山口小夜子 未来を着る人

「三宅一生『馬の手綱』を着た小夜子」 撮影:横須賀功光 1975年
神秘的な東洋の美を体現するトップ・モデルとして、世界のモードを席巻した後も、「着ること」をテーマに異なるジャンルを横断するクリエーター、パフォーマーとして活躍した山口小夜子。 晩年には若い世代のアーティストたちとのコラボレーションを行い、最後まで時代の最先端を走り続けた彼女の軌跡が、2015年春、展覧会としてよみがえります。
1970年代初頭より、アジア人初のトップ・モデルとして世界を舞台に一世を風靡するとともに、国内に向けても日本女性の新たな美を提示した山口小夜子。 彼女が晩年の数年間、若い世代の表現者たちと、ファッション、音楽、映像、演劇、朗読、パフォーマンス、ダンスなどが混在する実験的な試みを行っていたことは、これまで十分に紹介されてきませんでした。 本展覧会は、彼女の生涯を振り返りつつ、常に時代の先端を走り続けたその遺伝子を未来へと渡すものです。 その軌跡を通して、世界を視野に独自性を形成していった70年代以降の日本文化の、極めて重要な一断面が明らかになるはずです。
本展はふたつの要素が入り組んだものとなります。 ひとつは、コラボレーションを通じて、世代やジャンル、東洋と西洋、オーバー・グラウンドとアンダー・グラウンドなど、異なるものを繋ぎSAYOKOというひとつのジャンルを打ち立てたと言うべき山口小夜子の軌跡を、アーカイヴとともに辿るものです。
もうひとつは、宇川直宏、山川冬樹、生西康典、掛川康典、エキソニモという、彼女の身辺で活動した後、現在のシーンにおいて大きな影響力を持つ先端的な表現者たちが、小夜子に捧げる新作インスタレーションです。 また、小夜子の急逝の直前に、新聞紙上で往復書簡を予定していた森村泰昌も、彼女に捧げる新作を出品します。 小夜子自ら自由にリメイクし愛着を伝える旧蔵の服など、「ウェアリスト(着る人)」と名乗った彼女の美意識も存分に紹介します。 小夜子の声、姿、気配が充満する空間で、彼女の未だ終わらない物語を体感してください。
生西康典+掛川康典 「H.I.S. Landscape」
(「六本木クロッシング」出品作品、森美術館、2004年)
■ 雑誌や写真、スクラップブック、人形などの秘蔵資料、長らく専属モデルを務めた資生堂のアーカイヴにより、「SAYOKO」のイメージはいかにして作られたのかを探ります。
■ 小夜子をミューズとした数々のデザイナーの作品や、彼女が所蔵していた服を小夜子マネキンによって展示し、「ウェアリスト」と名乗り、「着る」ことをパフォーマンスにまで高めた小夜子の創造性に迫ります。
■ ファッション写真からアート作品まで、被写体としての小夜子の魅力を紹介します。
■ 寺山修司から2000 年代のアンダーグラウンドカルチャーまで、常に時代の最先端とコラボレーションした、パフォーマー、クリエーターとしての小夜子の軌跡を辿ります。
■ 小夜子が晩年の数年に展開した、音、映像、ファッション、文学等が一体化した総合芸術ともいえるパフォーマンスを、高画質映像によって蘇らせます。
■ 晩年に彼女とコラボレーションを行った先端的なクリエーターたちによる、小夜子をモチーフとした新作映像作品(飴屋法水ほか出演)、インスタレーション等により、会場中に小夜子の気配、姿、声が点在する体感型の空間を展開します。
撮影:下村一喜 2005年
<出品作家>
生西康典+掛川康典
宇川直宏
エキソニモ
森村泰昌
山川冬樹
結城座公演「ペレアスとメリザンド」舞台写真 1992年
<山口小夜子 (1949-2007)>
1972 年にファッションモデルとしてパリ・コレクションに参加して以来、圧倒的な存在感で瞬く間にトップモデルとなり、パリおよびニューヨーク・コレクションで活躍。1973 年より資生堂の専属モデルとして、日本人女性の美を国内外に印象付ける。1974 年にはアメリカ、ニューズウィーク誌に「世界の4 人のトップ・モデル」として紹介され、77 年には「SAYOKO」マネキンが世界各国のショーウインドーを飾るブームとなる。 同年、寺山修司の舞台「中国の不思議な役人」に出演。 以来、女優としても多数の舞台、映画に出演。1986 年に山海塾とともに写真・映像作品「月/小夜子」を制作。 1988 年からは勅使川原三郎のダンスカンパニーKARASに参加(1996 年まで)。 1989 年にNHK映画ファンタジー「カルメン」で国際エミー賞公演芸術部門優秀賞を受賞。 その後、山海塾のオペラで衣装デザインなどを行ったほか、結城座とも人形デザインなどのコラボレーションを行うなど、クリエーターとしても数々の舞台に参加。2001 年には神戸ファッション美術館にて、各デザイナーが彼女にインスパイアされた作品を展示する「モーリの色彩空間 Part.5 小夜子」展が開催される。 2000 年代に入り、六本木SuperDeluxe などのアンダー・グラウンドなスペースを舞台に、ファッション、映像、音楽、文学、舞踏など諸表現が融合するパフォーマンスを展開。 生西康典、掛川康典、山川冬樹、宇川直宏、藤乃家舞、A.K.I.PRODUCTIONS、UA らとコラボレーションを行う。 2007 年急逝。
撮影:横木安良夫 1977年
<イベント>
最新情報については美術館ホームページをご覧ください。
■ Be Sayoko! 小夜子になりたい!
-見るだけではなく、内側から小夜子を体感していただくイベントです。
①小夜子メイクを完成させたアーティスト、富川栄によるメーキャップ・ワークショップ&トーク
講師|富川栄 (資生堂 SABFA校長)
日時|5月16日(土) 14:00-16:00 −終了しました
場所|東京都現代美術館講堂 B2F
定員|100名様 ※イベント当日、11時よりエントランス付近にて整理券を配布します。
参加費|不要。 ただし、本展チケットの提示が必要です。
②小夜子が習ったダンス・メソッド、伊藤道朗の「テン・ジェスチュア」を体感するワークショップ
ダンスを学んだことがなくても楽しめます!
講師|柏木久美子
日時|5月31日(日) 14:00-15:30
場所|東京都現代美術館 講堂 B2F
定員|20名様 ※イベント当日、11時よりエントランス付近にて整理券を配布します。
参加費・入場|不要。 ただし、本展チケットの提示が必要です。
■ 緊急追加情報!
「山口小夜子 未来を着る人」展関連イベントとして、小夜子に捧げる夜会「小夜子 光と闇の夜」を開催します。
古典的な美のミューズである一方で、常に新しくオルタナティブな表現の追究者でもあった山口小夜子。そのスピリットを彼女と分かち合い、ともに活動したミュージシャン、映像作家、ダンサーたちが一堂に会し、その濃密な表現世界をよみがえらせます。一夜限りの豪華な競演をお見逃しなく!
「小夜子 光と闇の夜」
日時|2015年5月30日(土) 18時半開場 19時開演
主催|東京都現代美術館
場所|東京都現代美術館エントランスホール
出演者| 生西康典×掛川康典、宇川直宏、山川冬樹、飴屋法水、伊東篤宏、A.K.I.PRODUCTIONS、黒田育世、
PLASTICS(立花ハジメ、中西俊夫)、萌(Moe and ghosts)、灰野敬二 ほか
料金|3,000円(オールスタンディング)
販売方法|チケット販売アプリPeatixにてご購入ください。
※ 外部サイトに飛びます。➞Peatix
当日券のみ、東京都現代美術館チケットカウンター(10時〜18時50分まで)でも販売いたします。
※当日券は数に限りがありますので予めご了承ください。
当日に限り、「山口小夜子 未来を着る人」展をご観覧いただけます。
Peatixのアプリ画面を入口でお見せください。
※ただし閉館時間は18時です。
*関連イベントに関しての追加情報は随時、美術館ホームページにて更新致します。
「資生堂 舞」 ポスター 撮影:横須賀功光 AD:中村誠 1978年
(美術館ホームページより)
開始日 | 2015/04/11 |
終了日 | 2015/06/28 |
エリア | 東京都 |
時間 | 10:00〜18:00 ※入場は閉館の30分前まで |
休日 | 月曜日(5月4日は開館)、5月7日(木) |
その他備考 | 観覧料 一般 1,200円(960円) 大学・専門学校生・65歳以上 900円(720円) 中高生600円(480円) 小学生以下無料(保護者の同伴が必要です) ※( )内は20名以上の団体料金 ※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方と、その付き添いの方(2名まで)は無料です。 ※毎月第3水曜日は65歳以上の方は年齢を証明できるものを提示していただくと無料になります。 ※本展チケットで「MOTコレクション」もご覧いただけます。 ※同時開催の「他人の時間」展とのセット券もございます。 |
開催場所 | 東京都現代美術館 企画展示室B2F |
アクセス | 〒135-0022 東京都江東区三好4-1-1 03-5245-4111(代表) 03-5777-8600(ハローダイヤル) 東京メトロ半蔵門線・清澄白河駅B2番出口より徒歩9分 都営地下鉄大江戸線・清澄白河駅A3番出口より徒歩13分 http://www.mot-art-museum.jp/museuminfo/access.html |
to-co-to mail news vol. 128(2015/5/9)より:
もう十年近く前になるか、「今ごろ山口小夜子はどうしているだろう」という疑問が、何のキッカケもなく不意に狭いアタマを占め、その後ときどきやって来ます。世界のトップモデルさんなんて会うことなどない遠い存在なのだけれど、こういうモデルさんがクリエーターの創造力をかき立てるのだろうな、とはパンピーの中高生にも感じられた、インパクトのある方だったからでしょう。お箸のように背が高く、無色透明な今のモデルさんと違って、物理ではなく、美しいまなざしと強い表現力に日本中が、世界がイチコロだったのです。比較できるような人は見当たらず、また遠い存在だったからこそ、亡くなられてからも変わらず同じ問いが余裕のないアタマにもやってくるのだと思います。東京都現代美術館で6月28日まで。
外部のワタクシなんぞには見る事のできないモノ! プロの技をかいま見ることができます。
小夜子さんがキュレーションされていた雑誌のコーナーに取り上げられた人々。興味を持っていたのものが伝わります。それにしてもエッジのたっていること!
森村小夜子!おみごとです!!
2015年秋には、ドキュメンタリー映画『氷の花火 山口小夜子』が、東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムほかで公開されるそうです。
http://yamaguchisayoko.com/
山口小夜子の名前は耳にしたことがあったが、リアルタイムにCMを拝見したことのない私たちの世代とっては完全に謎の人だった。
だから、今回の展覧会は小夜子の情報を集めた本当に貴重で意義のあるものだと思った。
6月28日までなので、少しでも気になる方は、是非足を運んでみたらどうだろう。
山口小夜子=モデルではなく、モデルであったりデザイナーであったりダンサーであったりと、いくつかの人格が、山口小夜子をつくりだしているということを再認識させられる展示であった。
そして、それらの
人格は当時の一流の人物たちとの交流によって磨かれ、どれもが独特の美的センスを放っているのが印象深い。
彼女は80年代のポストモダニズムが産み出した類い希なる産物なのだろう。