国立新美術館開館10周年 「草間彌生 わが永遠の魂」 YAYOI KUSAMA: My Eternal Soul

11ポートレート

@ YAYOI KUSAMA

「世界でもっとも認められている日本人美術家」と言えば、間違いなく草間彌生でしょう。一般に「美術家といえば?」とたずねても、草間彌生は上位にいるはずです。「現代美術」が日本に根付く前からニューヨークで運動を牽引した「前衛の女王」であり、オークションでは常に高額がつき、現在は、大胆な色使い、単純なモチーフ、ファッションブランドとのコラボレーションなどによる人気などから、美術ファンならずとも広く知られ、昨年は文化勲章も受章、これまでも国内外で大規模な個展が開催されています。

輝かしい経歴や、明るく、伸びやかで、親しみやすい作品とは裏腹に、草間は「死にものぐるいで闘ってきた」と言います。現在も昼はアトリエで、夜は病室に戻ってからも制作を続け、昼も夜も身体を損ねるほど芸術に明け暮れているそうです。初期から現在に至る全貌を総合的に紹介し、80年に近い創作活動を支える絶え間ない創造への意欲、芸術への情熱を知る展覧会です。

「わが永遠の魂」シリーズより《いまわしい戦争のあとでは幸福で
心が一杯になるばかり》2010 @ YAYOI KUSAMA

会場はまず圧巻の展示で始まります。巨大展示室の四方の壁に、2009年から取り組んでいる一辺2mの正方形の絵画シリーズ「わが永遠の魂」が隙間無くびっしりと展示され、その数は約130点。床に置かれた水玉の花の立体作品とともに、草間ワールドに包み込まれます。現在も制作中の同シリーズは500点を越えるそうで、単純計算でも6日に一点が完成するその数も驚異的ですが、1枚1枚にタイトルがあり、草間の念いがそれぞれに作品化されているところが、今も死にものぐるいで闘っていることを物語っているようです。そのエネルギーと作品個々の力強さに、ここで目に入るだけでも市場価値に置き換えると百億円を下らないことに、妙に納得してしまいます。

「わが永遠の魂」シリーズより《しのびがたい愛の行方》2014 @ YAYOI KUSAMA

この巨大展示室を取り囲んで、初期から現在に至る創作活動をたどる構成となっています。幼少期に強迫性障害を患い、その恐怖から逃れるために絵を描くようになったのが芸術家・草間彌生のはじまりですが、自伝にも掲載されている10歳の時の水玉模様の母のポートレイトや、京都市立美術工芸学校で学んだ日本画など、現在へのつながりが見えたり、または全く想像できない作品もあり、興味深い展示です。

自伝によれば、葛藤を吐きだすように一人ニューヨークへ渡り、苦労をしながらも、やがて「前衛の女王」となって屋外でのヌード・デモや乱交をテーマにした過激なパフォーマンスを実行し、男女の性差の否定や反戦運動をリードします。展示では、網目のネット・ペインティング作品、自分の名前やエアメイルのステッカーが反復するコラージュ作品、水玉の背景に水玉の自分が融け合う《自己消滅》、男根をかたどったというソフト・スカラプチュアにびっしりと覆われた代表作などは、平面、立体を問わず反復、集積、増殖、埋め尽くしという点で共通します。この他、ニューヨーク時代のパフォーマンス映像など、時代の寵児として最先端を走り抜けていたころの作品は草間彌生を知る上で必見です。特に、細江英公による写真のスライドショー《ウオーキングピース》は鮮やかさを保っていて、今そこに50年前の草間彌生がいるようです。

しかし72年、パートナーのジョゼフ・コーネルが死去し、体調を崩した草間は73年に帰国後は精神病院への入退院を繰り返しながら、小説、詩、自伝にも取り組むようになります。展示では、屋外に高さ4.5mの黄色の《南瓜》、室内には白地に赤い水玉の壁面とマネキンが同化する《水玉脅迫》に続き、《生命の輝きに満ちて》では四方が鏡で覆われ無限に続くかのような空間に、無数の小さな電球が刻々と色を変え、美しさに息を飲むと同時に、その無限の空間に自己が埋没し、自己と世界の境界線が曖昧になるような感覚を体験できます。

銀色のソフトスカラプチャーに覆われた化粧台《ドレッシング・テーブル》やダイニングテーブルの《最後の晩餐》と《太陽の雄しべ》といったインスタレーション、あるいは根っこがからまりあうような黄と黒2色の絵画《黄樹》とそれをインテリアにした《黄樹リビングルーム》と草間ワールドは続きます。文学作品から視覚芸術、それも平面、立体、インスタレーション、パブリックアート、インテリア、ファッション、と多彩な才能による作品の広がりと展開が、「草間彌生」であると言えるでしょう。

「わが永遠の魂」シリーズより《行こう、空の彼方へ》2014
@ YAYOI KUSAMA

これだけでも草間ワールドの魅力は余すところなく伝わると思いますが、さらに!:
(1)   音声ガイドには本人による詩の朗読や歌も入っています。文語調で聞きづらいところもありますが、リアルな草間彌生に近づく一つと言えます。

(2)   展示室外の展示
・六本木側入り口の《木に登った水玉2017》と展示室から見える黄色の《南瓜》以外にも、乃木坂よりに《ナルシスの庭》と、展示室出口を出た近くに「わが永遠の魂」制作風景のビデオと《オブリタレーションルーム》が設置されています。

お見逃しなく!

展覧会公式サイト 「草間彌生 わが永遠の魂」

「わが永遠の魂」シリーズより《原爆の足跡》2016 @ YAYOI KUSAMA

<草間彌生略歴>(公式サイトより抜粋)
1929年
3月22日、長野県松本市に種苗問屋の末娘として生まれ、10歳の頃より水玉と網目模様をモティーフに絵を描き始める
1955年
アメリカの画家、ジョージア・オキーフに手紙を書き、返事をもらう
1957年
渡米、シアトルでアメリカでの初個展開催。翌年ニューヨークに移る
1959年
ニューヨークのブラタ画廊で初個展、5点のネット・ペインティングを発表
1960年
西ドイツのレヴァークーゼン市立美術館で、ヨーロッパで初めて作品が紹介される
1962年
性や食をテーマにしたソフト・スカルプチュアを初めて発表
1966年
個展「草間のピープ・ショー」で電飾と鏡を使ったインスタレーションを発表。第33回ヴェネツィア・ビエンナーレで《ナルシスの庭》を展示
1967年
ハプニングを頻繁に行う
1968年
自作自演の映画「草間の自己消滅」が第4回ベルギー国際短編映画祭に入賞、 そのほかの映画祭でも受賞
1969年
ニューヨークにファッション・ブティックをオープン
1973年
帰国。活動拠点を東京に移す
1983年
小説『クリストファー男娼窟』、第10回野性時代新人文学賞を受賞
1993年
第45回ヴェネツィア・ビエンナーレで日本代表として日本館初の個展を開催
2000年
第50回芸術選奨文部大臣賞、平成12年度外務大臣表彰
2001年
第71回朝日賞受賞、「横浜トリエンナーレ2001」に出品
2003年
フランス芸術文化勲章オフィシェ受勲、長野県知事表彰(学術芸術文化功労賞)
2004年
個展「クサマトリックス」(東京・森美術館、札幌・芸術の森美術館)、 個展「草間彌生 永遠の現在」(東京国立近代美術館など国内5都市)
2006年
旭日小綬章を受章。ライフタイム・アチーブメント賞(芸術部門)、 第18回高松宮殿下記念世界文化賞(絵画部門)を受賞
2009年
「わが永遠の魂」シリーズの制作スタート。文化功労者に選出
2012年
ルイ・ヴィトンとのコラボレーション・アイテム発売
2014年
『アート・ニュースペーパー』紙「世界で最も人気のあるアーティスト」に選出
2016年
『タイム』誌「世界で最も影響力のある100人」に選出。文化勲章受章

《生命の輝きに満ちて》2011
Courtesy of Ota Fine Arts, Tokyo/Singapore, Victoria Miro Gallery, London,
David Zwirner, New York @ YAYOI KUSAMA

 

開始日2017/02/22
終了日2017/05/22
エリア東京都
時間10:00~18:00 金曜日は20:00まで
※4月29日(土)~5月7日(日)は毎日20:00まで開館
※入場は閉館の30分前まで
休日毎週火曜日休館 ただし、5月2日(火)は開館
その他備考観覧料:一般1600円、大学生1200円)、高校生800円、中学生以下無料。
■3月28日は「キッズデー」開催:
中学生以下(※観覧料無料)のお子様と保護者の方のみご観覧いただくことができる特別な機会として、休館日に臨時開館します。
日時:2017年3月28日(火)10:00~16:30(入場は16:00まで)
対象:中学生以下のお子様および高校生以上の保護者。
※未就学児は保護者同伴での入場をお願いいたします。
※中学生以下は無料。高校生以上の保護者の方および付添の方は本展観覧券が必要です(半券不可)。
※障害者手帳をご持参の方(付添の方1名を含む)は無料。
※3月28日(火)は休館日につき館内のレストラン、カフェの営業はありません。
※当日券の販売あり。
※事前申込不要。
開催場所国立新美術館 企画展示室1E
アクセス〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
03−5777−8600(ハローダイヤル)
東京メトロ千代田線 乃木坂駅 青山霊園方面改札5出口徒歩1分
東京メトロ日比谷線 六本木駅 4a出口から徒歩約5分
都営地下鉄大江戸線 六本木駅7出口から徒歩約4分
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