ダリ展 DALI

2.《奇妙なものたち》s

サルバドール・ダリ 《奇妙なものたち》 1935年頃、40.5×50.0 cm、
板に油彩、コラージュ、ガラ=サルバドール・ダリ財団蔵
Collection of the Fundació Gala-Salvador Dalí, Figueres
© Salvador Dalí, Fundació Gala-Salvador Dalí, JASPAR, Japan, 2016.

夜の風景の中に、柔らかい時計、カダケスのクレウス岬、小枝の髪の毛を生やす女性、パンを頭に乗せた男性の胸像など、ダリのシュルレアリスム時代を特徴づけるモティーフが描かれています。ダリは、1930年代中頃から同一形態を異なるテーマに変化させて繰り返す「形態学的なこだま」を探究するようになりました。本作では、女性の下半身と赤い建物の毛で塞がれた開口部、白い椅子の肘掛と女性の右腕に「形態学的なこだま」が認められます。一見無関係な図像の集まりは、同一形態の反復と限られた色彩によって幻想的な雰囲気を醸し出しながら調和しています。

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スペインに生まれたサルバドール・ダリ(1904年-89年)は、もっとも有名な20世紀の芸術家の一人です。1929年に彗星のようにパリの美術界に登場し、シュルレアリスムを代表する画家として活躍しますが、やがてアメリカに進出、大きな成功と人気を獲得します。その一方で、映画や演劇、ファッションなどの異分野へも積極的に参画して、ウォルト・ディズニーやエルザ・スキャパレリなどとコラボレーションを行い、次々と著作を発表して、ジャーナリズムやメディアにも盛んに登場しました。芸術と芸術家のあり方を変革したダリは、まさに現代美術の先駆者の一人ということができるでしょう。本展は、ガラ=サルバドール・ダリ財団(フィゲラス)、サルバドール・ダリ美術館(フロリダ州セント・ピーターズバーグ)、国立ソフィア王妃芸術センター(マドリード)という世界の3つの主要なダリ・コレクションから招来される作品を中心に、国内所蔵の重要作品を加えて、約250点によって多面的なダリの世界を紹介する、日本では約10年ぶりとなる本格的な回顧展です。

展覧会ホームページ:http://salvador-dali.jp/

サルバドール・ダリ 《謎めいた要素のある風景》 1934年、72.8×59.5cm、板に油彩、
ガラ=サルバドール・ダリ財団蔵 Collection of the Fundació Gala-Salvador Dalí, Figueres
© Salvador Dalí, Fundació Gala-Salvador Dalí, JASPAR, Japan, 2016.

ダリは17世紀オランダの画家フェルメールを高く評価していました。強烈な光に照らされた広大な土地の中で絵画を制作する人物は、このデルフトの巨匠をモデルとしています。また、ダリは19世紀スイス象徴主義の画家ベックリーンの作品にも関心を抱いていました。画面左に描かれた糸杉は、ベックリーンが繰り返し描いた「死の島」にその源泉を見出すことができます。画面の奥には、ダリの分身であるセーラー服を着た少年が看護師とともに佇んでいます。青と黄色が溶け合う画面では、絵画制作という主題がシュルレアリスム的世界観と融合しているのです。

サルバドール・ダリ 《子ども、女への壮大な記念碑》 1929年、140.0×81.0cm、
カンヴァスに油彩、コラージュ、国立ソフィア王妃芸術センター蔵
Collection of the Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía, Madrid
© Salvador Dalí, Fundació Gala-Salvador Dalí, JASPAR, Japan, 2016.

時間の経過による物体の腐敗に関心を抱いていたダリは、映画「アンダルシアの犬」(1929年)で、腐ったロバを登場させました。1929年から30年にかけて、ダリは絵画作品でもこの腐敗のイメージを積極的に描きました。本作品では、人間の頭部や手、ナポレオン、モナリザなど、様々なものが朽ちるかのように溶け合った巨大な塔が圧倒的な存在感を示しています。また、画面右上ではダリにとっての恐怖の対象であるライオンが牙をむいています。

サルバドール・ダリ 《ウラニウムと原子による憂鬱な牧歌》 1945年、66.5×86.5cm、
カンヴァスに油彩、国立ソフィア王妃芸術センター蔵
Collection of the Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía, Madrid
© Salvador Dalí, Fundació Gala-Salvador Dalí, JASPAR, Japan, 2016.

広島と長崎に原爆が投下されたことを知ったダリは大きな衝撃を受け、本作を制作しました。 画面中央には、爆弾を落とす戦闘機が首を左斜めに傾けた人間の頭部の形態の中に描かれています。それは、アメリカを象徴する野球選手たち、そして画面右端の爆発のイメージと組み合わされることで、広島に原爆を投下した爆撃機エノラゲイを観る者に想像させます。黒を基調とした画面には、原爆がもたらす恐怖によって支配される陰鬱な世界が広がっています。

サルバドール・ダリ 《狂えるトリスタン》 1938年、45.7×54.9 cm、板に油彩、
サルバドール・ダリ美術館蔵 Collection of the Salvador Dalí Museum, St. Petersburg, Florida
Worldwide rights: © Salvador Dalí, Fundació Gala-Salvador Dalí, JASPAR, Japan, 2016.
In the USA: ©Salvador Dalí Museum Inc. St. Petersburg, Florida, 2016.

ダリは、レオニード・マシーンの振り付けによるバレエ・リュス・ド・モンテ・カルロのバレエ「狂えるトリスタン」のために舞台美術を制作することになり、同じく衣装を担当することになったココ・シャネルの邸宅に滞在して、習作に没頭します。これは、その舞台美術の構想のために描かれた初期の習作の一つで、三つの異なった入り口のある建築物が描かれています。このバレエは、最終的に「バッカナーレ」とタイトルを変え、1939年11月にニューヨークで初演されました。

サルバドール・ダリ 《テトゥアンの大会戦》 1962年、304.0×396.0 cm、カンヴァスに油彩、
諸橋近代美術館蔵 © Salvador Dalí, Fundació Gala-Salvador Dalí, JASPAR, Japan, 2016.
* 東京会場のみ展示

14歳の時に見たマリアノ・フォルトゥニー作《テトゥアンの大会戦》(1863 -65年)を長年心に留めていたダリは、『タイム』誌でアラブの騎馬戦の写真を目にし、スペインのモロッコ進軍という歴史的テーマに取り組むことを決意しました。歴史画の伝統に倣った大画面の中央にはダリとガラの顔が挿入されています。また、極端に細長くなった足やガラの面影を残す聖母像など、ダリ作品に登場してきたモティーフが圧倒的な存在感を放っています。ダリは母国スペインの歴史的な戦いの場面に自らの芸術上の格闘を重ねているのです。

サルバドール・ダリ 《ポルト・リガトの聖母》 1950年、275.3×209.8cm、
カンヴァスに油彩、福岡市美術館蔵
© Salvador Dalí, Fundació Gala-Salvador Dalí, JASPAR, Japan, 2016.
* 東京会場のみ展示

第二次世界大戦後、古典主義に立ち戻ったダリは、ポルト・リガトの海を背景に神話の女神や聖母マリアを中心に据えた作品を制作しました。最愛の妻ガラをモデルとした本作はその代表的な作例です。祈りをささげる聖母マリアと幼子イエスの上半身には四角い開口部があり、それは天国に通じるドアを意味しています。聖櫃に片足をかけて宙に舞うマリア像や4つに分解された聖堂の描写には、分裂した粒子が浮遊して一定の距離を保つという原子物理学の理論が反映されています。

© X. Miserachs/Fundació Gala-Salvador Dalí, Figueres, 2016.
Image Rights of Salvador Dalí reserved. Fundació Gala-Salvador Dalí, Figueres, 2016.

(美術館ホームページより)

開始日2016/09/14
終了日2016/12/12
エリア東京都
時間10:00~18:00 金曜日は20:00まで
ただし、10月21日(金)、10月22日(土)は、22:00まで
※入場は閉館の30分前まで
休日毎週火曜日休館
その他備考当日 1,600円(一般) 1,200円(大学生) 800円(高校生)
団体 1,400円(一般) 1,000円(大学生) 600円(高校生)
・中学生以下および障害者手帳をご持参の方(付添の方1名を含む)は入場無料
・会期中に当館で開催中の他の企画展および公募展のチケット、またはサントリー美術館および森美術館(あとろ割対象)で開催中の展覧会チケット(半券可)を提示された方は、本展覧会チケットを100円割引でご購入いただけます。
・国立美術館キャンパスメンバーズ加盟の大学等の学生・教職員は本展覧会を団体料金でご覧いただけます。
開催場所国立新美術館 企画展示室1E
アクセス〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
03-5777-8600 ハローダイヤル 
東京メトロ千代田線乃木坂駅 青山霊園方面改札6出口(美術館直結)
都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩約4分
東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から 徒歩約5分
http://www.nact.jp/information/access/