BODY/PLAY/POLITICS カラダが語りだす、世界の隠された物語

⑦ウダム・チャン・グエン_ヘビの尻尾より(部分)

ウダム・チャン・グエン《ヘビの尻尾》2015 年、ビデオ・インスタレーション(3面)
©UuDam Tran Nguyen. Courtesy of the artist.

どうも未だこの展覧会タイトルを消化できていません。BODYは生物の身体だけでなく、入れ物や楽器の本体、またその中心部、見えないものでも、味わいの濃度、強さなど、実体のあるなしに関わらず、しっかりと凝縮した中心的なまとまりを意味する、そういうことかと思うとサブタイトルには「カラダ」という身体を示す言葉にリードされています。PLAYとPOLITICSもBODYと同様、広い意味を持つ言葉なので、どうもピンポイントがされていないムズかゆさがあります。

インカ・ショニバレ MBE《さようなら、過ぎ去った日々よ》2011 年、
シングル・チャンネル・ビデオ Courtesy the artist and James Cohan Gallery, New York

最初の部屋のインカ・ショニバレ MBEの映像作品《さようなら、過ぎ去った日々よ》は美しいです。ヨーロッパの豪壮な邸宅で、アフリカ風の更紗でつくられた貴族時代風のドレスを来た黒人の女性がアリアを歌います。グローバルな2010年代の今、あってもおかしくない構図なのに、この女性がこの場に入ることだけで映像の図柄は斬新、少なくとも見た事が無いことに気づきます。

イー・イラン《ポンティアナックを思いながら:曇り空でも私の心は晴れ模様》2016年
ビデオ・インスタレーション(3面) ©Yee I-Lann

イー・イランの映像作品《ポンティアナックを思いながら:曇り空でも私の心は晴れ模様》では、マレーシアの20~30代の女子がガールズトークをしています。長い黒髪を顔の前にたらして顔を隠しているのは、女性の幽霊(怪物)を模しているのだそうです。でもはやはりタブーもあるのではないでしょうか、特に女性には。話していることはたわいのないおしゃべりから結婚観やパートナーのこと、出産についての考えなど、ふーん、マレーシアではそうなんだ、とか宗教が違っても同じ悩みがあるのね〜、とか思います。現代の女性なら誰でもその話の輪の中に入ることができそうです。

ウダム・チャン・グエン インスタレーション 展示風景

ウダム・チャン・グエンは今年のあいちトリエンナーレの名古屋・岡崎・豊橋全会場に映像作品が出品されていたことでも記憶に新しい作家です。レインボーのコートを着たカラフルなオートバイ隊が軽快なワルツの曲に乗って走る、ベトナムの道路がオートバイに占領されているのを揶揄するような作品です。本展ではビニールのチューブがまるで身体中に張り巡らされた血管のようにベトナムの街を駆け巡る映像《ヘビの尻尾》と、ベトナムでシェアNo.1 のホンダのバイクと膨らませたビニールなどからなるインスタレーションが展示されています。

石川竜一《浦添、グッピーの手》2016年、インクジェット・プリント ©Ryuichi Ishikawa

石川竜一も今年のあざみ野フォトアニュアルと六本木クロッシングと立て続けに出品していますが、本展の《小さいおじさん》と《グッピー》がすばらしい。被写体との関係があって成立した作品で、ストリートのポートレイトを超えています。また直筆で壁面に書かれたテキストも重要で、作家の人となりを示しているのでぜひ読んでください。

田村友一郎《裏切りの海》2016年 展示風景

田村友一郎は、近代ボディビルディング、三島由紀夫の小説、バラバラ殺人事件、肉体を強化するミルクの工場、GHQによる接収など、横浜にまつわる様々な出来事を、社交場であるビリヤード台や映像によって繋いでいます。綿密なリサーチに基づき、かつフィクションもあり、一見バラバラなものがカラダというキーワードでつながり、今までに無い横浜を作家独自の切り口で見せています。

他に今年のさいたまトリエンナーレにも参加しているアピチャッポン・ウィーラセタクンを加えて計6作家の作品が、ゆったりと展示されています。どう思われるか、じっくり味わってください。

(以下、美術館ホームページより抜粋)

本展で紹介するのは、人間の身体や集団としての行動、超自然的な存在など、歴史を通じて作り上げられた身体が生み出すイメージの数々をモチーフに、それぞれの角度から作品化していく現代の作家たちの作品です。

わたしたちはしばしば、ある身体に対して「健康/不健康」とか、「美しい/醜い」といった感覚を抱いたり、特定の行動の中に「典型的な日本人」といった形容で何かの集団を代表するイメージを思い描くことがあります。あるいはほんの少しその印象が食い違うだけで、とても奇妙な感覚を覚え、全く異なる意味を感じ取ってしまうこともあるでしょう。

肌の色、民族や宗教、性差や生活のスタイルまで、さまざまな違いのある人々が同居する世界では、個々の身体が持つ色や形状、振る舞いなど、本来特定の意味などなかったはずのものにも長い時間の中で価値の差別化が生じ、不幸な歴史へと繋がったことも少なくありません。

展示は、アフリカ風の更紗を用いた作品で知られるイギリスの作家インカ・ショニバレ MBE、マレーシアの女性作家イー・イラン、映画監督としても知られるタイのアピチャッポン・ウィーラセタクン、ベトナムを拠点に活躍するウダム・チャン・グエン、日本からは注目の作家、石川竜一と田村友一郎の6作家によるインスタレーションをはじめ、会期中のライブ・パフォーマンスや、ダンスのワークショップなどで構成されます。また、「横浜ダンスコレクション2017」とも連携し、美術とダンスの両面から身体が生み出す表現を掘り下げます。

ヨーロッパとアフリカ、東南アジア、そして日本。本展出品の6作家の作品には、詩的に、時にユーモア溢れる表現で、身体を通じて立ち現れる歴史と向き合い、未来へ向けて新たな意味を見出していこうとする姿が見えてくることでしょう。

BODY/PLAY/POLITICS presents contemporary works of art that delve from a variety of angles into images that have been generated throughout history by “the body,” which encompasses the individual human body, our collective actions, and spiritual presences. There is a tendency in our society to label specific bodies as healthy or unhealthy, beautiful or ugly, and to envision certain modes of behavior as representative of the entire group, which we classify such as “typically Japanese.” In other cases, minor deviations from norms or expectations can elicit strange feelings in observers and cause entirely different meanings to be perceived.

In a world cohabited by people with all sorts of skin colors, ethnicities, religions, gender norms and lifestyles, where the colors, forms, or behaviors of individual bodies are not inherently vested with specific meanings, over the course of millennia many value judgments and hierarchies have arisen in societies and are all too often linked to tragedies of history.

The six artists featured in this exhibition are from Europe/ Africa, Southeast Asia, and Japan. Their works express, in poetic and sometimes humor-inflected ways, aspects of history that manifest themselves through the body, looking toward the future and bringing the shapes of new ideas and meanings into view.

Artists:Yinka Shonibare MBE, Yee I-Lann, Apichatpong Weerasethakul, UuDam Tran Nguyen, Ishikawa Ryuichi, Tamura Yuichiro
*display order

イベント情報Events

展覧会特設サイトAbout the Exhibition

出品作家・作品Artists and Works

開始日2016/10/1
終了日2016/12/14
エリア神奈川県
時間10:00~18:00(ただし、10/28は20時30分まで開館)
*入館は閉館の30分前まで
休日木曜日、11/4(ただし11月3日[木・祝]は無料開館)
その他備考入場料 一般=1,500円、 大学・高校生=1,000円、 中学生=600円
*20人以上の団体は100円引き
*小学生以下は無料
*65歳以上の方は1,400円(要証明書、美術館券売所でのみ対応)
*毎週土曜日は、高校生以下無料(要生徒手帳、学生証)
*障がい者手帳をお持ちの方と介護の方(1名)は無料
開催場所横浜美術館
アクセス神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
問い合わせ先 tel. 045-221-0300
・みなとみらい線(東急東横線直通)「みなとみらい」駅〈3番出口〉から、マークイズみなとみらい〈グランドガレリア〉経由徒歩3分、または〈マークイズ連絡口〉(10時~)から徒歩5分。
・JR(京浜東北・根岸線)・横浜市営地下鉄「桜木町」駅から〈動く歩道〉を利用、徒歩10分。
http://yokohama.art.museum/visit/access.html