殿山」停留所下車、徒歩3分/京急線「北品川駅」より徒歩8分/
無料送迎シャトル:
品川駅発 11:00/45, 12:30,13:15,14:00/35,14:10/45,16:20
品川駅バス停(都営バス「反96」番系統「五反田駅」行き)の先、運行日には看板が掲示されます。
原美術館発11:25,12:10/55,13:40,14:15/50,15:25,16:00/40,17:05