特別展 生誕150年 黒田清輝 ─ 日本近代絵画の巨匠

重要文化財 湖畔 黒田清輝 1897年 (明治30) カンヴァス、油彩 69.0×84.7cm
東京国立博物館蔵
「湖畔」で広く知られ、日本美術の近代化のために力を尽くした黒田清輝(1866-1924)の生誕150年を記念した大回顧展です。
18歳になる年にフランスへ留学した黒田は、師ラファエル・コランや同時代のフランス絵画に刺激を受けながら、サロンに入選を果たします。帰国後には、印象派風の明るい光の表現を取り入れた黒田の画風が、日本の洋画界に新風を吹き入れました。
さらに東京美術学校で西洋画の教育を任され、また、美術団体白馬会を結成するなど、日本美術のアカデミズムを築きます。そして日本美術を国際的に認められるものとしようと苦闘しながら制作にはげんだのです。
この展覧会は、《読書》《婦人像(厨房)》《舞妓》《智・感・情》等の代表作を含む黒田の作品約200件に加え、ミレーの傑作《羊飼いの少女》や師コランの作品なども展示し、計240件の作品・資料で絵筆で明治の日本を切り開いた黒田清輝の画業とその生涯を展観します。
読書 黒田清輝 1891年 (明治24) カンヴァス、油彩 98.2×78.8cm
東京国立博物館蔵
<黒田清輝>
1893年に9年間のフランス留学を終えて帰国した黒田清輝(1866-1924)は日本の美術界に新しい風を巻き起こし、印象派登場以降のフランスの新しい画風を紹介しただけでなく、日本の美術が国際的な評価に耐えるものとなるよう、多方面で尽力しました。絵画は作者の内面や思想を表現するものであることを提唱し、自らの作品でそれを試み、また自身の言動によってボヘミアン的な芸術家像を伝え、美術が自由な自己表現を要件とすることを示しました。東京美術学校(現:東京藝術大学)の油彩画教育の礎を築き、日本で初めての官立美術展・文展の設立と審査に携わり、油彩画のアカデミズムをかたちづくるのにも大きな力を持ちました。
しかし、その過程は葛藤に満ちています。美術をめぐる日仏の状況の違いや封建的な日本の社会は黒田に様々な困難をもたらしました。西洋美術の中で最も重要なモティーフとされる裸体像の日本での受容に当たっては、1895年の裸体画論争以来、晩年に至るまで裸体美術批判と戦わざるを得ませんでした。また、美術教育、美術行政など他方面での活躍を求められ、画業での理想を果さずに逝去しています。美術界の大家となったとはいえ、夭折の画家とも言えるでしょう。
重要文化財 舞妓 黒田清輝 1893年 (明治26) カンヴァス、油彩 80.4×65.3cm
東京国立博物館蔵
<関連事業>
記念講演会(1) 黒田清輝の画業―美術で社会を変える試み 〔 終了しました 〕
平成館 大講堂 2016年3月26日(土) 13:30~15:00 *開場は13:00を予定
記念講演会(2) 黒田清輝とフランス―日本近代絵画にもたらしたもの
平成館 大講堂 2016年4月16日(土) 13:30~15:00 *開場は13:00を予定
婦人像(厨房)黒田清輝 1892年 (明治25) カンヴァス、油彩 179.6×114.3cm 東京藝術大学蔵
(東京国立博物館ホームページより)
開始日 | 2016/03/23 |
終了日 | 2016/05/15 |
エリア | 東京都 |
時間 | 9:30~17:00 (入館は閉館の30分前まで) ただし、金曜日は20:00まで、土・日・祝日、5月2日(月)は18:00まで開館 |
休日 | 月曜日。ただし、3月28日(月)、4月4日(月)、5月2日(月)は開館。 |
その他備考 | 観覧料金 一般1600円 (1300円)、大学生1200円 (900円)、高校生900円 (600円)、
中学生以下無料 * ( ) 内は20名以上の団体料金 * 障がい者とその介護者一名は無料です。入館の際に障がい者手帳などをご提示ください。 * 特別展「黄金のアフガニスタン-守りぬかれたシルクロードの秘宝-」(2016年4月12日(火) ~ 2016年6月19日(日)、表慶館)は別途観覧料が必要です。 * 本展会期中、「カラヴァッジョ展」 (2016年3月1日(火)~6月12日(日)、国立西洋美術館)または「安田靫彦展」(2016年3月23日(水)~5月15日(日)、東京国立近代美術館) 観覧券半券(使用済み可)を東京国立博物館正門のチケット売場にてご提示いただくと、本展の観覧料が当日料金の100円割引となります。 また本展観覧券半券(使用済み可)を、東京国立近代美術館の観覧券売場でご提示いただくと「安田靫彦展」の観覧料が当日料金より一般100円割引、大学・高校生50円割引に、国立西洋美術館のチケット売場でご提示いただくと「カラヴァッジョ展」の観覧料が当日料金の100円割引になります。いずれも半券1 枚につき各展覧会1人1 回限り有効です(他の割引券との併用はできません)。 |
開催場所 | 東京国立博物館 平成館(上野公園) |
アクセス | 〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9 03‐5777‐8600 (ハローダイヤル) JR上野駅公園口・鶯谷駅南口より徒歩10分 東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、千代田線根津駅、京成電鉄京成上野駅より徒歩15分 http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=113 |
田村薫さんからのメッセージ:
昨日、黒田清輝展の最終日に駆け込みました。
最終日とあって、そこそこ混んでいましたが、入館待ち時間は0でした。
黒田清輝は、趣味週間の記念切手の「湖畔」で小学生の頃から知っていましたが、果たしてこれは名画なのだろうか?
展覧会は、第1章 フランスで画家になるーが画業修学の時代1884~93 第2章 日本洋画の模索ー白馬会の時代1893~1907 第3章 日本洋画のアカデミズム形成ー文展・帝展の時代1907~24の3章建て 出品数は黒田だけで202点 他に黒田の師であるラファエル・コラン、バルビゾン派のミレー、モネ、ピサロ、シスレーなど同時代のフランス絵画が16点、浅井忠、久米桂一郎、青木茂、和田英作など日本作家が12点、とにかく見応えのある展覧会であった。
これだけ多くの作品を見つつ思ったのは、黒田が一番輝いていたのは、20代のフランス時代であって、帰国後は、「湖畔」の頃から下り坂になっていくように思える。第3章の絵画に至ってはほとんどみるべきものがない。
フランス時代の頂点の傑作が「読書」であるが、これはサロンに入選したもの。展覧会冒頭の「婦人像(厨房)」はサロン落選作品、黒田はラファエル・コランに師事してサロン入選を目指して、努力したのだ。
しかし、この時代のフランスは、サロンから印象派など前衛に移行しつつある時代だった。黒田は印象派に接したが、自らはサロンに代表される正当派絵画を目指した。
私には、「読書」より、その次にあった「ブレハの少女」が輝いて見えた。ブリヂストン美術館所蔵だそうだから、また、見に行こうと思う。