国立新美術館開館10周年・チェコ文化年事業「ミュシャ展」/Alfons Mucha

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《スラヴ叙事詩「原故郷のスラヴ民族」》1912年
プラハ市立美術館 ©Prague City Gallery

アルフォンス・ミュシャ(1860-1939)といえば、流麗な植物文様などに囲まれた美しい女性像や、華やかで洗練されたポスターでよく知られていますね。アール・ヌーヴォーを代表する芸術家の一人として、優美で装飾的な作風にみなさんもため息をついたことがあるのではないでしょうか。

今回の展覧会は、ミュシャのパリ時代のアール・ヌーヴォー作品のみならず、必見は晩年の約16年間を捧げた渾身の作品《スラヴ叙事詩》(1912-1928年)です。自身のルーツであるスラヴ民族のアイデンティティをテーマにした作品の集大成で、故郷チェコに50歳で戻ってから描かれた全20作です。

《スラヴ叙事詩「スラヴ式典礼の導入」》 1912年
プラハ市立美術館 ©Prague City Gallery

《スラヴ叙事詩》はスラブ民族の祖先(3-6世紀)が他民族の侵入者から身を隠す様子を描いた場面から、1861年にロシアの農奴制から解放されて人々が自由を獲得した場面までの全20作による歴史スペクタクルですが、なにしろ巨大です。展示室に入ってまず度肝を抜かれるその大きさはおよそ縦6メートル、横8メートル! 新美術館の高い天井から足下までいっぱいの大きさで、展示室の壁を埋め尽くします。また写実的に描かれ、わたしたちの知っているアール・ヌーヴォーのミュシャとは全く異なります。

大きな作品というのは遠くから観るために細部が描かれないことがありますが、《スラヴ叙事詩》は繊細なグラデーションで写実的に描かれ、近くによって観ても、離れて引いて観ても変わりません。まるで多数の作品が集まったように、大画面のどの一角を切り取っても作品になるほど、細部まで描き込まれています。20作の一点、一点はヨーロッパの広い範囲を実際に訪れて取材し、丹念な調査を行った上で描かれている、その情熱にも驚きます。

《スラヴ叙事詩「東ローマ皇帝として戴冠するセルビア皇帝ステファン・ドゥシャン」》
1923年 プラハ市立美術館 ©Prague City Gallery

チェコは独自の文化や言語、歴史を持ちつつもムハ(チェコ語の発音。ミュシャはフランス語の発音)の時代、オーストリア=ハンガリー帝国の一部であり、それに抵抗する汎スラブ主義運動が盛んでもありました。自由と独立を求める闘いを続ける中で、チェコの人々の自身を高め、スラヴ諸国の国民をひとつにし、チェコとスラブの苦難と栄光の歴史を世界に伝えること、それが原動力だったのでしょう。《スラヴ叙事詩》からは彼が故郷を愛し、人道主義者であったことがうかがえます。日本にあてはめれば、およそ弥生時代から幕末までとなります。その歴史を絵画20点にまとめられる画家がいるでしょうか。

《四つの花「ユリ」》1897年 堺市

《スラヴ叙事詩》がチェコ国外で全20点まとめて公開されるのは世界で初めてとのこと。貧しい環境に育ち、長い下積み生活を経た後、一夜にして華々しい成功を手に入れ、晩年は未来への希望を託した壮大なプロジェクトに挑んだ画家の人生を、これら幻の最高傑作の全貌を一挙にたどることのできるまたとない機会です。

さて「スラブ」と聞いてわたしがまず思い浮かぶのはスメタナのモルダウ「わが祖国」のあの哀愁のあるメロディー(ララ〜ラ〜ラ〜ラ、ラ〜ラ、ラ〜ラ〜♪)。イヤホンガイドもこの曲で幕が開きます。巨匠カラヤン指揮による演奏はこちらでどうぞ。

https://www.youtube.com/watch?v=2Sp4JyDNNr8

チェコは陸続きのヨーロッパのど真ん中。歴史にはどうも弱いのですが、作品の横に解説がついています。作品が大きいので読むのと全体を観るのとで作品に向かって行ったり来たりしてしまいますからイヤホンガイドは便利です。檀れいさんの透明感のある声も《スラヴ叙事詩》によくあっていると思います。

美術館ホームページ

展覧会ホームページ

アルフォンス・ミュシャ 1928年

開始日2017/03/08
終了日2017/06/05
エリア東京都
時間10:00-18:00 ※金曜日は20:00まで ※4月29日(土)-5月7日(日)は20:00まで ※入場は閉館の30分前まで
休日毎週火曜日休館 ただし、5月2日(火)は開館
その他備考観覧料: 1,600円(一般)、1,200円(大学生)、800円(高校生)
中学生以下および障害者手帳をご持参の方(付添の方1名を含む)は入場無料。
3月18日(土)、19日(日)、20日(月・祝)は高校生無料観覧日。(学生証の提示が必要)
開催場所国立新美術館 企画展示室2E
アクセス〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
03−5777−8600(ハローダイヤル)
東京メトロ千代田線 乃木坂駅 青山霊園方面改札5出口徒歩1分
東京メトロ日比谷線 六本木駅 4a出口から徒歩約5分
都営地下鉄大江戸線 六本木駅7出口から徒歩約4分
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