北へ、北から 小島一郎

12_中「西津軽郡深浦町北金ヶ沢 1957-58年頃」© Hiroko Kojima

「西津軽郡深浦町北金ヶ沢 1957-58年頃 」© Hiroko Kojima

― 故郷青森と東京のはざまで―

小島一郎(1924-64)の没後50年となる展覧会を開催いたします。青森市で玩具と写真材料を扱う商店の長男として生まれ育った小島は、父親の影響で写真を学び、写真雑誌などで作品の発表を始めます。津軽や下北の日常的な風景を題材としながらも、当時の主流だったリアリズム写真と一線を画した造形感覚と詩情あふれる作品は早くから注目されました。

1958年、報道写真の先駆者・名取洋之助の強い後押しによって東京で最初の写真展「津軽」を開催し、写真家として順調なスタートを切りました。

1961年、プロの写真家を目指して上京、二度目の個展「凍ばれる」を開催しましたが、郷土を題材として世に出た小島にとって異なる環境での撮影は困難を極めました。東京での後ろ盾であった名取の死も重なり青森に帰郷した小島は、北海道での撮影に再起を賭けるものの、度重なる過酷な撮影から体調を崩し、39歳の若さで急逝しました。

本展では小島が写真の編集と作品紹介用に制作した「トランプ」と呼ばれる名刺サイズの写真の展示をはじめ、東京で開催された個展「津軽」と「凍ばれる」の一部再現を行い、青森と東京のはざまで揺れ動いた小島の心情と名取の影響下にあった制作過程に焦点を当てながら小島が抱え込んだ「北」の意味を問いかけます。2009年の青森県立美術館での回顧展で再評価された小島一郎の新たな側面をご紹介します。

小島一郎の「トランプ」

小島一郎は名刺サイズに引き伸した写真の束をよく持ち歩いていました。写真仲間に批評を求めたり、編集の検討をするためだったようです。小島の胸ポケットから出てくる小さなプリントを仲間たちは親しみを込めて「トランプ」と呼んでいたといいます。コンタクトプリントよりも大きいため、カットが判別しやすく覆い焼きも可能なサイズでした。また、ネガの整理や編集者などへプレゼンテーションのために「トランプ」を台紙に貼付けたアルバムを制作していました。

個展「津軽」と「凍ばれる」からさらなる「凍ばれる」地へ

「岩波写真文庫」の調査のため青森を訪れた名取は、小島の作品を「この作者は異常性格だ」と高く評価したようです。名取の強い後押しにより、1958年に東京・銀座の小西六フォトギャラリーで小島の初めての個展「津軽」が開催されます。土門拳が牽引するリアリズム写真旋風が吹く中での出来事でした。「津軽」は写真を一点一点で見せるのではなく、読む写真としての「組写真」を提唱していた名取の影響を垣間見させる120点ほどのパネル展示でした。名取は展示の方法やセレクションについて積極的に助言を行っただけでなく、展示設営の際に足を運び、言葉も寄せています。若くして才能を認められた小島は、この3年後東京での活動に踏み切ります。

1961年、小島は家族とともに上京、「下北の荒海」でカメラ芸術新人賞を受賞すると、翌年に2 回目の個展「凍ばれる」を富士フォトサロンで開催。中間調の出ないミニコピーフィルムを用いるなど複雑化した技法と造形的要素を強めた下北の写真が眼を惹きます。東京での個展はいずれも故郷・青森で撮影されたもので、東京を主題としたものは『カメラ毎日』に発表された「東京の夕日」だけでした。

大きな後ろ盾であった名取の死もあって、東京での活動に行き詰まった小島は青森に帰郷、北の大地・北海道の撮影に挑みます。

この時北海道で撮影したネガは見つかっていません。度重なる過酷な撮影で体調を崩していた小島は「最近シャッターを切れなくなった」、「想像していた以上に北海道は広かった」と友人に語っていたといいます。

「下北郡大間町 1961年」 © Hiroko Kojima

◎関連イベント
最新情報につきましては展覧会ホームページでご確認ください。

【トーク・イベント】

「小島一郎をめぐって―北を編む」

2009年に青森県立美術館で開催された「小島一郎北を撮る」展で提示された問題系を引き継ぎながら、小島一郎にとっての「北」の意味を問う。

出演者: 大島洋 (写真家)
北島敬三 (写真家)
倉石信乃 (明治大学教授)
高橋しげみ (青森県立美術館学芸主査)
小原真史 (当館研究員)

日時:9月28日(日) 午後2:30-4:00
会場:クレマチスの丘ホール(美術館隣接特別会場)
参加無料(当日有効のIZU PHOTO MUSEUM 入館券が必要です。)、定員100名。
お電話でお申し込みください。Tel. 055-989-8780

【ギャラリートーク】

学芸員が展覧会解説を行います。

日時 : 8月30日(土)/10月25日(土)/11月15日(土)/12月20日(土)
※各回午後2:15-( 約30分)
無料、申し込み不要(当日有効の入館券が必要です。美術館受付カウンターの前にお集まりください)。

◎関連書籍

■小島一郎 生前唯一の作品集を当館より復刊いたします。
『津軽―詩・文・写真集―』(1963年)
石坂洋次郎編、写真=小島一郎、文=石坂洋次郎、方言詩=高木恭造
2014年会期中に限定部数、復刻版刊行予定。

<発売中>(当館ミュージアムショップで販売しております)
■小島弘子著『暖かい陽射し』(渓声出版、2014年、本体2,000円+税)
■青森県立美術館監修『小島一郎写真集成』(インスクリプト、2009年、本体3,800円+税)
■ 『INOUE SEIRYU / KOJIMA ICHIRO』(RAT HOLE、2007年、本体2,381円+税)

美術館ホームページより)

開始日2014/08/03
終了日2014/12/25
エリア静岡県
時間(9・10月) 10:00~17:00
(11・12月) 10:00~16:30
*ご入館は、閉館30分前までとなります。
休日毎週水曜日(祝日の場合は営業、その翌日休)、年末年始
その他備考大人 800円(700円) / 高・大学生400円(300円) / 小・中学生 無料
*(  )内は、20名様以上の団体料金
開催場所IZU PHOTO |MUSEUM
アクセスIZU PHOTO MUSEUM
〒411-0931 静岡県長泉町東野クレマチスの丘(スルガ平) 347-1
TEL 055-989-8780 FAX 055-989-8783
【お車の場合】 東京方面より:東名裾野I.C.よりR246経由、沼津方面へ10Km
名古屋方面より:新東名 長泉沼津I.C.あるいは東名 沼津I.C.より伊豆縦貫道(東駿河湾環状道路)へ、長泉I.C.出口R246右折/新東名 長泉沼津I.C.より5km
【電車の場合】
東海道線「三島駅」下車、北口(新幹線口)発、無料シャトルバスあり
http://www.clematis-no-oka.co.jp/access/index.html