ゴッホとゴーギャン展 Van Gogh and Gauguin Reality and Imagination

12.肘掛け椅子のひまわり_ポール・ゴーギャンs

ポール・ゴーギャン 《肘掛け椅子のひまわり》 1901年
E.G. ビュールレ・コレクション財団 ©Foundation E. G. Bührle Collection, Zurich

フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)とポール・ゴーギャン(1848-1903)。19世紀末に活躍し、今なお世界中の人々に愛されてやまないこの二人の画家に焦点を当てた、日本初となる展覧会が開催されています。

オランダの牧師の家庭に育ったファン・ゴッホと南米ペルーで幼年期を過ごしたゴーギャンは、生い立ちや性格だけではなく、絵画表現も大きく異なります。ファン・ゴッホは現実の世界から着想を得て、力強い筆触と鮮やかな色彩による作品を生み出し、ゴーギャンは、装飾的な線と色面を用いて、目には見えない世界をも絵画に表現しようとしました。1888年、彼らは南仏アルルで約2カ月の共同生活を送ります。ともに制作し、時には激しい議論を重ねながら刺激を与え合いました。

本展は、ファン・ゴッホとゴーギャンの初期から晩年にわたる油彩画約50点を含む約60点が展示されています。二人の画家の特徴を浮き彫りにし、その関係性と芸術性に光を当てます。

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フィンセント・ファン・ゴッホ《古い教会の塔、ニューネン(「農民の墓地」)》
1885年5-6月 ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
©Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)

1883年、オランダ北ブラバント州ニューネンに住む両親のもとへ戻ったファン・ゴッホは、アトリエを得て本格的に油彩画に取り組んだ。この時期の代表作といえる本作には、廃墟となった教会の塔とニューネンの農民が眠る墓地が描かれる。ファン・ゴッホ家の住む牧師館の近くに見られた現実の風景であるが、何世紀も変わらぬ農民の生と死の営みと、信仰のはかなさの対照が象徴的に表わされている。

ポール・ゴーギャン《マルティニク島の風景》1887年6-11月 油彩、カンヴァス
スコットランド国立美術館 ©Scottish National Gallery

画面の左にはパパイアの樹、海の向こうには火山がそびえる。入念に構成された構図に、鮮やかな色彩が熱帯の空気を伝えてくれる。しかし、画家は熱帯の風景を忠実に描いたわけではない。手つかずの自然やプリミティヴな生活を求めて辿り着いた風景を描く際、この地点から見えたであろう町の姿は省かれている。帰国後、こうしたマルティニク島の作品をファン・ゴッホは「大変詩的だ」と高く評価し、そのうちの1点と自身の静物画を交換した。

フィンセント・ファン・ゴッホ《収穫》1888年6月、アルル 油彩、カンヴァス
ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
©Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)

ファン・ゴッホは、種まきから刈り入れまで季節の移ろいとともに変化する小麦の栽培に魅了され、重要な主題として繰り返し描いた。その白眉が夏の収穫を描いた本作であり、2点の大きなスケッチと対作品を制作していることからも、画家の野心的な作品であったことが分かる。収穫のさまざまな段階がひとつの画面に描きこまれる。小麦の実りや屋根の黄やオレンジに、空や尾根、荷車の青が対比され美しい調和が生み出されている。

ポール・ゴーギャン《ブドウの収穫、人間の悲惨》1888年11月 油彩、ジュート
オードロップゴー美術館 ©Ordrupgaard, Copenhagen Photo: Anders Sune Berg

ファン・ゴッホが熱烈に称賛した、ゴーギャンのアルル滞在期の代表作。アルルで見出したブドウの収穫の場面に、ブルターニュの女性、前景にはかつてゴーギャンが目にしたペルーのミイラのポーズをした悲嘆にくれる女性が描かれる。現実にはないこの光景は、まさにゴーギャンの記憶と想像から生み出された世界である。こうしたゴーギャンの作品は、ファン・ゴッホが想像に基づく制作を試みる大きな契機となった。

ポール・ゴーギャン《アルルの洗濯女》1888年11月 油彩、カンヴァス
ビルバオ美術館 ©Bilboko Arte Ederren Museoa-Museo de Bellas Artes de Bilbao

二人の暮らした「黄色い家」からほど近い場所で描かれた作品。細部は描かれず色面を用いた抽象的な画面で、洗濯する女性を俯瞰するように高い視点が採用されている。日々の生活に取材した情景であるが、詩的に美しい世界へと高められ、夢の中のような印象を与える。洗濯する女性を見つめるような後ろの人物は、少し年を取った彼女自身のようにも見える。画面右には植物らしいものが描かれるがはっきりしない。前景には、ゴーギャンの求めた素朴さ、農村らしさを強調するようにヤギが描かれている。

フィンセント・ファン・ゴッホ《タマネギの皿のある静物》1889年1月初め、アルル
油彩、カンヴァス クレラー=ミュラー美術館 ©Kröller-Müller Museum, Otterlo

本作はファン・ゴッホが退院後すぐに取り組んだ作品で、パイプ、タバコ、コーヒー、アブサンの瓶などファン・ゴッホが自身に許していた数少ない嗜好品や、健康に関する書物、頼りにしているテオを想起させる手紙、それに封をするための蝋と蝋燭などが描かれている。蝋燭は、《ゴーギャンの椅子》にも描かれている。このときの画家自身と関連の強い日用品は、それぞれが象徴的な意味をもち、ある意味でファン・ゴッホの自画像とも見なし得る作品となっている。

フィンセント・ファン・ゴッホ《ジョゼフ・ルーランの肖像》1889年2-3月、アルル
油彩、カンヴァス クレラー=ミュラー美術館 ©Kröller-Müller Museum, Otterlo

1888年7月から翌年4月にかけて、ファン・ゴッホは6点ものジョゼフ・ルーランの肖像を描いた。画家はモデルについて「頭はソクラテスに似て、鼻はないといってよいほどで、額は広くはげ頭、小さな灰色の目で、赤々とふっくらした頬、ごま塩の大きなあご髭、大きな耳」をもつ人物だと妹に書き送っている。自身が以前描いた肖像画をもとにして制作された本作には、写実的な描写を離れ、より自由な表現が見られる。背景には、ポピー、ヤグルマギク、デイジーなど夏の花々が装飾的に配されている。

ポール・ゴーギャン《タヒチの3人》1899年 油彩、カンヴァス
スコットランド国立美術館 ©Scottish National Gallery

熱帯らしい鮮やかな背景に、二人の女性と後ろ姿の男性が描かれる。本作が描かれた二度目となるタヒチ滞在中、この二人の女性はよくゴーギャンのモデルをつとめた。左の女性は左手に青いりんごを持つことから「悪」を、右の女性は花を差し出していることから「善」を象徴していると考えられる。タヒチで制作されたゴーギャンの作品には、現地の文化とこうした西洋文化など異文化を融合させた構成が認められる。

ポール・ゴーギャン《自画像》1885年前半 油彩、カンヴァス
キンベル美術館 ©Kimbell Art Museum, Fort Worth, Texas

ファン・ゴッホと同じく、ゴーギャンも多くの自画像を描いた。本作は、妻の実家のあるコペンハーゲンで描かれた36歳のときの自画像。株式仲買人を辞め画家の道を選んだゴーギャンは、妻やその家族に理解されることなく肩身の狭い環境にいた。しかしゴーギャンの意志は固く、「私はたったひとつのことしかできない。それが絵を描くことなのだ」と述べている。パリで吸収した印象派の表現を用い、光の射す方を見つめ絵筆をとる姿で描かれた本作からは画家の強い決意が感じられる。

ファン・ゴッホの自画像について
ファン・ゴッホは1886年2月下旬にパリに向かうまで自画像を全く描いていません。パリに滞在した2年間に30点近くもの自画像を描いたことを考えるとこれは特筆すべき点です。その理由は、パリに住む以前のファン・ゴッホが自画像を描くために適当なサイズの鏡を持っていなかったためだと言われています。パリで弟テオと住んで初めて、自画像を描くことができるサイズの鏡を入手しました。

また、ファン・ゴッホはモデルを雇うお金を節約する必要もあり、多くの自画像を制作しました。今回、パリで描かれた3点の自画像を展示しますが、それぞれ服装、表現方法、色調などが違う作品となっており、ファン・ゴッホが自画像を描く際にさまざまな表現を試みていたことがよく分かります。

フィンセント・ファン・ゴッホ 《自画像》 1887年4-6月
クレラー=ミュラー美術館 ©Kröller-Müller Museum, Otterlo

作品リスト

<イベント>
最新情報につきましては展覧会公式ホームページをご覧ください。

○記念講演会
本展監修者をはじめ、研究者らがそれぞれのテーマで講演します。

第1回
日時2016年10月8日(土) 14:00~15:30 ―終了しました
テーマ「ゴッホとゴーギャン―現実と想像」(仮)
講師シラール・ファン・ヒューフテン(本展監修者・美術史家)
会場東京都美術館 講堂(交流棟 ロビー階/定員225名)

第2回
日時2016年11月12日(土) 14:00~15:30 ―終了しました
テーマ「ゴッホとゴーギャン―イメージの反復と転用」
講師小泉順也(一橋大学大学院准教授)
会場東京都美術館 講堂(交流棟 ロビー階/定員225名)

※聴講無料。ただし本展観覧券(半券可)が必要です。
※当日13:00より講堂前で整理券を配布し、定員になり次第、受付を終了。開場は13:30です。

○イブニング・レクチャー
本展担当の学芸員による展覧会の見どころを解説します。

日時2016年11月18日(金) 18:30~19:00 ―終了しました
講師大橋菜都子(東京都美術館 学芸員)
会場東京都美術館 講堂(交流棟 ロビー階/定員225名)

日時2016年12月2日(金) 18:30~19:00
講師大橋菜都子(東京都美術館 学芸員)
会場東京都美術館 講堂(交流棟 ロビー階/定員225名)

※聴講無料。ただし本展観覧券(半券可)が必要です。
※当日、各開始時間の20分前より開場し、定員になり次第、受付を終了。

(展覧会特設サイトより)

開始日2016/10/8
終了日2016/12/18
エリア東京都
時間9:30~17:30
(金曜日は20:00まで)
※入室は閉室の30分前まで
休日月曜日
※ ただし10月10日(月・祝)は開室
その他備考観覧料(税込) 当日券/団体券: 一般 1,600円/1,300円 大学生・専門学校生 1,300円/1,100円 高校生 800円/600円 65歳以上 1,000円/800円
※団体割引の対象は20名以上
※中学生以下は無料
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料
※毎月第3土・翌日曜日は家族ふれあいの日により、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住、2名まで)は一般当日料金の半額
※いずれも証明できるものをご持参ください
開催場所東京都美術館 企画展示室
アクセス〒110-0007 東京都台東区上野公園8-36
お問い合わせ 03-5777-8600
※番号をよくご確認のうえ、お掛け間違いにご注意ください。
・JR上野駅「公園口」より徒歩7分
・東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅「7番出口」より徒歩10分
・京成電鉄京成上野駅より徒歩10分
※駐車場はございません。
http://www.tobikan.jp/guide/index.html