フランス絵画の宝庫 ランス美術館展 ダヴィッド、ドラクロワ、ピサロ、ゴーギャン、フジタ・・・

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作者不明(フランス)《ルイ15世の娘、アデライード夫人の肖像(と思われる)》
18世紀
油彩、カンヴァス
35.5×30.5cm
Reims, Musée des Beaux-Arts ©MBA Reims 2015/Christian Devleeschauwer.

この肖像画、なんて可愛いんでしょう。まるでフランス人形のようです。わたしたちが「フランス」に抱く、ある種のイメージそのままではないでしょうか。

ちょっと耳慣れないランス美術館ですが、ランス市はパリの東北東約150kmに位置するシャンパーニュ地方の中心都市で、歴代のフランス王が戴冠式を行った大聖堂を擁する古都です。ノートル=ダム大聖堂は、世界遺産にも登録され、盛期ゴシックを代表する建築物です。

ランス市のもう一つの特徴は、シャンパーニュ(シャンパン)の唯一の醸造地であること。シャンパーニュ地方で栽培された3種類のブドウのみを原料とし、厳格に決められた製法で作られたシャンパーニュは、ランス市に経済的・文化的な発展をもたらしました。

ジャン=フランソワ・ミレー
《男の肖像》 1845年頃
油彩、カンヴァス 40.8×32.7cm
Reims, Musée des Beaux-Arts ©MBA Reims 2015/Christian Devleeschauwer.

ランス美術館は、フランス革命期の1790年代に期限を持ち、中世美術から現代美術まで幅広い所蔵品を有しますが、その中核はシャンパーニュで財を成した富豪、なかでもシャンパーニュ王として名高いポメリー社の社長、アンリ・ヴァニエから贈られた582点のコレクションです。

またランス美術館はヨーロッパで最も数多くのフジタ作品を所蔵しています。シャンパーニュのマム社の図案作成のためランスを訪れたフジタは、サン=レミ聖堂で啓示を受けます。1959年に洗礼を受けたフジタはノートル=ダム=ド=ラ=ペ(平和の聖母礼拝堂)を建立し、夫人と共にそこに眠っています。

カミーユ・ピサロ
《オペラ座通り、テアトル・フランセ広場》 1898年
油彩、カンヴァス
73.3×92.3cm 
Reims, Musée des Beaux-Arts
©MBA Reims 2015/Christian Devleeschauwer.

展示は「国王たちの時代」と題された17、18世紀の絵画で始まります。ルイ13世とルイ14世に時代は、貴族の好みが反映された肖像画が多く描かれ、それらは豪華な装身具を身につけています。冒頭の作品もここにあり、妹の《ゾフィー夫人(またの名を小さな王妃)の肖像》も展示されています。姉妹は仲がよく、ルイ15世の寵愛を受けていたデュ・バリー夫人が宮廷で力を持った際には他の妹も一緒に強く抵抗したそうです。ゾフィー夫人はとても豪華に描かれていますが、当時40代とすると、画家はかなりヨイショしていると思われるものの、フランス王制時代の華やかさが伝わってきます。

作者不明(フランス)《ルイ13世》 17世紀
油彩、カンヴァス
65×52.9cm
Reims, Musée des Beaux-Arts ©MBA Reims 2015/Christian Devleeschauwer.

次のセクションは1789年のフランス革命後の貴族階級の衰退と革命思想台頭の時代。ここではやはりダヴィッドの
《マラーの死》にひかれます。革命の指導者ジャン=ポール=マラーが、情報提供を口実に入浴中に近づいたコルデーに暗殺された場面です。オリジナルの《マラーの死》はベルギー王立美術館に所蔵され、本作は再制作品ですが、暗い背景に浮かび上がるマラーの体はたくましく、血の通う肌はほんの今まで生きていた、と思わせるドラマチックなシーンであることには変わりません。布を巻いた身体はキリストに重なり、重度の皮膚病であったにもかかわらず滑らかな肌は、少なからず美化して描かれていますが、それだけこの事件の大きさとマラーへの崇拝を物語るようです。

ジャック=ルイ・ダヴィッド(および工房)
《マラーの死》 1793年7月13日以降
油彩、カンヴァス
111.3×86.1cm 
Reims, Musée des Beaux-Arts
©MBA Reims 2015/Christian Devleeschauwer.

3つ目のセクションには産業革命を経た19世紀フランスの都市と自然が映し出されます。パリはナポレオン3世の大号令によって都市改造が進められ、道路網、上下水道や街灯の整備など近代的な都市に生まれ変わり、画家たちを引きつけます(6月4日まで練馬区立美術館で開催中の「19世紀パリ時間旅行」もご参照くださいhttps://to-co-to.com/wp/blog/req/2017/24293/)。また鉄道の発達により郊外へのアクセスが簡単になり、余暇を自然の中で過ごす人々はバルビゾン派や印象派、ナビ派の主題や技法にも影響してゆきます。

アルフレッド・シスレー
《カーディフの停泊地》 1897年
油彩、カンヴァス
54.1×65.4cm 
Reims, Musée des Beaux-Arts
©MBA Reims 2015/Christian Devleeschauwer.

最後のセクションには藤田嗣治の作品がまとめられています。ほとんどが1965年制作の宗教画です。翌1966年には自身の眠る礼拝堂のフレスコ画を描いています。波乱の人生を送ったレオナール・フジタの晩年の作品でとして興味深いものがあります。

17世紀の、まだフランスが芸術後進国であった頃から19世紀の後半〜20世紀にかけてヨーロッパ中から画家が集まる芸術都になるまでの、フランス絵画のエッセンスが見渡せる展覧会です。

展覧会WEBサイト

モーリス・ドニ
《魅せられた人々》 1907年
油彩、カンヴァス
80.2×120.6cm
Reims, Musée des Beaux-Arts ©MBA Reims 2015/Christian Devleeschauwer.

開始日2017/04/22
終了日2017/06/25
エリア東京都
時間午前10時から午後6時まで(入館は閉館の30分前まで)
休日月曜日休館
その他備考観覧料:一般1,300(1,100)円、大学・高校生800(650)円、シルバー<65歳以上>1,100円、中学生以下無料
※(  )内は20名以上の団体料金
※身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方とその付添いの 方1名は無料。被爆者健康手帳をお持ちの方はご本人のみ無料。
開催場所東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
アクセス〒160-8338 東京都新宿区西新宿1-26-1
損保ジャパン日本興亜本社ビル42階
TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル:美術館利用案内)
http://www.sjnk-museum.org/access