特別展 「春日大社 千年の至宝」

春日大社中門 春日大社蔵 撮影:桑原英文
春日大社では「式年造替」と呼ばれる約20年に一度の社殿建て替え修復を平成28年(2016)に終え、その造替60回目の節目に春日大社の社外では滅多に拝観することのかなわない貴重な古神宝の数々(国宝、重要文化財を含む)とともに、春日の神々への祈りが込められた選りすぐりの名品を東京国立博物館平成館で展観する。
テーマを6つに分け、時代の流れ、皇族貴族武士に崇め奉れた春日大社、その祈り等が展覧された古神宝と共に感じられるようになっている。
1 神鹿の社 - 春日大社の草創と神鹿の美術
2.平安の正倉院 - 春日大社の古神宝
3.春日信仰をめぐる美的世界 - 春日の神々への祈りのかたち
4.奉納された武具 - 祈願の造形
5.神々に捧げる芸能 - 春日若宮おん祭りの盛儀
6.春日大社の式年造替
鹿島立神影図 南北朝~室町時代・14~15世紀 春日大社蔵 通期展示
春日大社第一殿の祭神、武甕槌命(たけみかづちのみこと)は常陸の国 鹿島から春日大社をいだく御蓋山(みかさやま)に降り立ったのが始めと言われ、「鹿島立神影図」がそれを表している。鹿島をたつ際に鹿を馬に見立てたと言われるところから鹿に乗っている姿が多く、以来 春日大社では神鹿(しんろく)として神聖視している。
展示物に付く解説文の左上に鹿の絵が挿入されていたら、その品のどこかに鹿がいるという面白い試みがされている。「ウォーリーを探せ」的な遊びである。
国宝 金地螺鈿毛抜形太刀 平安時代・12世紀 春日大社蔵
展示期間:1/17(火)~2/19(日)
奈良時代の最高の文物は正倉院にあり、平安時代最高の工芸品は春日大社にのみ残っているものが多数あるので「平安の正倉院」と呼ばれ、その中で金地螺鈿毛抜形太刀はその細工の見事さは出色である。
平安時代、藤原氏は春日大社を氏神とし、代々度重なる参詣をし、また天皇の行幸も数多くあり、鎌倉時代に至っては武家にもその信仰は広まり、あまたの曼荼羅図「春日宮曼荼羅」や絵巻「春日権現験記絵」、鎌倉時代の甲冑「国宝 赤糸威大鎧」も納められ、信仰の深さとその時代の工芸技術がこの展覧でわかる、見事な品々である。
春日権現験記絵(春日本)巻十二 江戸時代・文化4年(1807) 春日大社蔵
通期展示(場面替有)
国宝 赤糸威大鎧(梅鶯飾) 鎌倉時代・13世紀 春日大社蔵
展示期間 1/17(火)~2/19(日)
国宝 赤糸威大鎧(竹虎雀飾) 鎌倉~南北朝時代・13〜14世紀 春日大社蔵
展示期間 2/14(火)~3/12(日)
造替によって第一殿から第四殿をつなぐ「御間塀」といわれる塀が撤下(てっか、神様に捧げたものをお下げすること)され、そこに描かれた絵が絵馬の源流と呼ばれている。また獅子、狛犬達のなかには鎌倉時代からの物もありこれらも加えて興味深い。
獅子・狛犬 鎌倉時代・13世紀 春日大社蔵
その他にあまり他では見ない舎利容器「獅子座火焔宝珠形舎利容器」やその舎利をいれる厨子「春日神鹿舎利厨子」、太鼓、舞楽面「納曽利」、太平楽装束、能衣装、能面と枚挙にいとまがないほどの数々の名品がある。
重要文化財 舞楽面 納曽利 平安時代・12世紀 春日大社蔵 通期展示
春日大社というと鹿と朱塗りの神殿くらいしかイメージが湧かなかったが、今回の展示は1300年の歴史をまざまざと見せつけられた。その長い間ずっと神々に捧げた芸能 − 春日若宮おん祭りこそが日本の古典芸能の始まりである。特に能はまさしくこの奈良が発祥の地であり、安土桃山時代からの面(能ではおもてと呼ぶ)や装束が損傷することなくあるのは嬉しいことである。反面、せめて面だけは現実の演能で使われないかと切望もする。能では面や笛、鼓、装束等を「お道具」と言い各家に代々伝わっている古い貴重なものもあえて使っている。飾ることはない、お道具だから。
日本は自然や山に対して見えざる“神”を感じ敬ってきた民族であることを、この奈良の春日大社展で再確認し、心安らぐ思いである。
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開始日 | 2017/01/17 |
終了日 | 2017/03/12 |
エリア | 東京都 |
時間 | 開催時間9:30~17:00 (入館は閉館の30分前まで) |
休日 | 月曜日 |
その他備考 | 観覧料 一般1600円、大学生1200円、高校生900円、中学生以下無料 * 障がい者とその介護者一名は無料です。入館の際に障がい者手帳などをご提示ください。 |
開催場所 | 東京国立博物館 平成館 |
アクセス | 〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9 ☎ 03-5777-8600(ハローダイヤル) JR上野駅公園口・鶯谷駅南口より徒歩10分 東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、千代田線根津駅、京成電鉄京成上野駅より徒歩15分 |