ライアン・ガンダー ― この翼は飛ぶためのものではない Ryan Gander ―These wings aren’t for flying

2.リアリティプロデューサーs

ライアン・ガンダー《リアリティ・プロデューサー(構造と安定のための演劇的枠組み)》
2017年 ⒸRyan Gander, Courtesy of TARO NASU

ライアン・ガンダーの公立美術館における日本初の大規模個展です。新しいコンセプチュアル・アートの旗手と目されるライアン・ガンダーは1976年、イギリス生まれですから今年まだ41歳。しかしこれまでに名だたるアートプライズを総なめし、2011年のヴェネチア・ビエンナーレや2012年のドクメンタ13などの大規模国際展に参加、アートの中枢であるヨーロッパ、アメリカだけでなく、中米、アジアでも個展が続く、いま世界の美術界でもっとも注目されているアーティストの一人と言えます。

日本国内でも銀座メゾン・エルメス フォーラムや、太宰府天満宮のアートプログラムのほか、ヨコハマトリエンナーレ2011、岡山芸術交流2016などに参加、現在、太宰府天満宮で『ライアン・ガンダー展−太宰府天満宮コレクションより』(7月30日まで)と、東京オペラシティアートギャラリーでの『片山正道的百科全書』(6月25日まで)にも作品が出品されています。

意味、内容、思考などを重視しているコンセプチュアル・アートは、形態や物質的側面によらないため「難解な現代アート」のうちのひとつとされることがあります。ライアン・ガンダーも作品にまつわる思考を重視し、普段の生活で遭遇する物事を素材としてメディアを固定せず、表現形態は、オブジェ、インスタレーション、絵画、写真、映像、印刷物など多岐にわたり既成の型にはまっていません。

ライアン・ガンダー 『ポートレート・シリーズ』より(参考図版)
ⒸRyan Gander, Courtesy of TARO NASU

例えば、2011年末から2012年初めにおこなわれた銀座メゾン・エルメス フォーラムでの10周年を記念する個展『墜ちるイカロス―失われた展覧会』では、床にちらばった肖像画があり、杉本博司、須田悦弘、西野達などが識別できましたが、それはその空間で過去に展示をした作家たちであり、老けて描かれているのは、法廷画家に頼んで描いてもらった30年後の肖像でした。ヨコハマトリエンナーレ2011 OUR MAGIC HOURでは、メイン会場の横浜美術館のロビーに輝く球状の金属があったのですが、見過ごされているかもしれません。金属片の集まりで、タイトルは「本当にキラキラするけれど何の意味もないもの」でしたから。2012年のドクメンタ13でも、来場者の多くが最初に訪れるFridricianum宮殿の1Fの展示室で、モノはなにもなく、まったくの空っぽ状態に勇んだ入場者は肩すかしに会います。地下の通路や建物外のカフェと関係があるようですが、気づかないほどの空気の流れがあるのみで、いずれにしてもこの大舞台において、アートのいかなるスタイルや型に固定されることを拒んでいる意思表示と受け取れます。

作品は美術全般についての考察、見ることについての洞察、日常経験の分析など、知的な思考が満ちているので、謎解きをしたり、「もしも○○だったなら」を当てはめて実在しないフィクションに想像をめぐらすことができれば、新たな思考回路を生み出し、物事の認識を拡張してくれます。

世界のアートシーンでひっぱりだこと言っても、視覚的に(聴覚や触覚、嗅覚などを動員しても)キャッチーではありません。声高に批判したり、考えを誘導したり、主張したりすることがなく静かな作品です。知的ですが、その視線はやわらかく、おだやかで、また冷静で客観的です。車いす利用者で若いころ見ることができなかった展覧会について、カタログなどで勉強したそうです。それが、実際に見ることよりも、どれだけ考えるかが重要であるという姿勢になっているのかもしれません。

そんな美術史全般への造詣も深いライアン・ガンダーの企画による所蔵作品展(『ライアン・ガンダーによる所蔵作品展 – かつてない素晴らしい物語』/”The Greatest Story Ever Told – The Collection curated by Ryan Gander”)も全館で開催します。美術館所蔵品を多数のペアとして紹介しますが、類似に基づきながらもジャンルや時代が異なるため、ライアン・ガンダーの芸術観による新鮮な観点を提供してくれるでしょう。

関連イベントにつきましては展覧会ホームページをご覧ください。

同時開催:ライアン・ガンダーによる所蔵作品展 ―かつてない素晴らしい物語

美術館ホームページ

 

Using art from the past and a wide array of everyday objects as materials, the internationally active artist Ryan Gander (born in England in 1976) creates works that strongly stimulate our imagination. This exhibition, Gander’s first solo show at a public museum, will consist of approximately 60 notable and new works by this unusually gifted artist.

The Greatest Story Ever Told ―The Collection curated by Ryan Gander is also exhibited April 29 – July 2, 2017

Using the instinctive human ability to think in terms of comparisons as a basic premise, the artist Ryan Gander will introduce works from the museum collection in pairs. While displaying a physical resemblance, the numerous pairs, derived from different genres and eras, will provide us with a host of new perspectives. They will also illustrate the fact that contemporary art does not rely on the abilities of an individual person, but is instead based on a body of common knowledge.

Exhibition Website in English

ライアン・ガンダー《あの最高傑作の女性版》2016年
ⒸRyan Gander, Courtesy of Lisson Gallery
Ryan Gander, DOMINAE ILLUD OPUS POPULARE , 2016 
©Ryan Gander, Courtesy of Lisson Gallery

 

開始日2017/04/29
終了日2017/07/02
エリア大阪府
時間10:00~17:00、金曜日・土曜日は20:00まで(入場は閉館の30分前まで)
休日月曜日
その他備考観覧料:一般900円(600円) 大学生500円(250円)
※( )内は20名以上の団体料金、高校生以下・18歳未満無料
※心身に障害のある方とその付添者1名無料(証明できるものをご提示願います)
※本料金で「ライアン・ガンダーによる所蔵作品展 ―かつてない素晴らしい物語」もご覧いただけます
開催場所国立国際美術館 The National Museum of Art Osaka
アクセス〒530-0005 大阪府大阪市北区中之島4-2-55 
TEL:06-6447-4680(代)
京阪中之島線 渡辺橋駅(2番出口)より南西へ徒歩約5分
淀屋橋駅(7番出口)より土佐堀川を越え西へ徒歩約15分
地下鉄四つ橋線 肥後橋駅(3番出口)より西へ徒歩約10分
御堂筋線 淀屋橋駅(7番出口)より土佐堀川を越え西へ徒歩約15分
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