シャセリオー展 19世紀フランス・ロマン主義の異才 Théodore Chassériau Parfum Exotique

Alexis-Charles-Henri Cl駻al de Tocqueville (1805-1859), historien

《アレクシ・ド・トクヴィル》油彩・カンヴァス 131.5×98.5cm 1850年
ヴェルサイユ宮美術館 Photo©RMN-Grand Palais (Château de Versailles)/
Franck Raux/distributed by AMF

本作は『アメリカのデモクラシー』(1835年)をはじめとする著作で知られる
歴史家トクヴィルの最も知られた肖像です。トクヴィルとシャセリオーは家族
ぐるみのつきあいで、代表作となる会計検査院の壁画の注文を得た背景には彼の
尽力があったともいわれます。椅子の背の宝石のように輝く緑を差し色にしつつ、
抑えた色調で統一された画面のなかでモデルの知的な精神性が際立っています。

アングル門下の異端児テオドール・シャセリオー(Théodore Chassériau 1819ー1856)は、10代の初めに師に入門を許された早熟の天才ですが、ロマン主義の潮流の中でしだいにアングルの古典主義を離れ、独特のメランコリックな情熱と抒情を湛えた作品世界を作りあげていきました。アルジェリアを旅して彼の地の人々や風物を色彩豊かに描いたシャセリオーはオリエンタリスム(東方趣味)の画家にも数えられます。しかしカリブ海のスペインの旧植民地に生まれ、父親不在の寂しさや師との芸術的葛藤を抱えつつ独自の芸術の道を模索したこの画家自身が内面に異邦的(エキゾティック)なるものを持っていました。神話や聖書、シェイクスピア文学の一場面にせよ、東方主題にせよ、あるいは人々の肖像にせよ、いずれの作品にも漂う「エキゾティスム」こそがシャセリオー芸術の本質であり、観る者の心に響きます。

今日ではフランス・ロマン主義を代表する画家に数えられるシャセリオーですが、37歳で早逝したことや代表作の壁画が破壊されたこともあって正当な評価が遅れ、フランスでも回顧展の開催は1933年と2002年を数えるのみです。本展では、ルーヴル美術館所蔵品を中心に、絵画約40点、水彩・素描約30点、版画約10点、写真や資料などによってシャセリオーの画業全体を紹介するとともに、師や仲間、そしてこの画家から決定的な影響を受けたギュスターヴ・モローやピュヴィス・ド・シャヴァンヌらの作品約20点もあわせて展示し、ロマン主義から象徴主義への展開、そしてオリエンタリスムの系譜のなかでその芸術の意義を再考します。

今回の展覧会は、国立西洋美術館とルーヴル美術館が学術交流を通じて長年温めてきた企画です。2016年夏にル・コルビュジエの建築作品として世界遺産に登録された国立西洋美術館で、フランスでもその作品をまとめて見る機会が少ないシャセリオーの作品世界をご堪能ください。

《気絶したマゼッパを見つけるコサックの娘》油彩・板 46×37cm 1851年
ルーヴル美術館(ストラスブール美術館に寄託)
Photo©Musées de Strasbourg, Mathieu Bertola

ロマン主義の時代、ウクライナの英雄マゼッパは、不倫の恋の咎で
野生馬に縛りつけられて荒野に追放された姿を好んで描かれました。
バイロンの詩を着想源とした本作では、色鮮やかな衣装と黒い瞳の
コサックの娘を中心に描いています。メランコリックな夕空を背景
に立ちつくす巫女のような娘の無垢な姿は力尽きた人馬の姿と残酷
にして美しい対比を作り出し、世紀末象徴主義のモローの世界観を
予告しています。

《泉のほとりで眠るニンフ》油彩・カンヴァス 137×210cm 1850年
CNAP(アヴィニョン、カルヴェ美術館に寄託)©Domaine public/Cnap/
photo: Musée Calvet, Avignon, France

森の泉のかたわらで眠る裸婦。草上のニンフの図像の伝統を踏まえてはいますが、
ここでは生身の女性の裸体がクールベの裸婦を想起させる写実的な表現によって
描かれています。モデルは名高い高級娼婦アリス・オジーです。奔放で気性の激
しいこの美女に画家は翻弄された末、2年で関係は終わりまた。本展では、破局の
原因となったシャセリオーの初期の女性肖像画もあわせて展示します。

《自画像》油彩・カンヴァス 99×82cm 1835年 ルーヴル美術館
Photo ©RMN-Grand Palais (musée du Louvre)/Jean-Gilles Berizzi/distributed by AMF

アングルがローマへ旅立ち、パリに残された16歳のシャセリオーが手がけた自画像
です。すでに師の端正な様式を想起させる成熟した画風の一方で、顔の右半分を
覆う深い陰影がロマン主義的な内なる情熱をにじませています。エキゾチックな顔
立ちに複雑な思いがあったともいわれるシャセリオーは自画像も写真もほとんど残
しておらず、貴重な1枚です。

国立西洋美術館ホームページ

(展覧会公式ホームページより)

開始日2017/02/28
終了日2017/05/28
エリア東京都
時間午前 9 時 30 分~午後 5 時 30 分(金曜日は午後 8 時)
※入館は閉館の 30 分前まで
休日月曜日(ただし、3 月 20 日、3 月 27 日、5 月 1 日は開館)、3 月 21 日(火)
その他備考一般 1,600円、大学生 1,200円、 高校生 800円
開催場所国立西洋美術館
アクセス〒110-0007 東京都台東区上野公園7−7
お問合せハローダイヤル 03-5777-8600
JR上野駅下車(公園口出口)徒歩1分
京成電鉄京成上野駅下車 徒歩7分
東京メトロ銀座線、日比谷線上野駅下車
徒歩8分 http://www.nmwa.go.jp/jp/visit/map.html