ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展 16世紀ネーデルラントの至宝-ボスを超えて- Collection of Museum Boijmans Van Beuningen Bruegel’s “The Tower of Babel” and Great 16th Century Masters

ピーテル・ブリューゲル1世 〈バベルの塔 〉 1568年頃 油彩、板
Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands
ボイマンス美術館とは、正式にはボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館で、法律家のフランス・ボイマンス(Frans Jacob Otto Boijmans 1767-1847) が1841年に自身のコレクションをロッテルダムに寄付したものを基礎に、1958年にはロッテルダムのビジネスマン、ダニエル・ジョージ・フォン・ベーニンゲン(Daniël George van Beuningen 1877 –1955) のコレクションを加え、中世ヨーロッパ美術から近現代美術まで126,000点を所蔵しているオランダ有数の美術館です。
その中から、<バベルの塔>を含むピーテル・ブリューゲルやヒエロニムス・ボスなどの16世紀の傑作、計89点を展覧する、ボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館収蔵品展です。
アルント・ファン・ズヴォレ(推定) 〈四大ラテン教父(聖アウグスティヌス、
聖アンブロシウス、聖ヒエロニムス、聖グレゴリウス)〉 1480年
オーク材 Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands
会場はネーデルラント(フランドル)美術でもわたしたちにはあまり見慣れない彫刻から始まります。続く第2章は絵画ですが、中世らしい、聖書と聖人がテーマのどちらも宗教色の濃いものです。第3章にレンブラントが敬愛したルカス・ファン・レイデンの実在の人物の肖像画が登場し、第5章と第6章がヒエロニムス・ボス、第7章がピーテル・ブリューゲル、第8章が<バベルの塔>という構成です。
ヒエロニムス・ボス 〈聖クリストフォロス〉 1500年頃 油彩、板
Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands (Koenigs Collection)
ヒエロニムス・ボス(1450頃−1516)は初期ネーデルラントの画家で、わかっていないことも多いものの、王侯貴族や裕福な貿易商を顧客に持ち、生前からすでに名声があったようです。多くの作品を制作したものの、16世紀の宗教改革運動でのあおりを受けて紛失し、現在はわずか30点ほどの作品が残されているのみです。本展は確認されている油彩画約25点のうちの2点を見ることができます。〈聖クリストフォロス〉はキリストと聖人がテーマの当時の伝統に倣っていますが、巨人クリストフォロスが幼いキリストを背負って川を渡る場面には、廃墟からはい出そうとする怪物や、木にぶら下がる瓶が家になっていたり、河岸にいる隠者のまわりに恐ろしい細部がいくつも描かれていたりする奇妙な絵です。〈放浪者(行商人)〉となると、聖書も聖人も登場しません。背に籠を負う老いた行商人は背後にある建物から出て来たのも戻るのか、思案中なのか、円形の画面が覗き込むような、こちらを写すような、持ち物や細部に仄めかされるものの多い絵です。
ヒエロニムス・ボスに基づく 〈聖アントニウスの誘惑〉 1540年頃 油彩、板
Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands
続く章ではヒエロニムス・ボスの版画やその模倣と言う作品が並びます。数の多いエッチング作品では、魚に手足が生えたていたり、モンスターがいたり、登場人物(生物)がぎっしり詰め込まれた画面は、聖書によるテーマでも、思い切り想像力豊かな、気味の悪いファンタジックな世界です。ボスは日常生活の風景を初めて描いた画家の一人で、17世紀のオランダの著名な風俗画家へと続く原点であり、奇想の画家といえます。
ピーテル・ブリューゲル1世、彫版:フランス・ハイス
〈アントウェルペンのシント・ヨーリス門前のスケート滑り〉 1558年頃
エングレーヴィング Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands
その流れにあるブリューゲル(1526年頃—1569年)の版画が次の第7章に登場します。ピーテル・ブリューゲル1世というと〈バベルの塔〉のほか、大自然に囲まれ慎ましやかに生きる人々を描いた〈雪景色の狩人たち〉や食べたり踊ったり生き生きとした〈農民の婚宴〉は世界的に有名で、風景画、宗教画、寓意画、風俗画と多様なジャンルの油彩画があります。その片鱗をうかがえるのが銅版画です。〈聖アントニウスの誘惑〉や〈大きな魚は小さな魚を食う〉など多くの銅版画作品にはグロテスクだけれどユーモラスなモンスターや架空のおかしな生き物が登場し、ヒエロニムス・ボスの様式を継承しています。
ピーテル・ブリューゲル1世、彫版:ピーテル・ファン・デル・ヘイデン
〈大きな魚は小さな魚を食う〉 1557年 エングレーヴィング
Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands
最終章は〈バベルの塔〉です。思っていたよりとても小さいです。59.9×74.6cmの絵の中に約1400人が描かれているそうですが、目視ではほとんど見えません。東京藝術大学により約300%拡大した複製画で建設中の塔で働く一人一人がわかります。1568年頃のブリューゲル最晩年の作とのことですが、どのようにこのお米粒にみたないサイズが描かれたのか、驚異の細密画です。それも、塔で煉瓦を積み上げる人々、漆喰を運ぶ人々、港で荷下ろしをする人々、などなど実際の建設をふまえて圧倒的なボリュームと迫真性で描かれています。
旧約聖書で、全ての人々が一つの言葉を話していた頃、天にも届く高い塔を建てようとして神によって異なる言葉を話すようになり、コミュニケーションがとれなくなって塔建設は中断したという、バベルの塔。それを、誰も思いつかなかったスケールで展開したブリューゲルの想像力、構想力によって、バベルの塔のイメージが広がったのではないか、とさえ思われます。
数少ないヒエロニムス・ボスの油彩画2点が初めて、ブリューゲルの傑作〈バベルの塔〉は24年ぶりの来日です。ルネサンスの16世紀にイタリア美術とはまた違った発展をした、ヒエロニムス・ボスからブリューゲルへのネーデルラントの美術家たち。17世紀の精華へとつながる、16世紀フランドル絵画の魅惑あふれる展覧会です。
ヘンドリック・ホンディウス1世 〈ヒエロニムス・ボスの肖像(部分)〉 1610年
エングレーヴィング Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands
関連イベントにつきましては美術館ホームページをご覧ください。
開始日 | 2017/04/18 |
終了日 | 2017/07/02 |
エリア | 東京都 |
時間 | 9:30~17:30、毎週金曜日は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで) |
休日 | 月曜日 |
その他備考 | 一般 1,600円 / 大学生・専門学校生1,300円 / 高校生 800円 / 65歳以上 1,000円 ※中学生以下は無料 ※4月19日(水)、5月17日(水)、6月21日(水)はシルバーデーにより65歳以上の方は無料。当日は大変な混雑が予想されます。 ※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料 ※いずれも証明できるものをご持参ください |
開催場所 | 東京都美術館 |
アクセス | 〒110-0007 東京都台東区上野公園8-36 TEL 03-3823-6921(代表)/ FAX 03-3823-6920 JR上野駅「公園口」より徒歩7分 東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅「7番出口」より徒歩10分 京成線京成上野駅より徒歩10分 http://www.tobikan.jp/guide/index.html |
バベルの塔展のチケット下さい。
可能なら、2枚ほしいです❣️
上野ecuteでは、期間中『バベル盛り』メニューが皆様をお待ちしているそうですよ。
バベル盛りとは
①バベルの塔のような形
②大盛りじゃなくてもOK
③渦巻き状だと高ポインツ
だそうです。
たのしみですねー。各地の美術展で、展覧会に因んだメニューを出しているけど、これは出色!
しずかさん
チケットプレゼントのページに沿ってお申込お願いします。
https://to-co-to.com/wp/blog/req/2017/24635/
バベル盛り、スゴすぎます!
地元商店のパワー!!
会場出口のショップのバベル盛りはモンスターシール入りのキャラメルです。いいもの見ておいしもの食べたらシアワセです。
アルトン・フォン・ズボレのオーク材の像は素晴らしい。ヒエロニムス・ボスの油彩は16世紀の宗教画の描写技法がかなりレベルが高いことを感じる。また、ボスの死後、工房が模造品を作り続けざるを得ない事情もわかるが、オリジナル以外はあまり見る価値がない。肝心のブリューゲルの「バベルの塔」は装飾が大きすぎる感が否めない。ブリューゲル以前のバベルの塔と以後のそれが影響するさまはすごいと言わざるを得ない。
会場入るとすぐがアルトン・フォン・ズボレの四大ラテン教父の彫像で、否応なく中世の世界に引きずり込まれますね。それぞれむずかしい顔をして悩んでいる様子です。キリスト教会で最も権威ある4人の神学者だから、陽気にとはいかないでしょうが、あるいはこちらが仏像のおだやかな表情に慣れているせいか、苦しそうに見えます。宗教彫刻はチンプンカンプンなのですが、どのあたりが素晴らしいですか?
仏像と同系視すると、運慶、快慶の四天王と同じジャンルのと受け止めています。サイズ的に見上げるような威圧感もなく、ガラス玉の眼光もない。聖書の物語の翁の旅姿を厚板にレリーフしただけ。巡礼の移動のため携帯性を考慮したサイズ。皆、かぎ鼻の表情に16世紀のエッチングのシンプルな表現技法が使われていると思いました。時代背景から無理からなる彫りではないでしょうか。
バベルの塔は意外と小さな画面です。その中にどうやってこれほどの量を描き入れたんでしょうか。ということで、細部を見るなら単眼鏡やオペラグラスをお持ちになるといいですね。
展覧会に双眼鏡を持っていくのは初めてでした。でも、この展覧会は必ず必要になると助言を受けていたので、用意しました。
持っててよかった双眼鏡!ボスもブリューゲルも細部に宿る、怪奇な面白さに引き込まれました。怪奇なのにリアル。ありえないのにありそうに見えてくる。バベルの塔はやはり、その細密さが一番の驚きでした。
しずかさん、拡大鏡おすすめが役に立ってなによりです。
ブリューゲルの他の傑作〈雪景色の狩人たち〉や〈農民の婚宴〉とかなり違いますよね。〈バベルの塔〉では細部を描くことが重要だったのだと思いますが、なぜ画面を大きくしなかったのでしょうね。これほどの情報量を約60cm四方に入れなければならなかった理由は何だろうと考えています。
〈バベルの塔〉に行く前も見所満載です。たどり着いた時に疲れているのは必至。体力に自信のない方は観るものを絞っておくとか、全部よく味わいたい方は2回に分けて行くとか、もおすすめです。作品もバベル盛りですから〜(^^)。
ぜんぜん予習する時間がなく、最終日直前にかけこんだのですが、そんな人でも楽しめる仕掛けがバベル盛りでした。
順番に見ていくと、中世の宗教画がどのようにブリューゲルに発展し、花開いたのかというようすがよくわかりました。
まったく予備知識なしで行ったので、そこかしこに用意してある拡大説明パネルは非常に助かりました!
自分としては3D動画も参考になりました。絵が小さい&立ち止まって見ることができなかったので、大スクリーンで詳しく解説してもらえるのは助かったのです。
でも、雨の日だから空いているかとおもいきや、全然そんなことはなく、かなりの混雑でした。
入場以外でとくに混んでいたのは、ショップのレジ!
不思議なキャラクターグッズ(?)がたくさんあり、まるで水木しげる展みたい、とおかしかったです。
非常にワクワクと、楽しい展覧会でした。
そうなんです、〈バブルの塔〉以外にも見所満載です。とくにボスの版画にでてくる不思議なモンスターたち!たしかに水木しげるですねー。15日からBunkamuraで始まる「ベルギー 奇想の系譜」も楽しみです。